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魔甲闘士レジリエンス   作者: 紀之


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第27話 環境テロリストE₃最期の日(後編)




 レジリエンスが襲撃部隊と戦っている頃。


多数の警察車両と共笠井恵美の運転するバンがE₃本部へ向かっていた。


「随分素直に協力するのね」


「プロトマルスが動かなければ『奴』に対抗できない。そう言っていたのはあなた方では?」


「そうね。私達はあなたの復讐心を人質に取っているのだものね」


「それより警察と合同捜査とはずいぶんな出世ですね」


「公的機関には順次情報を公開しているからね」


笠井は助手席に座る鈴宮玲に複雑な感情を抱いている。


自分と同じUMAの被害者であるが彼女の個人的復讐を優先するその姿勢は納得がいかない。


「ついでに改良をしてくれる事を期待していたんですけどね。たまに動かなくなるので」


「それは・・そうね今度技術部に話しておくわ」


笠井は危うくこちらの思惑を話してしまいそうになり、お茶を濁した。


プロトマルスの欠陥が意図的な物であることは委員会内で周知の事実だった。


もちろん技術限界というのもあるがスポンサーの資金提供や現状認識をさせるための生贄という側面が強い。


欠陥機をどこの誰ともわからない人物に運用させる事は一種の賭けだったが現状この少女は期待以上の成果を出している。


(私ではこれだけの実力は出せない。けれど出来れば最前線で戦いたかった。こんな若い子を焚きつけるのではなく)


それが笠井恵美のこの戦いにおける素直な感情だった。


「新宿の復興はまだかかりそうですね」


「全国各地で、いや世界中で同様の事件が相次いでいるわ。鈴宮さんだけが特別ではないのよ」


「個人で世界を変えるほどの力がプロトマルスにはないでしょう。私を選んだのにも理由があるなら教えてほしいですね」


「私も志願した立場だから選考理由は聞かされていないわね」


「そうですか。ま、確かにあなたは私より世の中の『死んでも問題ないランキング』は下の方でしょうからね」


「それ上に行くほど世の中に不必要という訳?」


「もちろん」


「そのランキング上位の本拠地に間もなく着くけど気を付けてね」


「こんなところで死ぬつもりはありませんよ」


やがてE₃本部前に到着し、警官達が家宅捜索の令状で中に入っていく。


ややあって中から悲鳴と怒号が聞こえてきた。


玲はプロトマルスを起動させ装着するとビルに突入する。


ビル内の通路は真っ暗で少し進むと警官の死体が転がっていた。


その首には何かに締め上げられた跡がついていた。


やがて通路の奥にドアとその脇に2階に上がる階段が見えた。


「さて、どうしましょうか」


後続の警官の安全を考えればドアの先、つまり部屋の捜索を優先すべきだ。


階段の先にもいるだろうがこの部屋に潜んでいる奴はドアを開けねば仲間と挟撃できない事から考えても奇襲の意味は薄い。


(ならば考えられる攻撃方法は多くない。ここは乗ってみますか)


