第32話 2つの世界・2人の戦士
「忘れ物は無い?ケイ君は大丈夫だと思うけど出来るだけ大人しく過ごすのよ。施設とは違いますからね」
「分かっているよ、笠井さん」
今日から9月。マルス初陣とレジリエンス敗北のあの日から2か月が経っていた。
黒川博士の息子黒川ケイは二学期が始まるf市市立藤栄高等学校への転入の初日を迎えていた。
彼自身が守る日常とはどういうものか
それを知る為の学校生活なのである。
そしてそれを壊すような行為を学校内でするな、と今この瞬間もその為の心構えを笠井恵美から入念に受けていた。
彼自身は芹沢達人達と違い戸籍の届け出はされていた。
しかし、彼は父親の方針で義務教育よりも「非合法」の施設での教育を受けている期間の方が長い。
その為小学校・中学校共に思い出と呼べる物は皆無に近い。
(だがそれも今日で終わりだ)
ケイの心は弾んでいた。
「待ってろよ。俺の日常」
ケイは鞄を担ぎ、外に飛び出した。
「今日転校生が来るって知ってる?」
松川かおりが興奮気味にクラスメイトに報告する。
「マジ!?かわいい女の子だといいなあ」
「残念。男子でした~」
「何だよ。てか何で知ってんの?」
男子生徒の疑問に
「さっきさ~見ちゃったんだよね。見慣れない顔のイケメンが職員室に入っていくの」
「どんな子?」
竹山さゆみが聞く。
「小柄だけど亜麻色の髪のザ・美少年って感じ」
かおりはうっとりした顔でその転校生の印象を語る。
周りの女子生徒も期待で騒がしくなる。
そこに担任とケイが入ってきた。彼は右耳に黒い小型のレシーバーを着けていた。
「静かに。噂になっていると思うが今日から新しい仲間を紹介する」
「黒川ケイです。先生方には話してはありますがちょくちょく抜ける事になってご迷惑をお掛けするかもしれませんがよろしくお願いします」
顔立ちに似つかわしい爽やかな声だった。
女子生徒達から歓声が上がる。
「では黒川は一番後ろの席に」
担任に言われた最後尾の角の席にケイは着く。そして左隣の席の女生徒に声を掛ける。
「今日からよろしく。ええと」
「私は八重島紗良。紗良でいいよ」
「あたし、松川かおり。かおりでいいよ。よろしくね」
紗良の左隣のかおりが身を乗り出す。
「よろしく。紗良さん。かおりさん」
チャイムが鳴り、授業が始まった。
ケイの学力はその日の授業で出された教師からの質問に答えられる程にはあり、その度に教室から歓声が上がる。
更には当てられた紗良やかおりに何度か助け船をさりげなく出す事も幾度かあった。
転校初日という事もあってかその一挙手一投足注目の的だった彼はの周りには授業の合間には人だかりが出来ていた。
「いやー助かりましたわ。ケイ君実は頭いいでしょ?」
「そうかな?数学は以前習ったやつの応用だよ。後のはただ覚えていたってだけさ」
その言葉に誰もが感心の声を上げる。
話術か人柄か、ケイの言葉には一片の嫌味を感じさせない物があった。
しかし、耳に付けたレシーバーに関する質問にはやんわりと回答を拒否していた。
その質問の中には彼の正体を的確に突いた物もあったがそれに関しては彼はノーコメントを繰り返すのみだった。
(あの時私達を助けてくれたのはきっと彼だ)
紗良はそのケイの様子が家にいたあの居候とそっくりだったのを見てそう確信していた。
(達人、早く帰ってきなさいよ)
心の中でそう祈るのだった。
同時刻
f市内中心から南へ2キロほど離れた先に大きな交差点がある。
この場所の一角は現在道路工事の為カラーコーンや柵で区切られていた。
待ちに待った休憩時間となった作業員達は腰を下ろし水分補給や弁当を食べていた。
「うん?今そこのマンホールが動かなかったか?」
「いや。怖い事言うなよ。最近訳の分からん事件が増えているんだから」
作業員達は歩道の自販機近くにある件のマンホールを見たが特に変わった様子は見られない。
「スマンスマン。ただの見間違いだったようだ」
そう言って作業員は空のペットボトルを捨てるべく、立ち上がる。
彼が敷石を跨いで歩道に入り自販機に近づいたその時。
マンホールの蓋を破って巨大なワニが飛び出した。
「うわっ!!た、助けてくれー!!」
