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魔甲闘士レジリエンス   作者: 紀之


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第35話 イミテイション・ソルジャー(上)

最近の特撮ではあまり見ない「偽物対本物」というシチュエーションを書いてみました。




 芹沢達人が現世に帰還したのはンデキデキの守る宝玉がジャージーデビルに盗まれた事件の2日後だった。

レジリエンスの修復と最終調整にそれだけの日数を要した為である。


その間例の告白の件からエリクシリオと達人はお互いに気まずく、彼女は町の各作業の監督に没頭していた。


達人の方もレジリエンスの調整作業を手伝う間はその事を気にする必要が無かったが、さすがに帰還の挨拶に行かない訳にはいかなかった。


「午後に現世に戻ります」


達人は自分でも声が変に上ずっていると思うが今更どうしようもない。


「そうですか。ご武運を」


エリクシリオは書類から目を離さない。


「サンダーバードから色々聞いてレジリエンスの調整を手伝っていてもしかしたらアトランティスを現世に帰せるかもしれない。審判の日とはその日の事を指すのじゃないかと思うんです」


その言葉にエリクシリオは顔を上げる


「神の怒りで暴走した四元将全ての力でこの世界に飛ばされたこの大陸が元に戻ると?」


「四元将程の力はレジエンスには無いがそれでもその試作機である以上はその力の一端はあるはず」


「しかしそれではとても足りない事は少しレジリエンスを見れば分かる事です。ではサラ達にもよろしくと伝えて下さい」


エリクシリオは話は終わりだと再び書類に目を落とす。


「それですよ。紗良も彼女の友人も八重島さん達もそれに俺も貴女に好意を持っている。もちろん貴女も俺達に同様の好意を持っている。だからそれらの意思の力を繋いで大きな力になれば怒りではなく平和の祈りとも言うべき思いの強さで次元の壁を壊せるかもしれない。魔法は意思の力なのでしょう?」


「それは素敵な事ですが夢物語でしょう。でもありがとう」


「現実的な話をすればアゲシラオス博士が宝玉を奪ってまで新たな鎧を作ろうとしている理由がそれしか思い浮かばない、というだけなんですが。どの道鎧を持つ身として2つの世界の為に戦う事は義務だと思うんです。だからひとまずさようなら、エリクシリオ」


「ええ、さようならタツト」


こうして達人は約2か月振りに現世へと帰還した。




ここで彼が不在の間現世では何が起きて、何が起こりつつあるかを整理する必要があるだろう。


レジリエンスの敗北と『消滅』と入れ替わるように地球製魔法の鎧(ソーサリィメイル)と言うべき魔甲闘士マルスが登場し、UMAとの戦闘を開始した。時同じくして世界各地にそれまで以上の異常気象が続発していた。だが9月半ばの日本のトレンドはこれらの事件ではない。