プロトマルスはそう考えドアを開ける。


同時にシューという音と共に何かが部屋の中とそれに遅れて階段の上からもう1つの影が飛び出してきた。


それはXYZ1の舌だった。


正面の舌が首と上側が右腕を拘束する。


プロトマルスがエナジー・バルカンを放つ。パッと火花が上がるのと断末魔の叫びが建物内に木霊する。

正面の怪物の頭を粉砕したのだ。


もう一人の敵は予期せぬ攻撃に倒れた仲間に動揺したのか拘束を緩める。


その隙を逃さず逆に腕を引きプロトマルスは階下に引きずりおろしたもう1体の怪物を刀で両断する。


そこに階上から新たな1体が踊りかかってくるのを逆にその体を刀で貫く。


再びビル内に静寂が戻る。


「手ごたえがありませんね」


プロトマルスは再度部屋を確認し、伏兵がいないのを確認すると1階の危険が去ったことを笠井に連絡すると2階へと上がっていった。



2階では角ごとに、3階では部屋毎にXYZ1の待ち伏せがありそれらはプロトマルスに容易に切り捨てられた。


4階は巨大な部屋が1つあるだけでそこにはパラボラアンテナ状の機械が中央にポツンとあるだけだった。


その先にある階段を認めプロトマルスは昇っていく。


今までと違い、それは長い螺旋階段だった。


玲は階段を1つ上る毎に空気が変わっていく感覚を覚える。


それは階段の突き当りのドアの前で最高潮に達し、息苦しい程空気が重かった。


プロトマルスが扉を押し開く。


そこはE₃代表の執務室だった。


「ようこそ。プロトマルス」


「私を知っているとは只者ではありませんね。その正体今日こそ見せてもらいますよ」


刀を振りかぶり、その人物の着ていたマントを裂く。


黒いマントを裂いて青い光が暗闇を照らす。


その神々しさにプロトマルスは息を飲む。


船の舳先部分に人面を彫刻したような兜


肩先や腰部は波をうねりを表した形状。


胸部は鱗状のパーツを繋ぎ合わせて丸みを帯びた形状をしていた。


錨の様な形状をした足。


しかしこの鎧で目を引くのは何よりもこの神秘性を損ねている左腕だった。


水滴の様な形をした装甲を持つ右腕と武骨で機能美のみを追求した鈍い銀色の左腕はアンバランスというよりも美という物に対する冒涜さえ感じられるものだった。


それがE₃代表テオドラの纏う水の四元将パンタレイの不完全な姿だった。


「なるほど。確かにその姿では人前には出られませんね」


「フフ。直ぐにあなたもそうなる」


「世迷言を」


プロトマルスが左腕を狙って刀を振る。


パンタレイの姿が青く発光し、鎧表面を流水の様に水のエレメンタル・エナジーが流れる。


パンタレイは体を回転させ液状化した右肩でその刃を受けた。


刀は本物の水を斬るように滑る。


「これは!?」

プロトマルスは正眼に刀を構えて距離を取る。


「今度はこちらから行きますよ」


(!?何かが鎧の中を伝ってくる?)


そう思った時には先ほどの扉の前で感じた息苦しさを感じていた。


玲は殆ど生物的な本能でプロトマルスから飛び出した。


プロトマルスの鎧と刀は中も外も水浸しになり、関節や鎧の隙間から水が溢れ出した。


鎧の一部と刀はどういう原理で内側に水が入ったのか、内部の水圧によりひしゃげたり真っ二つに折れていた。


しかし玲はパンタレイの全身が発光しておらず、左腕も急速に錆びついていることを見逃さなかった。


「ノーリスクという訳ではないようですね」


「口だけは達者と周りから言われてきませんでしたか?」


パンタレイは余裕を崩さない。


だがその呼吸は絶え絶えで声も先ほどの若い女の声から老婆といえるしわがれ声になっていた。


「もうそちらは抵抗すべき力を持たない。観念するのですね」


幽霊のように迫りながらパンタレイは玲に手を伸ばす。


その時


執務室の壁を破りサンダーナイトが現れた。


パンタレイは轟音と共に現れた新たな侵入者に向き直る。


「待っていましたよ。もう一人のいや組織最大の仇敵レジリエンス」


「その鎧。やはり水の四元将を手に入れていたのか」


「そう。そしてその力は最大にして完璧となる。私自身にはもう遅いが」


パンタレイの近くに突然青色の篭手が出現し、音を立てて転がった。


果たしてそれはパンタレイの左腕だった。


彼女は錆びついた銀の腕と青い腕を交換する。


「新たな力を得たようだが、真の力を取り戻した四元将にそんなものは通用しないと教えてあげよう」


(達人、相性の面では分が悪い。ガッシングラムと交代しよう)


(確かにな。だが最後の瞬間まで手の内を全て見せたくない。そんな気がしてならない。高速移動と雷ならば奴にも効くはずだ)


サンダーバードと達人がそう精神内で作戦方針を立てる


サンダーナイトが剣を構えると高速でパンタレイへ突進する。


しかし


「う・・む?」


「どうした噂の音速とやらは?まるでカタツムリの動きだぞ」


サンダーナイトは剣を突き付けたままパンタレイの真正面で止まっていた。


「くっ」


距離を取り、今度は背後から突撃するが結果は同じだった。


「ご自慢の融合合身とやらも見掛け倒しか」


(なぜ合身の事を知っているんだ?)


苦悶に喘ぎながらもパンタレイは右手でサンダーナイトの剣に触れる。


すると黄金色に輝いていた刀身がみるみる赤銅色になりボロボロに錆びついた。


「何だと!?サンダーバード大丈夫か」


(我は大丈夫だ。それより奴の時間操作能力を侮りすぎていた。死に体の身でまさかここまでやるとは)


(以前言っていたな。水の魔法はこっちの時間を操作して動きを止めたり逆に進めるとか。戦闘に応用できる範囲が広すぎる)


(だが奴の様子もおかしい)


懸念していた追撃は来ず、パンタレイは体をくの字に曲げて苦しんでいた。


(ああ。ガッシングラム来てくれ)