ワニは作業員をその細長い口に咥えるとマンホールへと引きずり込んだ。
UMA出現
その知らせを聞いた文明存続委員会は4限の授業中のケイの耳に付けたレシーバーから『出動』命令が出た。
「先生、すいません。出ます」
「あ、ああそうか。まあがんばれよ」
ケイの事情を知る担任はそう言ってケイの離席を認める。
この事を最初に聞いた時この担任含めた学校関係者は半信半疑だった。
その為ケイは彼らの目の前でマルスへ『変身』する羽目になった。
この事実を突き尽きられてようやく彼らはケイの『特別待遇』に納得したのだった。
校庭の外で文明存続委員会のトレーラーが停まっていた。
それにケイは飛び込み、マルスの緑と銀のツートンカラーの強化装甲服を下半身から順に身に着ける。
「笠井さん、目標は?」
「駅前を北上中。ただし地下をね」
「地下?」
「下水管から襲撃を繰り返しているわ。だからどんな能力かは判らない」
「出たとこ勝負か。ナビよろしく」
マルスは専用バイク・ガンウルフを駆ってトレーラーを飛びだす。
ナビゲーションに従って移動中、割れたマンホールや何かにかじられ、両断された車やバイクが見えた。
それらにはノコギリの刃で切られた歪な断面が見られた。
(下水道に潜むワニね)
ケイは昔聞いた都市伝説を思い出していた。
「ケイ君、前方300mに強力な反応あり。転送するわ。分かっていると思うけど街中でディバイン・ジャッジメントは駄目よ。周りを巻き込みかねないから」
「もちろん」
進路上にマンホールを認めたマルスはガンウルフのスピードを上げ前の車を追い越す。
「さあ出てこい」
ガンウルフを跳躍させ進路上のマンホールの直上へとマルスが到達するのとその下から何かが飛び出てくるのは同時だった。
そのUMAは細長い口をしたガビアルというワニに似ていた。
巨大ワニは直ぐに人型となる。
口を開けたワニの頭部が180度回転しその後頭部に巨大な単眼が光る。
鱗状の鎧を纏った体
3本のトゲが生えている大きく横に張り出した肩
それがワニ型UMAマハンバの進化体だった。
フライング・ヒューマノイド1派が敗北した事はUMA陣営の勢力バランスを崩す事になった。
このマハンバは彼らの後釜を狙い、発言力と勢力拡大の為に人間社会へ独自攻撃を開始したのだった。
マハンバは両手に持ったチェーンソーを回転させそれを振り回す。
ワニの歯を模したノコギリの刃がマルスに向かって飛んでいく。
その直線的な攻撃をマルスは難なく躱す。
チェーンソーの刃は直ぐに『再生』し第二撃が繰り出される。
同時にマハンバは単眼から熱線を放つ。
チェーンソーの刃がビームを反射する。
反射されたビームは刃を伝いその軌道を変えながらマルスの背中を襲う。
「やるな」
マルスは足裏に装備されたローラーで熱線を躱す。
見ればマルスの周りには無数のチェーンソーの小さな刃が浮遊していた。
再度怪物が熱線を放つ。
熱線が浮遊する刃の1つに当たる直前
マルスは右腰のホルスターから拳銃型デバイス『マルスブラスター』を抜きその刃を光弾で撃ち弾き飛ばした。
そのまま直進した熱線は別の刃に向かうがその軌道を読んだマルスはその反射先の刃を先んじて排除する。
マルスは更に2発の光弾を撃ちこみ正面の刃を排除し進路を確保すると背中のブースターを吹かし足裏のローラーダッシュ
マハンバは両手のチェン―ソーを闇雲に振るって刃を飛ばし、その合間に熱線を単眼から放つ。
「笠井さん、後ろのナビはよろしく」
ケイはそう言いながら発射されるビームやチェーンソーの刃を躱していく。
足元から火花を出しながら高速で接近しつつそれらの攻撃を躱し、躱し切れないいくつかの刃をブラスターの光弾で弾く。
2度ほど背後からの反射されたビームが来たが笠井からの警告でそれも回避する。
怪物とマルスの距離は2m程まで縮まっていた。
怪物が右手のチェーンソーを横薙ぎにすると同時にマルスは急旋回を掛けマハンバの左脇を抜けようとする。
すかさずマハンバは左手のチェーンソーを振り上げるがそれより早くマルスは背中のブースターを操作して飛び上がると宙返りをするとその状態から怪物の背中にマルスブラスターを至近距離で残弾3発全てを叩き込む。