それは後に「影事件」と呼ばれるものであった。




都内某所


有名宝石店で結婚間近のカップルが結婚指輪の購入を検討していた。


店員から渡された大きなダイヤモンドのついた指輪を見せられて頬を上気させる女性。


その指輪をその女性の薬指にお定まりの歯の浮くセリフを言いながら通そうとする男性。


人生の中でも特に輝かしいイベントは突如中断された。


白井良子(その正体はフライング・ヒューマノイドらを助けたUMA)がその指輪をひょいと摘み取ってしまったからである。


「き、ッ君は一体何をするんだ!?」


「お前がオーナーか?こんな模造品を本物同然に売りつけるとはお主もなかなかにワルよのう」


男の抗議の声などどこ吹く風といった具合で良子はオーナーらしき店員へ薄笑いを浮かべる。


「そ、そんな事は」


「騙されたというのか?では証拠を見せてやろう」


良子が細いヘラの様な親指と人差し指で指輪に力を少し込めると指輪は黒い粒子となってたちまち消滅してしまった。


唖然とする周囲に良子は更なる爆弾を落とす。


「のう、お主。指輪の真贋もつかぬ店やそれを選んだ男を伴侶にするのはこれからの人生に少なからぬ暗雲が立ち込めていると思うが、どうじゃ?」


くるりと背を向けた意地悪い笑みを浮かべる良子の後ろで男女の言い争う凄まじい怒号が実に半日も爆発したのだった。



この『模造品』の類は夏休みの終盤辺りから徐々に認知され始めていた。


それはある人はネットで買った、またある人は路上販売していたともいうある薬液を対象に1滴垂らすだけでその物体の模造品が即座に出来上がるのだった。


そしてこの問題が大きくなったのはその『模造品』に人間がある事だった。


影人間という名称の『商品』は文字通り自分の影に専用の特殊な薬液を垂らす事で生まれる。


この薬液の効能は無機物と有機物で性質が逆転するようで先の指輪の様な物はちょっとした力で霧散するのに対し、この影人間は頭脳面こそ本人に依拠するものの、影である為身体的には不死身の存在であり総じて高い運動能力を持つ。この『商品』が爆発的に売れた原因として維持費が全くかからないという点だった。


食料もいらなければ風呂にも入らないし睡眠もとらない。


尤も影である以上は光のある所でしか姿を現せないという欠点はあったが、わずか3週間ほどの間に多くの人々は自身の代役として労働等の『嫌な事』を肩代わりさせた。更には特定の技能を持つ影人間を集めてレンタルする業者さえ現れた。


こうした動きに教育界は異例の速さで対応を協議し、表向きは生徒の尊厳に関わるといういつもの、その実は生徒を管理しきれなくなれば問題を起こした時に責任を問われるという現実的問題から学生の影人間の使用を禁じる旨を通達した。


だが当たり前の話だが本物と影の区別はその本人でしか分からない程の精巧さを持っているとなれば影を学校へ向かわせて自分達はサボるという学生が日本中で激増する事は判る事だった。


影の恩恵を受けるのは学生だけではない。社会人も自身の労働を影に肩代わりさせるようになるのは時間の問題だった。


こうした風潮に一部のメディアが『影人間は現代の奴隷制か?』というセンセーショナルな記事を乗せたがこんな意見は当然無視された。



「実に嘆かわしい事だ」


悲観人間代表たる黒川博士は文明存続委員会の一室で憤然としていた。


「影人間によってできた時間で新しい思想や発明に費やす者は極わずかだ。大抵の者は自堕落な生活を送っている。これでは人間の価値を自ら捨てるのと同じことだ」


「それに何の目的で発明したのかも不明となればこれ程不気味な物もないですよね」


コンピューターで分析をしていた古川努は天を仰ぐ。


「何か分かったかね」


「何も分からない、という事がね」


「急いでくれたまえ。これを必ず馬鹿な事に使う連中が出てくる。そうなってからでは遅いのだ」


そこへ学校から帰った黒川ケイが部屋に入ってくる。


「そういえばアレ、ケイ君は使ってないんだな」


「必要性が無いですからね」


無理にではなく心底そう思っての発言だった。


「それ以上に世界各地の異常気象について殆どメディアが取り上げないのはどうした事だ?サハラ砂漠で雪が降ったり、アラスカの気温が39度とかそっちの方が重要だろうに」


「そりゃあ視聴率の為でしょう?黒川博士。サハラもアラスカも日本に直接には関係ありませんからね」


「少なくとも我々は関係がある。これは笠井君が纏めたデータだがサハラの件はあのマハンバと我々が呼称するワニのUMAを倒した直後、アラスカはあのケンタウロスタイプのUMAを倒した直後にあの異常気象が起こっている。これは偶然ではない」


「それは興味深い。倒されたUMA共のエレメンタル・エナジーの影響といえるかもしれませんな」


ティブロンが部屋に入ってくるなり話に割って入った。


「ミスターティブロン、風の四元将テベリスの残りのパーツは見つかりましたか?少なくとも手足と頭の部分はあるはず」


「両腕と両脚は。頭はどこを探しても見つからん」


(最も今は片方づつしかないがな。奴らがあれを何に使うか一つ見物といくか)