パンタレイの状態を好機と見たレジリエンスはサンダーバードと分離すると今度はガッシングラムと融合し、グランドウォリア―へと姿を変えると高周波アックスをパンタレイに振り下ろす。


分子結合を断ち切るならばどんな防御能力も無力化できる。そう踏んでの事だった。


だが斧がパンタレイの装甲に当たるがまるで流れる水を切るように手ごたえがない。


パンタレイが鎧そのものを液状化させているのだ。


だが魔法を使えば使うほどパンタレイの装着者にかかる負担は大きくなっているようでもはや立っているのもやっとという有様だった。


「投降しろ。その状態で戦うのは無理だ」


「そんな事をするくらいなら最初から蜂起などしない。貴様の鎧も朽ちさせてやるわ」


老人の声でなおも抵抗の意思を示すパンタレイ。


「・・・かわいそうだが左腕は回収させてもらう」


パンタレイの手がグランドウォリア―に伸びるがグランドウォリア―は斧の柄にある房(ライオンの尻尾だったものだ)を伸ばしてパンタレイの右腕の関節に巻き付かせる。


力では圧倒的にパンタレイを上回る。


腕を強引に引き下げてグランドウォリア―は既に力を失いつつあって液状化できていない部分、すなわち左腕の関節部を狙う。


左腕が切り飛ばされ、玲の目の前に落ちる。


左腕に供給されていたエナジーが逆流し、その苦痛にパンタレイは呻き蹲る。


「次は額の風のクリスタルを狙う。それを破壊されたら外界の情報がシャットダウンされる。いかに鎧の力が強力でも見えなければ対応できまい」


「情けをかけるつもりか?」


「もはや虫の息だからな。老人にも死に場所を選ぶ権利くらいあるだろう」


達人は水の鎧がこの老人の体の時間を止める、一種の生命維持装置ではないかと考えていた。


鎧がこれ以上破損したり、体から外したら装着者は死ぬ。そう直感していた。


「ハハハ。我が命、我が魂をおお主に捧げますぞ。今あなた様の許へ」


「お前を操っている者がいるのか?それは誰だ」


その言葉は狂ったように笑うパンタレイには届いていない。


今彼女の目と心はありしの日の光景の中にあった。


彼女はサンダーナイトが作った壁の穴の前で大きく体をのけ反らせるとそこから大きく落下していった。


落下先には次元の穴が開いていた。


そこにグランドウォリア―が飛び込もうとした寸前穴は塞がった。


「しまった!奴の状態から次元移動は出来ない。誰が奴の為に穴を開けたんだ?」





「テオドラ、間に合わなかったか」


「我が主人よ。お懐かしゅうございます。左腕を今更送られても詮無い事。しかし今最期のご奉公を」


パンタレイの移動先はティブロンの秘密の部屋だった。


そこでテオドラは研究室からパンタレイの左腕を取り戻したかつての主人ティブロンの元へ体を引きずるように歩く。

ここは文明存続委員会のメンバーでも知る者が限られている場所だった。


パンタレイは部屋の奥に安置されている火の四元将アイディオンの許へ行くとその手を触れる。


「おお、虫の息だがまだ生きている。アイディオン、我がパンタレイの双子の兄よ。我が命を吸いその不滅の炎を再び燃やすが良い」


破損し錆だらけだったアイディオンの鎧が見る間に修復されていく。


太陽の如く輝く炎の鎧と対照に水の鎧は暗く濁った深淵を見せていた。


「テオドラよ。良くやってくれた。お前が私にもっと早く賛同してくれたなら」


バッタリと仰向けに倒れたテオドラを抱き起しながらティブロンはパンタレイの兜を外しながらそう問いかける。


「途方もない計画に賛同するのができなかっただけの事。現実的な方法もできませんでしたが」


「長年アイディオンを通してお前が送ってくれた生命エナジーで私が生き永らえてきたのは故郷アトランティスを現世に取り戻す為だ。どんな手を使ってもな。その様を天で見ていろ、テオドラ」


アイディオンとパンタレイの鎧は現実の宝石であるルビーとサファイヤ同様、色は違えど装甲に使われた金属は元が同じ鉱物でありそれが温度の違いによって誕生した物だった。


そして時間停止の魔法をかける事で装着者の若さを保つと同時に彼女の主人にもアイディオンの鎧を通してその力を分け与えていたのだった。


老婆の顔はその決意に満足そうな表情を浮かべて青い粒子となって消える。


後にはパンタレイの左腕のない鎧一式が残された。


こうして容疑者全員死亡という形で環境テロリスト集団E₃は壊滅した。


しかし彼らが最終的に目指していたものが何だったのかは結局解明されないまま事件は終わったのだった。


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