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魔甲闘士レジリエンス   作者: 紀之


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第34話 悪魔の暗躍




 ンデキデキに破壊された村は休火山の中腹にある。


そこは彼の加護により人間が集落を作って暮らせるほどの豊かさがあった。


その村はサイ型UMAエメラ・ントゥカの突然の襲撃で破壊された。尤もそれはエメラにとっては亀型精霊級UMAンデキデキを討伐するという前代未聞の冒険の為の前菜にすぎなかったのだが。


そもそもこんな事になったのもジャージーデビルというUMAから『フライング・ヒューマノイドらの企みが潰えた今こそUMA全体が結束しなければならん。それなのに人間に味方するンデキデキのような存在はけしからんと思わんか?見せしめのためにも人間への宣戦布告の為にも奴を討伐してくれないか?』という懇願にも近い依頼を受けたからだった。


この申し出にエメラ・ントゥカは一も二もなく承諾した。


彼は密かに崇拝していたイエティの為に彼女の属しているフライング・ヒューマノイドのレジリエンスへ仕掛けた決戦に間に合わなかった事を悔やんでいたからだ。


こうした経緯からエメラ・ントゥカは標的の潜む湖へ行くと嫌がるンデキデキに彼の守護する人間達への更なる攻撃をちらつかせることで無理やり決闘に応じさせ、自慢の胸の角で一突きにして倒してしまった。


その後この戦闘の際に発生した次元の穴に飲み込まれて現世へとやって来た彼は魔甲闘士マルスによって倒されたのは既に見た通りである。


さて倒されたンデキデキはサイの怪物の角を通して体内へと入りこんだジャージーデビルの肉塊に操られる形で麓の村へと降りてきた。そこへ事件解決のためにやって来たレジリエンスらと望まぬ形で戦う事となったのだった。




ンデキデキは首が短いため胴体とほぼ一体化したように見える頭部に光る単眼を輝かせ、体を左右に振ってノソノソ移動する姿はユーモラスさえ感じる。


その姿だけ見ればレジリエンスも彼に協力するUMA2体も最初彼が正気を失っているとはとても思えなかった。


しかし、彼らの姿を認めたンデキデキが奇声を上げて猛然と突っ込んでくるのを見てグランドウォリア―となったレジリエンスとガッシングラムが応戦する。


「あいつの体からジャージーデビルのエナジーを感じる。操られているのか。奴に生半可な攻撃は効かんぞ」


サンダーバードの眼下でグランドウォリア―がンデキデキの胴体に高周波アックスを撃ち込むのを見て警告する。


「コイツに切り裂けないものは・・・あっ」


衝撃で斧を飛ばされ、さらにンデキデキの胴体に出来た傷は瞬く間に塞がる。


「止せ、グランドウォリア―!」


ガッシングラムはサンダーバードの静止を聞かず正面からンデキデキを文字通り殴りつける。


しかし吹き飛んだのはグランドウォリア―の方だった。


衝撃で合身が解ける。


「あいつの体はどうなっていやがる」


「忠告を聞かないからだ。あいつは動きの遅さを補うために体をあらゆる遠距離攻撃を無効化する膜で覆っているのと背中以外は物理攻撃の衝撃をそのまま相手に跳ね返す事ができる。生半可な攻撃は通用しないと言ったのはそういう事だ」


「そうか、あれがその膜か。何か角か牙の様な破片が奴の体内にあってそこから瘴気の様な物が出ているな」


相手の能力をガッシングラムに解説する霊鳥の横で立ち上がって探知魔法プサクフを唱えたレジリエンスは異変の原因を突き止める。


「ならそいつを引っこ抜けば」


「多分な。その方法だが」


「背中から俺とサンダーバードが斧と爪で引っこ抜いてやる。その間タツト、お前は奴が動かない様押さえつけておいてくれ」


「それでいこう。行くぞ」


再び両腕を振り上げて襲い掛かるンデキデキをレジリエンスが抑え込む。


(自分の攻撃を受ける事に対しては先程の反射能力は発動しないらしい)