「困ったな。あれが一番重要なパーツなのに」


ティブロンの陰謀を知らぬ古川はPC画面に地図マップを開いてこれまでの捜索範囲をさらに拡大すべきか、と検討を始める。


「それも重要だが今はあの影人間の対処を考える必要がある。ケイ、学校で何があったのだ?」


黒川博士は呼び出した人物全てが揃ったところで半ば強引に話を始めた。


「まずは学校に影人間の生徒が来た事かな。体育のバレーボールの授業でオリンピック選手さながらの運動能力を示してバレたんだよ。それだけなら禁止されているってだけの事なんだけど、問題はここからで本物の生徒との連絡が全く取れなくなっているんだ」


「その生徒は一人暮らしなんですか?親が居れば安否くらいすぐにわかるだろうに」


「古川さん、問題の生徒の1人幸野の家は家族全員が影人間を作ったらしくてその誰とも連絡が取れないみたいなんです。他にもこうしてオリジナルと言っていいのか分かりませんがそうやって連絡が取れない生徒が藤栄高校では10名います」


「その幸野の家に行ってみたんだろう、ケイ」


「ええ、父さん。その家には誰もいないんですよ。影人間さえもね。そこはマルスのサーチ機能を使って調べたから間違いは無い」


「機械の故障でなければ、だが」


「マルスの機能は完璧ですよ、ミスターティブロン」


古川の抗議を受け流しつつティブロンは続ける


「しかしこれをどう見るか?黒川博士は影人間の反乱を恐れていらっしゃるんでしょう?」


その言葉は揶揄する所の全くない真摯な物だった。


「というよりもこの影人間を作る技術はどこから来たのか、そして誰が何の目的で作り出したのか。それが重要だ。ただ便利だから、楽が出来るからというだけで何も考えずに影人間を使い続ける事は人間の中の怠惰を加速させ、やがては文明の停滞と消滅を招きかねない。それは文明存続委員会が最優先で阻止すべき事態といわざるを得ない」


「まさか影人間をマルスで処理するんですか?証拠が無ければ民衆は納得しませんよ」


「影人間は死なないというのは人間の通常の攻撃ではという意味だ。古川君、君が示したデータによればあれには少量だがエレメンタル・エナジーが放出されている。それならばマルスでも対処できる。しかし今や日本中にばら撒かれている影人間を潰すのは非効率的だ。そこで大本を見つけ、これを叩く」


