表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔甲闘士レジリエンス   作者: 紀之


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/69

第36話 イミテイション・ソルジャー(中)




 「あれはレジリエンスか?形が少し変わっている様だが?」


マルスとそのカメラを通して文明存続委員会のメンバーは突然の事態に驚きの声を上げる。


レジリエンスは自分の前と後ろを見て事態を一瞬で理解したのか、人々を吸収している男達にダッシュで近づくと右腰のスイッチを操作し、再度次元移動の穴を地表へ作ると3人の男達を纏めて押し込むと自身もその中に消えた。


「レジリエンスに今回は助けられた。組織である事の身動きの取れなさを今回は痛感させられた」


黒川博士の呟きを聞いた笠井が目を上げる


「フォローはするんですよね?あれでは達人君が」


「まさか。あれは奴個人の行動だ。レジリエンスは我々文明存続委員会とは何の関係もない。組織に属さないという事はそういう事だ」


黒川と笠井は視線を交錯させたが笠井はため息をつきながら手元のコンソールへ眼を落す。


そして今回のUMAとそれになった人物について調べ始めた。



次元の穴に押し込まれた3人の男達は自分達に何が起こったのかわからぬまま異世界のアトランティス大陸の荒野に投げ出された。


後れてやって来たレジリエンスは彼らに最後通牒を突きつける。


「ここでお前達は暮らせ。そうなった以上もうお前達は人間社会には戻れない。戻ってはいけない」


「へっ、なに言ってやがる。俺達はな、無敵の未成年で影人間なんだよ!!」


たちまち3人は黒い影法師の様な姿に変わるとレジリエンスに飛び掛かる。その単調な攻撃は全ていなされ、レジリエンスの持っていた杖に強かに殴りつけられ地面に全員転がった。


「やめろ!俺達は未成年だぞ!それを傷つけたらどうなるかわかってんのか!!」


3人は元の人間の姿に戻りながら泣き喚く。彼らの不幸はそんな命乞いに耳を貸さなければ心も動かされない男と対峙した事だった。


「お前らはUMAだ。話し合いの余地の無い以上は死ぬ事でしか他者に教訓を残せない化け物だ」

レジリエンスは左肩のエレメンタル・アンプリファイアを外して形状をひし形から三角形に変形させると杖の石突に装着すると杖の先端から赤い炎が上がりその色を徐々に青く変えながら炎の剣フレイムキャリバーを形成、横薙ぎに振るう。


「おいや、やめろ、やめてくれー!!!あいつに頼まれたんだ」


「あいつ?」


腕をピタリと止める。


「ああ、あいつだ。東京の廃墟ビルにいた、あいつに頼まれたんだ。女の子を攫ってこいって」


「命令した奴の名前は?」


「知らねえよ!んなモンきょうみないああああああああッ!!」


レジリエンスは止めていた右腕を無慈悲に振り抜くと3体のシャドー・ピープルをまとめて切り捨てる。


シャドー・ピープル達は赤い粒子を発しながら爆散する。出力向上の影響か以前は剣身が杖本体から折れて切った対象に残っていたのが、今はそのまま剣の形状を保っている。


(決意した矢先にこれとはな)


右手に持ったフレイムキャリバーを見ながらレジリエンスは嘆息する。だが咄嗟に口から出た以上は間違っていないとも感じていた。


(そういう意味ではUMAも人も変わらないというのなら、俺はそういう奴らと戦う)


