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魔甲闘士レジリエンス   作者: 紀之


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第28話 UMA軍団総進撃(上)決戦




 E₃壊滅作戦の翌日。


「大変お世話になりました。八重島家のみなさん、それから芹沢達人生きていたらまた会いましょう」


「やっぱり仇討ちの旅を続けるのね」八重島梓は心配と残念さの混じった声を玲に掛ける。


「どうもモケーレ・ムベンベは違う様でしたし、やはりそれが今の私の生きる意味ですから」


「プロトマルスは修理中だろう」


「なので早く直すよう突っついてきます。では」


達人は自分の言葉に玲の目が鬼火の様に光ったのを見た気がした。


あの目は三島信彦も鈴木清司も毛利尊もそしてかつての自分も持っていた物だ。


(サンダーバードやガッシングラムの力を借りる事で改めて分かった事がある。この先もし人間と彼らのとの間の調和が崩れた時、もし人間側に非があったら俺は人間と敵対する自信がない。この鎧を着てここで暮らして人間らしさを知った俺にはあの目はもう無い。一足飛びで自身の信念の為だけに戦えていたあの頃の俺には戻れない)


その時が来たらどうするのだ?と自問しても答えは見つからないままだった。


理不尽の為に戦うという信念は些かも揺るがないが、どちらも理不尽だった時、もしくはそうでない時がある事が現在の人間対UMAの生存競争においては何の意味もなさないという事実が彼の新たな悩みだった。


彼の信頼する存在は人間側にもUMA側にもいるのだ。


妥協点はないのか


お辞儀をして去って行く鈴宮玲の姿が見えなくなるまで彼はずっとその事を考えていたが結論は出ない。


「礼儀正しいのか図々しいのか判らない人だったな」


彼女が去ってから八重島紗良は鈴宮玲についてそんな感想を漏らした


「あのくらいでないと一人で仇討ちなんてできないだろう。それで達人お前にはすまない話なんだが」


「八重島さん、何かあるのか?」


朝から考え事で何か上の空だった事に気がついていた達人は修一郎に尋ねる。


「ああ、例のパンタレイの左腕なんだが文明存続委員会に渡すよう決まったんだ。せっかく取り戻してくれたのにな」


「連中が圧力を掛けたんですか」


「それもある。だがそれ以上に大学の上層部としては物騒ないわくつきの代物をさっさと厄介払いしたいらしい。利害の一致という奴だ」


「このタイミングで表に出てきて、それに大学が応じるというのは何か変ですね」


文明存続委員会も社会の裏に潜んでいるという点ではE₃とそう大差はない。


違いはE₃が明確に人類への敵対心を隠していないという点でこの部分で文明存続委員会はまだ好意的に見える。


(最もトップがあの思想では碌なことを考えていないようだが)


「これだけUMAや魔法の鎧(ソーサリィメイル)の被害が広がっているんだもの。隠しきれないから公表するんじゃない?」と紗良


「するにしても一部の人間という事だろう。正式に公表しても一般の人が取れる対策はほぼないからな。混乱を助長するだけだ。それは連中が最も恐れていることだろう」


(そういえば連中は何故E₃の本部を知っていたんだ?そしてE₃はS計画のリークをなぜか文明存続委員会にも回していた。スパイがどうのというレベルではない気がするが)


紗良にそう説明しながら新たな疑問が達人の中に浮かんでいた。


「そうだ。林間学校、例年通りやるんだって。来月中ごろに」


「よく通ったわね。こういうイベントは全国で中止している所も多いのに」


「こんな時だからこそ生徒に少しでも思い出を作って欲しいって、学年主任の大川先生がね。ただいつもの場所じゃなくてd市のo山にするって。そっちのが近いし設備も整っているからって」