「だとしても薬液の製造工場は所在不明、製造者も今日まで名乗りでないとなるとこれは一筋縄ではいかないですよ」


「だが、民衆は金を払ってあれを購入している。古川君、ここに幸野家の通帳がある。そこから辿ってみてくれ」


「ええ・・・文明存続委員会は今や政府お抱えの組織とは言えこれはさすがに気が引けるなア」


「人類の一大事だ。頼む」


古川はゲンナリした様子を見せるが黒川が頭を下げてまでの頼みに応じない訳にはいかなかった。


黒川という男は普段そんな事をしない人物だった。


それがここまでさせるという事の重大さをこの場の全員が感じていた。




東京都内某所


廃墟同然のビルの地下室に所狭しと人が並んでいる。


彼らは老若男女年齢もバラバラと一見すると全く関係性を見出せない。


「次25番」


地下室の奥の部屋から声が聞こえてくると番号を呼ばれた男はその中に音も無く入る。


そしてその男が出てくることは無かった。


「次35番36番」


次に呼ばれたのは高校生くらいの男子とその母親といったところか。


その二人が入った先には大きな裸電球が一つ下がっているだけの病院の診察室を思わせる部屋でその中央に背広を着た男とその後ろに白衣を着たサングラスの男が立っていた。


「どうだね。ヒーローの記憶を思い出したかね?」


背広の男は呼んだ人間の足元に向かって呼びかけた。


少年と母親どちらからも返事は無い。


「ドクター」


すると背後の白衣の男がカメラのレンズが付いたヘッドホンの様な物を少年と母親に被せる。


ヘッドホン全体に紫の電流が走る。


「うわああああ!」


「きゃああああ!」


悲鳴は本人の口からではなく足元に伸びる影から聞こえてきた。


だが男2人はその悲鳴に顔色も変えず顔を向ける事すらせず、カメラのレンズからの映像を見てほくそ笑む。


「駄目じゃないか。聞かれた事にはきちんと答えなくちゃ」


白衣の男が薄笑いを浮かべる。


「どうです、これで揃いそうですか」


「本当ならこれだけでは不十分と言いたいところだが当事者でない以上は得られる情報はこの程度か。本当はもっと形態があるらしいがここに映っているのは3つか」


映像はレジリエンスの戦いや彼が人々を救助する場面が映し出されている。


その戦いの1つ1つは断片的な物でノイズが入ったかと思うと急に鮮明な映像が現れたりと安定しない。


「喜納君が文明存続委員会を離反する時に映像を持ち出せなかったのが痛いね。それに例のマルスとやらは影も形も無い」


「言うな!あれは黒川含む数名しか閲覧できんよう厳重なプロテクトが掛けられている。マルスに関してもだ。私は黒川によってマルスプロジェクトから外された途端アレに関する情報へのアクセス権限を取り上げられたからな。Dr田出井、この計画の肝要たる幻魔闘士を本当に造る事が本当にできるのですか?」


白衣の男はもちろん、と頷く。


「だがその前に」


喜納と呼ばれた背広の男が少年の影に覗き込む。


「藤栄高等学校の幸野君だったね。最近現れたマルス、銀と緑の戦士の名前だがね。そいつはどうやら君の高校に入学したらしいんだ。君は知っているかな?」


「もう何も言わないぞ。約束を叶えてくれないなら何も言わないぞ」


幸野少年の影は悲鳴に近い叫びを上げる。


「馬鹿を言え!そうなったのは影人間の力を使い過ぎたからだろうが。Dr田出井の作ったシャドー・ピープル、世間では影人間と呼ばれているモノはな、コピー元が生命体ならばその生命体のエネルギーを吸って動く。そして本物になり替わり、オリジナルが影となるのだ。大方ヒーローごっこで影に色々やらせた反動が今の状態だという事を忘れるな。つまりは自業自得だ」


「まあ言わないのならそれでもいいよ。君と君の母上の記憶から一応目的の1つは達成できそうだ。君ら影人間の最後の役目はこれに入り、我々の目的の為の最強兵器の構成物質の1つのなる事だ。つまり君達をこれに入れて造り変えるのさ」


田出井と呼ばれた白衣の男はスポイトの様な物を持って喜納の後に続く


「い、嫌だやめて」


「いいじゃないか。君の望む形ではないが君はヒーローの細胞の一部となる事が出来るんだ。家族も一緒にね」


「あいつだ。2年C組の転校生だ。そいつの活躍は同じクラスの八重島が見ているはずだ。だから」


「はいありがとう」


助けて、という命乞いの懇願のビブラートを聞き流しながらDr田出井はスポイト状の器具のシリンダーを引くと2人の影人間をその中に吸い込んだ。


「さて、僕はこれの調整にかかるよ。その八重島とかいう子に関しては君に任せる」


「ならf市にいる数体のシャドー・ピープルを覚醒させる。それだけで文明存続委員会の奴らは手出しできないはずだ。フフフ黒川奴、いや文明存続委員会の無能共に誰を解雇したのか判らせてやる」



f市の駅は2つの鉄道とバスのターミナルがある事で夕方の通勤・通学帰りのラッシュアワー時にはかなりの人でごった返していた。


当然駅前の飲食店やスーパー等の商店やゲームセンターといった娯楽施設にも多くの人が出入りする。


その繁華街に最近できたディスカウントストアに八重島紗良・松川かおり・竹山さゆみの3人は来ていた。


新しくできた事とf市駅前にこの手の店は今まで無かった事もあり店内は非常に混雑していた。


「凄い数だね」


「商品が?人が?どっちみちもう無理。気分悪くなりそう」


さゆみは青い顔しながら出口へ向かう。


紗良とかおりはさゆみをガードするように左右に立って共に外へ出る。


「ハーッ、空気がおいしい」


「大げさって言いたいけどあの状態はあたしも勘弁かな」


さゆみに倣って紗良も深呼吸する。


「昨日できたばかりだっていうからしばらくはこんな感じじゃない?」


かおりはそう言うと後ろを振り返る。


「どうしたの?」


「いやなんかさ、視線を感じるというか」


「ヤダ、変質者とか?人込みに紛れれば何とか()けるかも」


「そうだね。こっちの裏道の方がバス停への近道だけどそうしよう。後もう後ろは振り向かない」


さゆみの提案に2人は頷き、大通りへと向かう。


大通りには全国チェーンの飲み屋やレストランが軒を連ねておりここはここで酔っ払いに絡まれたりする危険があったが、人通りはそれなりに多いものの、まだ6時少し前という時間ではそこまで出来上がっている人間は幸いにもいなかった。