立ち上る赤い残光を見てレジリエンスは再びf市へと戻るべく次元の穴を開くのだった。



八重島紗良は走っていた。走らなければ生き残れないと本能のそう告げるままに走り続けていた。


だから家の門が見えた時は安堵で目に涙がにじんだ。


そして家の前の地面から突然藍色の鎧が飛び出してきたことで涙がどんどん溢れてきた。


そのままその鎧に抱き着いた。


「お前はいつも襲われているな」


「あんたは・・・あんたはいつも突然いなくなったり出てきたり・・・なんなのよ、もう」


泣きじゃくる紗良をレジリエンスは右手でポンポンと叩く。


表の様子に何事かと外へ出てきた八重島梓はその光景を見て目を細める。


「おかえりなさい、紗良。達人君も。2人とも無事でよかったわ」


「ただいま戻りました。梓さん」


左腰の装着解除スイッチを押そうとした達人は妙な駆動音を聞きつけてそれを取りやめ、音のした方を見やる。


そこには専用バイク・ガンウルフに跨ったマルスがいた。


「この2人は影人間とやらじゃないぞ」


2人の前に出たレジリエンスはマルスへ杖を向ける。


「分かっていますよ。達人さん」


プシュという空気の抜ける音を共にマルスのフルフェイスヘルメットを脱いだ黒川ケイが右手でヘルメットを持ったまま両手を上げる。


「やっぱり」


「まあ、隠すつもりは無かったんだけど。僕が魔甲闘士マルスの正体だよ。紗良さん」


「なんだ知り合いか?」


「僕は藤栄高校に入学したんですよ。それより」


「そうだな。梓さん、早速で申し訳ありませんがリビング空いていますか」


「ええ。今日はあんなことがあったから塾の子供達は皆帰したから」


達人もレジリエンスの鎧を外す。空気の抜ける音と同時に全身から濃い灰色の煙が上がる。


「ありがとうございます。ケイ、情報交換といこう」



「まずはあいつらを倒してもらってありがとうございます、達人さん。あいつらは分析上人間だったのでこっちとしてはどうする事も出来なかったんです」


リビングの椅子に腰かけたケイは頭を下げる。


「そうか。だからそちらの動きが変だったのか。それで紗良、お前はあいつらに狙われる理由に心当たりはあるか」


「わからない。初めて見る顔だったし」


「そうなるとますます意味が分かりませんね。この家は影人間を作る薬は」


「誰も買っていないわ。無くても困らないから」


梓が人数分の紅茶のカップを乗せたトレーを持ってきながら言った。


「仲間を増やすという線も違うな。むしろ吸収して人間を減らしていた」


自然と3人の視線が紗良に注がれる。


「あの、あたし普通に学校に行って部活の助っ人して帰ってくるただの女子高生よ?まあ今日は友達と寄り道してきたけど」


「だが連中はそこに普通で無い物を見た。もしくは知った」


「怪現象に頻繁に遭遇しているのを知っている?でもそれが一体なんだって言うんだ?」


達人とケイは考え込むが答えは出ない。


「ソーサリィメイルだっけ?それが狙いじゃない?ドラマとかでよくあるでしょ、この子を人質にとったからそれを寄こせって」


梓の言葉に2人とも顔を上げる


「・・・・連中の戦闘力は大したことが無い。あり得ますね」


「そうでしょうか?それならあの時僕にそう言わなかったのは・・・連中の狙いはレジリエンスの鎧か?」


「だがそうなると別の疑問が出てくる。あいつらの後ろにいる奴はレジリエンスとマルスの明確な違いを知っているという事になる。そんな知識のあるのは・・・」


「まさか、文明存続委員会に裏切者がいると?」


その時ケイのスマホが鳴る。失礼、といってケイが出ると笠井恵美から驚くべき情報がもたらされた。

回収した風の四元将テベリスの右腕と左足が何者かに持ち去られた、と




「まさかレジリエンスが生きていたとは。しかも形が変わっている」


廃ビルのモニターでニュース速報を見ていた喜納とDr田出井は自分達の計画が失敗した事を悟った。


「どうする?あの八重島という女学生の確保は格段に難しくなったが」


「チッ、マルスを見た人間がこんなにまで少ないとは。委員会の連中徹底しているな」


「君自身の記憶には無いのか?」


「設計図はな。実際に動いているのを見た事は無い」


「なるほど。それだけじゃ確かに定着は難しいね。どうする?これを使ってみるか?」


Dr田出井は机に体温計の様な物を置く。


「これは?」


「対象の記憶だけを読み取り、記憶する装置だ。E₃にいた時は何の役にも立たぬと馬鹿にされたが、僕の自信作である事は間違いないよ。それとシャドー・ピープルの素を組み合わせれば」