だが相手の凄まじいパワーの前ではそれを喜んでもいられない。



「ンデキデキ、落ち着くんだ」


ンデキデキの単眼が輝き、眼から熱線が放たれる。


至近距離からの攻撃にレジリエンスは鎧から火花を散らして倒れる。


ンデキデキが両腕を振り下ろす前に両肩のエレメンタル・アンプリファイアを三角形に展開し、両腕に装着する。



鎧に刻まれた『身体強化』の魔法をアンプリファイアが増幅強化し腕力を強化する。


ガッシングラムが仕事をやりやすくする為に相手をできる限り固定する必要があるからだ。


「少し我慢しろよ」


ガッシングラムは甲羅を切り裂き、そこにサンダーバードの細い足が割れ目に差し込まれる。


その時だった。


甲羅の中から黒い手が霊鳥の足を掴んだのだ。


手は甲羅に引きずり込もうとその力を籠める。


「いかん。ガッシングラム、手伝ってくれ」


霊鳥が飛び上がるのと同時にガッシングラムが両腕でその手を引きずり出す。


凄まじい苦悶の声を上げながらンデキデキがレジリエンスに倒れこむ。


「グハッ」


鎧越しに肺を圧迫され一瞬レジリエンスは息ができなくなる。


ンデキデキから十分引き剥がした所でサンダーバードが電撃を放ちその手の持ち主を吹き飛ばした。


「何だ、これがジャージーデビル?馬とコウモリか?2つの動物の特徴があるぞ」


「特殊な条件下で人間が変化した合成型というべき奴だ」


ガッシングラムにサンダーバードが答える。


「そうとも。俺様ジャージーデビルは他の生物の特徴を取り込むことができる。今はエメラ・ントゥカの力がな」


ヤギの頭にコウモリの羽を着けた怪物は全身から角を生やし始めた。


(チッ、亀野郎の特性を取り込むには時間が無さすぎたか。だがまあいい)


「あいつもそこのマヌケも扱いやすくてな。俺がわざとあいつにぶつかったとも知らずにあのサイ野郎、見事にそそのかしされてこの亀の腹に一突きさ。当然奴は吹っ飛ばされるが角の先端は残る。それに俺の細胞が入っていって分体の俺が奴の体内で成長しながら操っていたってわけよ」


「ペラペラしゃべる癖は変わらないな、親父」


「何だと。あいつお前の父親なのか」


驚くガッシングラムにジャージーデビルはうすら笑いを浮かべて


「そうだとも。親として子供を躾ないとなあ。親に逆らうとどうなるかを命で分からせてやる」


「あんたが俺を殺そうとしなかったら。俺があんたの言う事を受け入れていたら、俺はレジリエンスに選ばれなかった。俺が今ここにいるのはあんたみたいな悪を世界から排除する為だ。それを気が付かせてくれた礼を皮肉抜きで今返す。融合大合身」


そう言うとレジリエンスは鳥の頭を持つグリフォンと合身するとスィスモスとなる。


新造された両肩のパーツは事前にパリノスから説明を受けていたように左右に90度跳ねあがって過剰なエナジーを放出する放熱版の役割を果たす。


(なるほど。確かに最初の合身の時より体にかかる負荷は小さくなっている。これも町の皆のおかげか)