「あいつらだよ」


かおりが交差点のカーブミラーに写ったスカジャンを着た3人組の男達を見て紗良に囁いた。


「カオリン、あんまり見ちゃダメ」


紗良はそう言うと青から赤に点滅する信号を見ると2人の友人達と走って横断歩道を渡る。


「ゲッ、あいつら追ってきた!」


かおりはカーブミラーに写る男達も自分達が走るのに合わせて走り出したのを見た。


「交番近いからそこまで走ろう!」


だが紗良の提案は無数の悲鳴共にかき消された。


「え、ええっ何これ?」


恐る恐る振り返った紗良達はそこに3人の男達が立っている。後ろにいたはずの多くの人影は煙の様に消えていた。


「あいつら、人間を影にして吸収しちまったぞ」という声が聞こえ、それを合図に周辺の人々はパニック状態になり、我先にと逃げだす。


ユラリ、と3人の男達が歩き出す。同時に追跡の邪魔となる人々を影にしてその体に取り込みながら獲物を追う。


紗良は逃げ惑う人々の中でかおりやさゆみらとはぐれてしまった。


あの男達はユラユラと自分の方へ歩いてくるのを見て恐怖で足がすくんで動けない。喉がカラカラに乾いて声も出ない。


その時特徴的な駆動音、レジリエンスと自分達を救ってくれたあのバイクの爆音が大通りに響きわたった。



ケイは通報を受けるとマルスの装甲服を装着し、専用バイク・ガンウルフを駆って現場に駆け付けた。


そこは人の波で歩道も車道も溢れており、これ以上バイクで移動できないと知ると徒歩でUMAの許へと向かい、その先で立ちすくんでいる紗良を見つける。


「紗良さん。ここは危険だ。早く逃げるんだ」


「あ・・・ああ。ありがとう」


くぐもってはいるがクラスメイトの声を聞いて安心したのか紗良は我に返ると踵を返して人の波に消えていった。


「さて女の子に血腥い戦場を見せる訳にはいかないからな。しかし人間に化けたままとはね。サーチ!」


ケイの音声入力に呼応し、マルスのヘルメットに内蔵された分析装置が起動し、バイザー奥の黄色い切れ長のツインアイが輝く。


マルスの見た映像を文明存続委員会のコンピューターが分析し、有効な手を弾き出す。


それを告げる無線の音が入ると同時にその弱点へ向けて拳銃型デバイス・マルスブラスターを撃つべくホルスターからブラスターのグリップを引き抜こうとしたがその無線は撃つなという強い制止だった。


「何故だ、父さん!?」


専属オペレーターであるはずの笠井恵美ではなく、委員会代表で父親である黒川博士の声にケイは思わず声を荒げる。


「分析結果を送る」


黒川博士の声は動揺を隠しきれない声で息子へデータを送る。


「これは・・・解析結果は人間?バカな、現に奴らは人を吸収して・・・映像にも残っているはず!ならば」


「やめろ!民衆はそんなものは信じない。こちらとしてもそんな映像は世間に出せん。そんな事をしたら文明崩壊の引き金を引きかねないからな」


「じゃあ、指を咥えて見ていろと言うのか!今目の前で人間を煙にして吸収しているあの怪物共の蛮行を!?」


男達は逃げ惑う人々を黒い煙に変えながらマルスへ近づいてくる。


(近づいてくるならそれでもいい。父さん達もまさか正当防衛までは否定しないだろう。至近距離で仕留めてやる)


そう決意するとマルスは両手をだらりと下げる。この状態から最大出力のブラスターを抜き打ちで放つのに0.3秒と掛からない。その自信がケイにはあった。


だが結末は全く違う形で訪れた。


男達の目の前に突如レジリエンスが地面から飛び出してきたのだった。


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