「私もマルスになれるという事だな」


「問題はその娘がどれだけ見ているかという事にかかっているがね。実際どうするつもりだい?」


「何、方法はいくらでもあるさ。それよりその性能だが」


「そこは保証する」


「では明日だ。明日お互いの復讐を果たし、その上で」


「我らの理想郷を作る。我々が君臨する影の王国を」




翌日


「それじゃ2人ともいってらっしゃい。達人君、紗良をお願いね」


「はい」


秋晴れの空の下を紗良の護衛として達人は学校までの道のりを彼女と共に歩いていた。


達人は相変わらずのボサボサ髪であるが服装だけは以前買った黒いシャツとスラックスを着ていた。


「ねえ」


「何だ?」


「戸籍が手に入ったら改めて学校に通わない?学年は違うけど一緒に登校するの楽しくない?」


「悪いが今はそういう事をしている暇は無い。だが落ち着いたら考えてもいいかもな」


「それいつよ?」


「分からん」


「やっぱり」


「それより緊張感を持て。狙われているんだぞ」


「そこはホラ、優秀なボディーガードがいるから」


「ケイに迷惑をかけるなよ。校舎内はあいつの管轄だからな」


「信頼してるんだね。酷い目にあわされたっていう人の息子なのに」


「父親と息子は別の人間だ」


紗良にはその言葉を達人が自分に言い聞かせているように聞こえた。


「よく言ってる理不尽って奴?」


「そうだ」


そんな会話をしている間に藤栄高校の校門が見える。


そこに立っている亜麻色の髪の少年が右手を上げる。


「おはようございます。紗良さん、達人さん」


「後は頼むぞ、ケイ」


「お任せを」


そう言ってケイはまるで執事が主人を案内するような仕草で紗良を敷地へ誘う。


その動きに苦笑しつつも紗良は咥内に入ろうとした、その時だった。


1台のバイクとそれを追う人間型UMAシャドー・ピープルの群れが現れた。


「何ッ」


達人とケイは紗良を庇うように学校の敷地内に押しこもうとするがそこに恐怖と焦りからか、バイクの運転を誤った全身白づくめのライダーがバイクから投げ出され、紗良の目の前に転がった。


(アイツ、受け身を取ったな。まさか)


「紗良、そいつから離れろ。出来るだけ遠くに」


「もう遅いね」


ライダーは紗良を左腕で抱えると細長い器具をその首筋に当てる。


その器具に紫色の電光が走るとライダーはそのフルフェイスヘルメットを乱暴に投げ捨てた。


「あなたは確か父さんと対立して辞めた喜納朔太郎さん!?まさかテベリスのパーツを盗んだのも」


「そうだ。ようやくたどり着いたか。そして復讐の時が来た!俺を認めなかった委員会の連中にな!!」

喜納朔太郎は右腕ライダースーツの袖を捲るとそこにはテベリス右腕の篭手が付いていた。そこには試験管の様な物が2つ巻き付いている。


「何をするつもりだ?」


「フフフフフフ、装着!」


喜納は先程紗良の首筋に当てた器具を試験管の1つにセットすると同時に周囲にいたシャドー・ピープルが黒い煙となってもう一つの試験管へと集まっていく。


そして篭手が黒く染まると同時に変形し、そこから喜納の全身を影が覆っていく。


そして影は黒いマルスの姿となった。


「これは・・・」


「驚いたか?これが人間の記憶を抽出し、ソーサリィメイルのパーツを媒介に影をその通りに変化させて生まれた幻魔闘士シャドー・マルスだ。マルスの記憶をきちんと持っているのはこの娘以外いなかったのでな。苦労した甲斐があったというものだ。さらに」


シャドー・マルスは試験管を先程乗っていたバイクのタンク部分に押し当てる。


するとバイクはマルスの専用バイク・ガンウルフと同じ見た目に変化した。違いは主同様夜の闇より暗い漆黒であるという点だった。


「コイツの性能はよく知っているだろう?街中でディバイン・ジャッジメントを使うとどうなるかも」


そう言うとシャドー・マルスはシャドー・ウルフと言うべき専用マシンに跨り、市内中心部へ向けて走り出す。


「させるか!達人さん、あいつは僕が」


「止めは任せる。俺もフォローする」


「わかりました。バイクを取ってくるので待っていてください」


ケイも学校付近に停めてある文明存続委員会のトレーラーへと駆け込む。


マルスの装甲服を装着するとガンウルフへ跨ると後ろにレジリエンスの鎧を装着した達人を乗せ後を追う。


それを妨害するように横から1台のバンが飛び出してきた。


「危ない!」


急ブレーキをかけて止まるガンウルフ。その前にバンから一人の白衣を着た男が下りてくる。


「おい、あいつの左足」


「ええ。テベリスの奴です」


「やっと会えたな、芹沢達人!死んだと聞かされていたが生きていたとはね。おかげで計画が狂ってしまったが、まあいい。それは君の命で償ってもらおうか」


「ケイ、シャドー・マルスを追え。こいつは俺をご指名の様だ」


「もう予想はついているだろうがね、装着」


バンの後部から大量のシャドー・ピープルが這い出てくると同時にそれらは煙に変換され左足に集まっていく。そして黒く染まった脚甲が変化すると同時にそこから男の全身を黒い影が覆う。影は異世界で改修される前のレジリエンスの鎧へと変化する。


「やはりな」


「幻魔闘士レジリエンス・シャドーと名乗っておこうか。尤もすぐに本物となるだろうがね」


正邪4人の戦いが始まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