「フーン、良い先生じゃないか。急すぎる気もするが」


「結構ギリギリまでもめたらしいからね。それで梅雨時で足場が悪くなるのを見越して6月半ばにしたんだって。そうすれば中止の言い訳も立つだろうからって」


達人が物思いに沈んでいる間に八重島一家はこんな会話をしていた。


その林間学校が恐るべき事件の舞台になるとはこの時はまだ誰も知らなかった。




異世界某所


「イエティ、ナウエリトお待たせいたしました。ようやく準備が整いましたよ」


同志2体を呼び出したフライング・ヒューマノイドはかねてより進めていた計画を実行に移す算段が付いたことを伝える。


「待ちくたびれたぜ。だが本当にレジリエンスの奴は来るのか?」


「図らずもモケーレ・ムベンベが学校を襲撃した時奴が来たでしょう?」


「私達と敵対関係にある以上それは普通の事なんじゃないのか?」


イエティの疑問に


「次元移動でなく普通に歩いて現れた。ここが重要です。奴はあの学校の生徒あるいは教師の関係者である可能性が高い」


「で、決戦の場所はどこなんだ?」


ナウエリトはレジリエンスとの決着をつけたくてウズウズしている。


そんな様子を見てフライング・ヒューマノイドは


「今から1月後のd市o山です。そこで我々の総力を挙げてレジリエンスそしてプロトマルスを抹殺します。その為にもお二人とも準備を怠らぬようお願いしますよ」




それから1か月近く近くは何事もなく平和な日常が流れていった。


大方の予想に反して林間学校の日程中の天気予報は快晴であり、事実八重島紗良の通う市立藤栄高等学校の林間学校のプログラムは第一目の夕食準備に勤しんでいる現在、順調に進行していた。


学校からo山のバンガローまでの道中も、今準備しているバーベキューも特段の危険はなく、その兆候もない。


「ほら食べてばっかりじゃなくてあんたらも焼くとか食材持ってきなさいよ」


「ほーい」


竹山さゆみが男子生徒に注意すると彼らはそれぞれの役割を果たすため散っていく。


こういう時に下手に口答えして彼女を怒らせるのは得策でない事を彼らは知っていたからだ。


「全く食欲の権化なんだから、あいつらは」


「まあいいじゃん。何事も無くて」


肉をほおばりながら松川かおりが笑顔でさゆみに言う。


行事前は皆なんだかんだ言っていたがこういうイベントは始まってしまえばやはり楽しいものである。


「そうだね。この後もなければいいけど」


「そういう事言うとホントにそうなるからやめて」


2人の会話に紗良も入る。


「でも最後は上手くいくじゃない?レジリエンスだっけ?その人も無事だったんでしょ」


「うん」


「良かったよかった。紗良ちゃんホント死にそうな顔してたからね」


「あの時はその・・ごめん。混乱してて。色々励ましてくれてたのにさ」


「カオリンじゃないけど皆無事だったんだしこの話はおしまい。さーてパーッとやりますか」


「そうしようぜ」


さゆみの言葉にいつ間にか戻ってきていた男子生徒が陽気に返す。


「ではお言葉に甘えて」


この場で一人を除いて知らない人物の声と共に網の上で焼かれていた肉がその人物の皿に取られる。


「鈴宮さん!?何でここに?」


「八重島さん、お久しぶりという程の再会ではないですが。ここの隣に父が生前親しくしていたオーナーのバンガロ―がありまして。素泊まりだったのでどうしようかと思っていたんですよ」


「図々しすぎだろ、オイ。その知り合いから食料を貰うか買うかしなよ」


あからさまな、しかし当然の不快感をあらわにするかおり。


「そうしたいんですが、生憎と貸し切りの所を潜り込ませて貰ったのでこれ以上の無理を言えないんですよ。決してその相手が宝石をジャラジャラ付けた成金女だからという訳ではないですよ」


「それが原因じゃん」


苦笑する女子生徒に対して男子生徒らの反応は真逆だ。


「え、他校の子?結構かわいいじゃん」


「あの制服って有名校の奴だよな?刀持ってるけどあれって本物か?」


「そういや旅してるのに何で制服?」


「それは」


さゆみの疑問に答えようとした玲の後ろから顔を真っ青にした別の男子生徒が駆け込んでくる。


「おい、皆逃げろ。そこの炭置き場にか、か、怪物が」


その声が終わらぬ間にその男子生徒の後ろから数体の土で出来たのっぺらぼうの人形のようなものがゾンビじみた動きと唸り声をあげて迫ってきた。


一番先頭の人形はその男子学生に掴みかかるが彼の肩越しに振るわれた玲の刀に首を落とされる。


するとそいつは手足も同時にバラバラと崩れ落ちた。


「皆、バンガローに入りなさい。早く!君も」


学年主任の大川が玲を含めた生徒に避難を呼びかける。


「そういう訳にはいかないんだな」


「姿がずいぶん違いますが、あなたが連中の首領という事でよろしいですか?」


空から降りてきたその怪物は世界史の教科書で見た十字軍兵士さながらのチェーンメイルの鎧の上にサーコートと呼ばれる上着に砲弾型の兜を被っていた。


それは人間大のコウモリで閉じた翼の被膜が服の様に見えるのとギラギラ光る正六角形を繋げたいわゆるハニカム構造の眼と口から飛び出した二つの牙そして足先は奇妙にも自身の膝に向かって三日月の様に尖がっている。