火花が上がり、爆発で吹き飛ぶマハンバ。
「タフだな。だが」
地面に降りたマルスはベルトのバックル部分からUSB状のパワーユニットを引き抜く。
それをマルスブラスターのグリップから引き抜いた同型の物と交換した。
そしてブラスター左側にあるダイヤルを親指で操作し、光弾を『通常』から『最大出力』へと変える。
「人類の敵を排除する」
数倍の大きさとなった光弾がマハンバを貫き、爆発させる。
「さて、学校のランチタイムを楽しむとしますか」
ガンウルフに跨ったマルスは鼻歌交じりでトレーラーへと戻って行った。
異世界
レフテリアの町
この街を治めるエリクシリオは自室と執務室を兼ねた部屋で父親であるアゲシラオス博士の手紙の意味を調べていた。
机には古文書の類が散乱しているがそのどれもが曖昧でつかみどころがない。
「やがて審判の日が再び来る。その時をアトランティス人が再び乗り切るためこれを残す、か。お父様は何故町に滞在されなかったのか?何をしようとしてされているのか」
何度読み返しても父の手紙には娘である自分に言及している個所は無い。
書かれていたのは意味深な言葉の羅列とレジリエンスの鎧にある戦闘記録の複製を持っていくという事だけだった。
(・・・レジリエンス・・・・タツトが無事で良かった)
2か月前のあの日全身をズタズタに破壊されたレジリエンスを連れて霊鳥にして一族の守護者サンダーバードがやって来た時、彼女はその惨状から悲鳴を上げるのをその強靭な精神力で何とか押し留め装着者の蘇生処置を命じたのだった。
幸運と言うべきか、それとも意思ある鎧の意地と言うべきか芹沢達人は全身に重傷を負っていたものの体の欠損は無かったがあと右に3ミリズレていれば心臓を貫かれて即死だったという危険な状態である事に変わりはなかった。
この状態から芹沢達人は恐るべき回復力を見せ、今ではもう歩く事すら出来るようになっていた。
だが装着者の様にはレジリエンスの鎧の修復はそう簡単にはいかない。
状態からして修復というより新造という単語が相応しく、素材となる鉱石は圧倒的に不足しており当初は残った残骸を鋳つぶして町の資源として再利用するという決定が下された。
ところがある朝どこでこの決定を知ったのか、レジリエンスの改修案とその為の技術指南書と必要な鉱石類が失踪したエリクシリオの父アゲシラオス博士の娘への手紙と共に町の神殿前に置かれていた。
そして今鎧は兜の額部分に搭載された風のエレメント・クリスタルに記憶された戦闘データと融合合身時のデータを元にした修復とアゲシラオス博士の提唱する大幅な改修を施されている最中であった。
「その魔力伝導管をその部分に。そうだ。増槽は背中に付けるんだ。配線を間違えるなよ。そうだ反射魔法の文字は削っていい。その分防御魔法の・・・それくらいわかるだろ!」
その作業の総責任者であるパリノス技術主任は部下達と喧々諤々の議論というよりも怒鳴り合いをしながらフウと息をつくと設計図を見ながら嘆息する。
「何を食べたらこんな発想を思いつくのだ?天才の考える事はよく分からん」
そこへ「増幅器の最終調整をお願いします」だの「出力を上げる必要性は本当にないのか」といった作業員からの矢継ぎ早に指示を仰ぐ声に答えながらパリノスは設計図片手にまた指示を出すのだった。
実際の所アゲシラオスから提示されたレジリエンスの改修案は一部を除いてパリノスの理解を超えた物だった。
だからこそ完成した時装着者にどんな作用を齎すかという不安と研究者としての興味があった。
中庭から起こった喧騒が手紙を読みながら父の真意を考えているエリクシリオを現実へ引き戻す。
そこには目を疑うような光景が繰り広げられていた。
城塞の中庭には即席のパンクラチオン(噛みつきと目つぶし以外は何をしてもいいという格闘技)の試合場が作られていた。
そこまではまだ良い。問題なのは町の兵士達に交じって半死人のはずの達人が参加しており、兵士の1人を場外へ吹きとばしていた事だ。