達人は心の中でパリノスらに礼を言う。


「そんなコケオドシが!!」


そう言うとジャージーデビルは全身の角から稲妻状の光線を放つ。


それはスィスモスではなく、後方のンデキデキを狙っていた。


『ヴァリーティタ(ギリシア語で重力の意)』


スィスモスは重力を操りンデキデキへ向かっていた光線を自身へと誘導する。


そして頭上で球状となった光線を右手で握りつぶす。


「コイツ、ふざけたマネを!」


「今度はお前が受ける番だ!」


スィスモスが右手を下げるとその動きに合わせてジャージーデビルが超重力の枷を嵌められて落下する。


「グオオッ、全く身動きが取れん!?」


ジャージーデビルにスィスモスが巨大な両刃の大斧を振りあげて迫る。


天焦轟斬


赤熱化した大斧を振り下ろし、ジャージーデビルは文字通り真っ二つになり、赤い光を発して爆散する。


「あっけなさすぎる」


分離したレジリエンスの疑問にサンダーバードも


「そうだな。妙な真似をしていた割にはさしたる抵抗も罠もない」


「分体と言っていたな。本体はどこにいて何をしているんだ?」


ガッシングラムの疑問に


「火山湖だ」


ンデキデキの言葉に一同が振り向く。


彼の恐るべき治癒能力は割れた甲羅を既に元通りにしていた。


「湖に何かあるのか」


「あるとも、サンダーバード。湖底に『双子の宝玉』がな。ワシはそれを守っていたのだ」


「馬鹿な。あんな所にか?」


ガッシングラムが驚きの声を上げる。


「その双子の宝玉とは?」


「お前は知らなかったな。最高純度の火と水の魔力を秘めている赤と青の半球が合わさった宝玉だ」


サンダーバードの説明に


「火と水は相性が悪いんじゃないのか」


「だからこその宝玉なのさ。本来ならありえないことが起きているんだから」


レジリエンスの疑問にガッシングラムが説明になっていない答えを返す。


「とにかく急ごう。宝玉が無事か確かめねば」


移動の遅いンデキデキを運ぶためサンダーバードとガッシングラムは再度ライオン顔のグリフォンへと合体した。



「やはり無い。無くなっている」


ンデキデキが悲痛な声を上げる。


「しかし、あれを何の目的で使うつもりだ?」


「内部の魔力を吸収するといってもUMAにとっては大した強化にはならないからな」


「どう使うのが一番効果的なんですか?」


レジリエンスの疑問に


「加工できればだが火と水の魔法鎧の材料になる。それも考え得る限り最高の性能を発揮するだろう。最もそんな技術者が…いるな」


サンダーバードが説明しながら何かに気付く。


「エリクシリオの父親、か」


「だとしたら尚更説明がつかないぞ。ジャージーデビルは自分を殺す計画に自ら加担している事になる」


「そうだ。そこに何かがある。審判の日をあの科学者が予見している事と恐らく関係があるだろうな。だがあの様子だと単なる考えなしの愉快犯という可能性も無くはないがな」


ガッシングラムの疑問にサンダーバードは自分の考えを述べる。それが何なのかは全員全く判らなかったが。




ンデキデキと別れた一行はレフテリアの町に戻り事の次第をエリクシリオに報告した。


「そうですか。ご苦労様でした。しかしこれから良くない事が起きる気がします。他の宝玉がどこにあるかわかりませんか?それが判れば先手を打つこともできると思うのですが」


「我も全能ではないのでな。だが心当たりがある。最もそいつは恐らく現世で旅をしているだろうがな」


エリクシリオへ窓の外にいるサンダーバードは答えるがその声音には珍しく自信なさげだった。


「おい、あいつはとんでもない性悪女だと聞くぜ。そんな奴に頭下げるのは自殺行為だと思うぞ。何を要求してくるか判らん」


サンダーバードの隣に立っているガッシングラムが抗議する。


「その人物は有名なのですか?」とエリクシリオにサンダーバードが


「グローツラングという蛇のUMAだ。あの女は世界中のあらゆる宝石や貴金属を知っているし、その一部を所有してもいる。自分の色香と力を使って各地のUMAの一族から巻き上げた物もあるから色んなところから恨みを買っているがな」