「僕の名はコンガマト―。このアダマン共は上役からの借り物でね。見ての通りあまり役に立たないが数合わせにはいいからね。それに」ここで言葉を切って


「あまり気乗りしない任務だったけど相手が君みたいなかわいい子だとは」


「残念ですが私はそういうナンパ野郎は切り捨てる主義でして、ね!」玲は近くのバーベキューコンロで燃えていた炭を怪物に向けて蹴り入れる。


同時に制服のポケットに忍ばせた遠隔起動用のリモコンを操作して林の中に隠していたプロトマルスを起動させ、走る。


このコンガマト―はチスイコウモリの進化体で人間の血液を好物としている。(もっと)も彼の上役フライング・ヒューマノイドが彼をこの決戦の人員として呼んだのには別の理由がある。


玲を走る先にコウモリ由来の超音波探知で人型に変形している最中のプロトマルスの箱を見つけた彼はそれ目掛けて手に持った鞭を打ち付ける。


プロトマルスの鎧が変形完了と同時に鞭を受けて倒れる直前、鈴宮玲はプロトマルスに入りこむ。


そして倒れながらもエナジー・バルカンを放つ。


コンガマトーはひらりとそれを躱す。


その様子をバンガロ―内で見ていた紗良はスマホで家に電話し、達人に連絡する。




連絡を受けた達人はレジリエンスを装着し、o山へ次元移動した。


次元移動中に何かに急速に引き寄せられる形で現世に放り出された。


探知魔法プサクフで周囲を分析したレジリエンスは紗良たちのいるバンガロ―のある地点と数キロ離れた地点に着いた事を知る。


そして因縁の相手が近くにいる事も。


ナウエリトとイエティが目の前に現れる。


「ここが貴様らの墓場だ。レジリエンス」


「今日こそ決着をつけるぞ」


大剣を構えたイエティがレジリエンスに迫る。


彼女の放つ極低温に晒されることを嫌ったレジリエンスは飛び下がった。


イエティの後ろから数秒遅れてナウエリトの高周波ランサーがレジリエンスの真後ろに突き刺さる。


もし彼があと2歩後ろに下がっていれば確実に高周波の餌食になっていただろう。


だがナウエリトの攻撃はこれで終わりでは無い。


単眼からの熱線を自身のランサーへ向けて発射、振動する槍はビームを拡散してレジリエンスの逃げ場所を奪い、その何条かがレジリエンスの四肢を焼く。


「残念だったな!新しい手品はお前の専売特許じゃないんだ」


そこに動きが止まったレジリエンスにイエティの寒波が襲う。


(この温度差ではレジリエンスの装甲もいずれ破断してしまう。それに早く紗良達の所に向かわなければ。まだ姿を見せないフライング・ヒューマノイドとの戦いを考えればここは防御に優れたグランドウォリア―だ)


「レジリエンス、これで終わりだ!」


大剣を振り上げて迫るイエティ。


後方へ下がろうとするレジリエンスの後方にランサーが刺さりその動きを妨害する。


「くッ、ガッシングラム来てくれ」


レジリエンスはガッシングラムを呼び、そのままグランドウォリア―へと合身する。目の前に迫ったイエティの大剣をその身に受けるが超硬度の鎧は逆に大剣を真っ二つにへし折り、そのままグランドウォリア―は高周波アックスを振り上げる。


だが肉を斬る感触は無く、斬られたイエティの体から氷が飛び散る。


「何?体を氷に変換できるのか」


「その程度の一撃では私の体の薄皮一枚破れるだけだぞ」


イエティは空中に飛び散った氷を折れた大剣に纏わりつかせると瞬時に大剣は元の形に修復される。


(これでは負けもしないが勝つことも出来ない。いや長引けばこちらが負ける)