そこから聞こえるのは「馬鹿な。これが2か月に運び込まれた半死人だというのか」とか「鎧に選ばれるというのは神に祝福されているのと同じなんだなあ」といった畏怖というよりは一種の奇跡を見て感心しているといった具合だったが。
当然エリクシリオは町の長としてこれを看過する事は出来なかった。
中庭へと向かい群衆を解散させ、急場のリング上で今また兵の1人を格闘技で圧倒している芹沢達人を目力だけで中庭の隅に追いやった。
「あなたの回復力は彼らの言う通り神の加護あっての物でしょう。ならばそれに感謝し完全に治すことが務めと思いませんか?私があなたの肉体や精神を魔法で拘束しないのはあなたへの信頼の証だと判らないのですか」
「そうですね。だが戦いは待ってくれない。こちらが用意できようと出来まいと。今回の1件で思い知ったんです」
エリクシリオの詰問に達人はそう答える。
その言葉にエリクシリオは父が自分の知らぬ間に良からぬ事を吹き込んだのではないかと危惧する。
「いずれ来る審判の日」
呟くように出たその言葉を達人は聞き逃さなかった。
「それは何です?」
「父の手紙に書いてありました。大きな災厄が再び来ると。その用意の為にレジリエンスの強化をしろと」
「同じ父親でも子供への愛情の有無があるものですね」
「愛情?この手紙に?」
達人の妙な返しにエリクシリオが聞き咎めるように反論した。
「俺が同じ男だからというのもあるかもしれませんが、自分の出来ることでしか愛情を伝えられないという事です。俺も戦う事でしか周りの人間の好意に報いることができません・・・から・・・・」
達人は自分が何を言ったかを知って固まる。
それは相手も同じだった。
彼の場合は自覚していない感情を他人の行動を通して知ったという驚きの方が強かったが。
微妙な沈黙はどこかの町の軍隊が町を攻めようと向かって来ている、という報告で途切れる。
「分かりました。至急迎撃準備を。私も直ぐに行きます。達人、また後で」
「ええ」
中庭を去るエリクシリオを見ながら戦いには自分が必要になるという直感に突き動かされて達人は工廠へ向かった。
「来たか。お前と同じで完成度8割強といった所だ」
パリノスは完成間近の新生レジリエンスの解説をしたくてたまらないという様子だった。
「少し形が変わっている?」
「額部のむき出しだった風のエレメント・クリスタルを内装式にした。お前が持ってきたテベリスの頭部の解析で得た結果からな」
「このパーツは合身時に邪魔になりそうですが」
達人は両肩に新造された五角形の盾を見て言った。
「そこは問題ない。特にケイモーン・ノテロスとスィスモスへの合身時には左右に跳ね上がって余剰魔力を逃がす放熱板の役割を果たす。さらにこの先端部は分離して」
パリノスは実際に説明すべく右盾先端の金色のパーツを外す。
「いいか。このひし形の部品は魔力増幅機であると同時に両腕・両脚に装着できる。そしてこれを各四元素の記号に展開することでお前は魔法名を唱えるだけで良くなる。以前通りのやり方ももちろんできるがね」
パリノスは実際にそのひし形を展開して見せながら言った。
「反射魔法は?その魔法文字が削除されているみたいですが」
「ほう、こちらの文字を少しは覚えたか。お前の言う通り削除させてもらった。アゲシラオス博士には悪いがお前はあれを有効に使いこなせないようだし、現実問題として強力な魔法は跳ね返せないときているからな。代わりに防御能力を上げる魔法文字を刻んでいる」
「さっき言った合身時の負荷については?」
「それは以前より改善しているとしか言いようがない。実際の所どれほどの物かは使ってみなければ分からん。だが確実に分かる事は金属疲労を0にすることは不可能ということだな」
「そうですね」
そうはっきり言われると返す言葉もない。
「増槽を付けて稼働時間を延長し、出力もこの増幅器で上昇しているから合身前の強みを十二分に生かせるようにしてある。合身時は属性が固定されるから対処法が判らないままだと危険に陥る可能性もあるからな。逆に対処法が判明すれば仮に合身するとしても時間も短くても済むだろう」
「おい若造。早速出番だぞ。北の荒野から現れた軍団が怪物に襲われておる。首長は見殺しにせず助けてこいとの命令だ」