「その目的は?」


「現世風に言えば婚活だそうだ。ただどうにもその目的は宝飾品を得るための方便でしかないようだがな。最も相手もそれに気が付くから長続きした試しがないみたいだが」


達人にガッシングラムが答える。自然達人へ皆の注目が集まる。


「奴の好みは東洋系らしい。だがお前は好みじゃなさそうだが時間経過で嗜好変化もあるからな」


「・・・・汚らわしい。装飾品の為に異性を篭絡するなどとは。タツト、貴方は関わってはいけませんよ。何ならこの件は私が」


ガッシングラムの軽口を受けてその言葉にエリクシリオの顔色が赤くなったり青くなったりしているのを見てとったのだが予想以上に取り乱しているのを見てガッシングラムは内心やり過ぎたと焦る。


「その心配はありませんよ。俺はこの通り身だしなみにも気を使わないし、貧乏人ですからね。向こうは見向きもしませんよ」

「しかし」

まだ何かを言いかけたエリクシリオを遮ってサンダーバードが話をまとめにかかる。


「よし、手分けをしよう。我らUMA組はここアトランティスを、達人は現世を調べてくれ。変身していれば10代後半くらいの美人だが妙な服装と巨漢のお供を連れているからかなり目立つ」


「アトランティス?」


「そうだ。言わなかったか?アトランティスは大陸ごと異世界に転移したのだ。地球の持つ魔力すなわちエレメンタル・エナジーの暴走でな」


「そんな事が・・・」


「とにかく任せたぞ」


それぞれに散っていく2体のUMAを見送った後エリクシリオは達人に


「気を付けてくださいね。一筋縄ではいかない相手の様ですから」


「そのようですね」


「お互い父親に恵まれませんね。だから、という訳ではありませんが」


他人の心の機微に疎い達人もさすがに先程から彼女の中で激しい感情の激突がある事に気付いていた。


「何かあったら私にも報告をお願いします。出来ることなら今のままの貴方のままで」


「・・今俺の心を」


僅か数秒


エリクシリオは自分の唇を驚く達人に触れる。


「う?む?」


「勝手に心を読んだお詫びです。これが私の」


恥ずかしさから最後まで言い切れず足早に彼女は部屋から立ち去った。


達人は彫像のようにその場を動けなかった。





「アゲシラオス博士、双子の宝玉を持って来たぜ。次はなんだ?」


かつては巨大な塔と思しき廃墟。


その広い部屋で一心に何かを調べる老人にジャージーデビルが尋ねる。


その背中には太い配線が繋がれており、配線は鈍い輝きを放つ赤い宝石に繋がれていた。手渡された宝玉の真贋を確かめるように、右眼に嵌めた片眼鏡を近づけてながら


「本物の様だな。これで生命維持に時間を割かれなくて済む。ところで君はアトランティス人とそれ以外の人間の外見の区別がつくかね?」


「知らんな。興味もない」


それに構わず老人は白髪頭を振り回しながら


「そうだろうとも。だが君が現世と呼ぶあの世界にも生き残りがいるはずなんだ。彼らと接触を取りたい。場所の特定ができんか?」


「どうやってだ?まさか世界中しらみつぶしに探せってんならオコトワリだぜ」


「そうでもない。君も気づいているだろうが君達に抵抗している連中がいるはずだ。そこに必ず同胞はいる。でないと説明がつかない事があるのでな。特定出来たらそいつなりそいつのいそうなところにこれを落としてきてくれ。後はグローツラングの目玉があれば、以前君に話した世界をひっくり返す出来事が起こせるのだ」


そう一気にまくし立てると死に瀕した人間が起こすような喘鳴を立てながらアゲシラオス博士は赤と青の不可思議な球を持って部屋の奥の装置に向かう。


「フン、まあいいさ。そいつが面白くなけりゃ殺すだけだしな。いいぜ、ただしやり方は任せてもらうぞ」


アゲシラオスは答える代わりにジャージーデビルに手を振る。


彼は博士の収集したUMA辞典のあるページを見て邪悪な笑みを浮かべる。


(ほう、面白い奴らがいるもんだ。俺も楽しまないとなあ)


ジャージーデビルは恐るべき計画を胸にどこかへと飛び去った。

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