(サンダーバードと合身して超高速であいつらを救い出せ。こっちはその間くらいは何とかならあ)


(すまん)


その脳内での会話が終わるのを見計らったように


「終わりだ。いかに硬かろうが金属である以上は急激な温度変化には弱いだろ!」


「フライング・ヒューマノイドの受け売りだがな」


得意顔のナウエリトにツッコミを入れつつ2体は灼熱のビームと極寒のレーザー、対極の一撃をグランドウォリア―へ見舞う。


その二つは途中で螺旋状に絡み合い、その渦の中でレジリエンスはガッシングラムと分離し、サンダーバードを呼んでサンダーナイトへと合身する。


サンダーナイトの炎はイエティの寒波を払いつつナウエリトの熱線をも吸収して己の力へと変える。


文字通りの攻撃の嵐が去るとサンダーナイトはそのままバンガロ―目指して飛び上がる。


しかしサンダーナイトは暫く飛んだ所で凄まじい衝撃を受けて墜落する。


「あれは!?」


それを見てガッシングラムはサンダーナイトの元へと駆け寄る。


(魔法障壁が張られているぞ。それも広範囲に半球状にな)


(さっき探知した時はこんなものはなかった。こんな物を作れるのはフライング・ヒューマノイドしかいない)


サンダーバードの指摘に達人が答える。


「こうなれば連中を倒すしか道は無い」


立ち上がったサンダーナイトにナウエリトとイエティが近づいてくる。


「ここが貴様らの墓場だといったはずだ」


「そして合身対策もしてある。まさか本当に使う事になるとは思わなかったがな。悪く思うな」


「対策だと?」


2体の言葉に合わせるようにサンダーナイトとガッシングラムの背後に4匹の人間大の巨大なコウモリが舞い降りる。


「こいつは」


「やれ!コンガマト―」


コンガマト―の2体が同時に胸部から超音波を発する。



このコンガマト―はプロトマルスと戦っている個体と違い進化前のいわばビーストタイプである。


すると超音波を受けたサンダーナイトはレジリエンスとサンダーバードへ分離、もう一体の音波を受けたガッシングラムは体を硬直させた。


「グオッ、こいつら」


続いて残りの2体の発した超音波は分離したレジリエンスとサンダーバードそれぞれの動きを妨害する。


「これは妨害音波か?ぐああっ!」


「体が・・・動かん」


コンガマト―の能力とは各個体ごとに違う超音波を放つ事。そしてこの音波は時にある生物の体機能を狂わせる機能を持っているのだ。この能力に目を付けたフライング・ヒューマノイドは分離状態の3体と合身後の姿(厄介さではサンダーナイトが上回る為相手はこれを使うだろうと呼んでその対策を取った)を封じる罠を張る事に成功したのだった。



「誰か1体でも残られると面倒ですからね。あなた方に対応した音波を出す個体を探すのに苦労しましたよ。もう1体プロトマルス用の個体を向かわせています。そしてあなた方を葬るのは我々ではない。ガセカ、頼みましたよ」


そこにフライング・ヒューマノイドが現れる。その後ろにはレジリエンスが見たことのないUMAが控えていた。


バク型UMAガセカ


鼻先の尖ったバイザーが付いた歪んだ砲弾型の兜


エプロンかチョッキの様な形状の鎧


手足に篭手と脛当てをつけた猫背の怪物が右手に持っている槍に寄り掛かるようにして立っていた。


ガセカはバイザーを開く。そこから放出された黒い渦が3体を搦めとっていく。


「なっこれは?」


「しまった。奴に吸収されるぞ」


怪物はガッシングラム、サンダーバードそしてレジリエンスをその兜の中に吸い込んでしまった。


「皆さん、お疲れ様でした。これで後はプロトマルスだけですがこれも直に片付くでしょう。

コンガマト―部隊はそちらに向かって下さい。そして残った人間狩りをお願いします」



「あっけないな。欲を言えばこの手で奴らを倒したかったが」


フライング・ヒューマノイドとイエティのやり取りに加わろうと口を開きかけたナウエリトはそのガセカの様子がおかしい事に気づく。


ガセカは蹲り震えていた。


「どうしたガセカ?レジリエンスの鎧は悪食のお前でも消化に悪いのか?」


そしてその言葉が冗談でない事を彼らはすぐに身をもって知る事になる。


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