イオアンネス老人が工廠に入ってくるなりそう言った。
パリノスは肩をすくめるが、達人はそれに微笑を浮かべると
「了解」
といって巨大化した箱に入り、鎧を装着していく。
箱の中で達人の心は戦闘の事に切り替わっていた。
それは戦士として必要な事なのだが、同時に彼女をそこまで愛していないのではないかという疑念も浮かぶ。
(俺にあの男の血が流れている以上誰かを愛する資格などない。だからこそ俺は誰かの為に戦う)
そう結論付けるとレジリエンスは箱を飛びだし、荒野へ向かう。
生活が立ち行かなくなった人々が住んでいた村や町を捨て武装集団として近隣の町を襲うという事は、アトランティス大陸がこの地獄同然の世界に来てから日常茶飯事と言っていい出来事であった。今その一団が黒みがかった青色の蛇の怪物に襲われていた。
蛇は獲物達を密集させるようにその長い体を縦横に使い彼らを追い込んでいた。
そして一塊になった人々に何かの液体を吐きかける。
それは液体爆薬の一種でそれを受けた重装歩兵数人は一瞬で焼死した。
はずだった。
怪物が爆発と煙の晴れた先に見たのは灰色の壁に守られた人たちとそれを行った藍色の甲冑の姿だった。
怪物は巨大な単眼に機動隊の様なヘルメット状の頭部と防弾ジャケット状の鎧、両肩に小型の砲門を一対備えた人型の体に変化する。
それがヘビ型UMAエクスブローディング・スネークの進化体の姿である。
肩の砲門から先ほどの液体爆薬をレジリエンスへ乱射する。
レジリエンスは人々への被害を最小限にする為に彼らとは別の方向に走る。
周囲で次々と起こる爆発による煙に足を止めたレジリエンスの体に煙が晴れたと同時に怪物が鞭を巻き付ける。
「これは?」
よく見ればその鞭は蛇の頭を数珠つなぎにした物だった。
カチリと音がしてその蛇の頭が次々に爆発する。
しかしその爆発を受けたレジリエンスは全くの無傷だった。
レジリエンスは飛び上がり驚いている怪物の背後を取る。
そしてその体に渾身のパンチを叩き込む。
拳が当たる直前レジリエンスは怪物が体を逸らしたように思った。
それは躱すというよりも当たる位置を調節するという方が正しかった。
(なんだ?)
そう疑問に思った瞬間怪物のジャケット状の鎧が爆発し、爆風と鎧の破片が辺りに飛び散る。
レジリエンスは衝撃で拭き飛ばされる。
リアクティブアーマー
戦車等が爆発することで本体装甲への被弾を防ぐ補助装甲の1種である。
これを備えるのが蛇型UMAエクスプローディング・スネークのもう一つの能力だった。
怪物のそれは防御だけでなく、攻撃に転用できる『優れモノ』でもあった。
爆発した個所の鎧が瞬時に再生し、怪物は液体爆薬と鎧の破片を飛ばす。
2つの武器は互いの『充填時間』を補い間断の無い攻撃を可能とした。
「早速使わせてもらうか」
レジリエンスは左肩の盾から増幅器エレメント・アンプリファイアを引き抜くと左手に装着しひし形のそれを自分から見て逆三角形に変形させる。
そして機器中心部のバーを下に動かすことで土のエレメントシンボルを作ると「トイコス」と唱える。
灰色のバリアが左腕に形成され、弾丸を弾きながらもう片方のアンプリファイアを三角形に変形、右手に装着する。
液体爆薬を前転しながらで躱し、起き上がりざま「フロギストン」と唱え飛んできた鎧の破片に火球をぶつける。
爆風が起こるが構わず突っ込んだレジリエンスは持っていた杖先端を水の銛に変化させると左手の増幅器を元のひし形に戻すと杖の石突に装着すると、銛を再生しかかっているエクスプローディング・スネークの皮膚目掛けて投げつける。
出力の上昇で威力の上がった銛は怪物の体に深々と刺さる。
苦悶の叫びをあげる怪物の様子を見たレジリエンスはそのまま杖を振り上げた。
杖と銛を繋ぐ、水のエレメンタル・エナジーで出来た糸が伸びて怪物を地上から遠ざける。
「皆伏せろ!」同時にトイコスを唱え、人々を包む。
数秒後怪物は巨大な水泡と化し泡となって消える。
(これだけ立ち回って魔法嵐が起きないとはどういうことだ?審判の日と関係があるのか)
レジリエンスの疑問は荒野の風に巻かれ消えていくだけだった。




