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魔甲闘士レジリエンス   作者: 紀之


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第15話 欠陥兵器




 「一体どうなっているんだ?装着者はどこに消えたんだ」


「『分解吸収』されてしまったのですよ。この兵器の仕様上の欠陥のために」


達人の問いにエリクシリオが答える。


「そういえば初めてレジリエンスを装着した時何かに引っ張られる感触で気分が悪くなったがそれが続くとこうなってしまう?」


彼の言葉にうなずきながらエリクシリオは続ける。


「意思ある鎧は内部の魔力が欠乏すると装着者の体を魔力に分解して動こうとします。この機能は何度試しても修正できませんでしたが一種の安全装置としてそのまま黙認されました」


「バカほど早死にするからですか」達人はパノプリアを見る。


「実力ある魔法使いならば自身の魔力量を把握し適切な呪文や対処を取れて然るべきだという訳です」



「分らないかね。つまりダイエットと同じ事だよ、笠井君。君もやったことがあるだろう?」


「セクハラですよ」


同じ説明を文明存続委員会本部でティブロンから聞いていた笠井はムッとした口調で返した。


彼女は当該地域で電波障害が消えた時すぐにドローンを飛ばして現地調査に向かわせ、今も苛立つ指でドローンを操作していた。


ティブロンは笠井の抗議に構わず説明を続ける。


「ダイエットと同じで外部からエネルギーを補給できない以上人体は体細胞を分解してエネルギーを得ようとする。過度なダイエットを続ければ体を維持できなくなりやがて死に至るという訳だ。これと同じで装着中は鎧が自身を一個の生命体だと認識しているためそれを動かす筋肉や内臓を司る装着者自身を分解してエナジーを得るという事だ。」


「だからマルスを作ったという訳ですか。そんな危険を排した完全に制御できる魔法の鎧(ソーサリィメイル)を」


「そう言う事だ。確かEスリーはもう一つ鎧を所持しているとか」


「その可能性が高い、という推測ですが」


「だが連中の車が不可解な消失をしているのは確認されている。そんな芸当ができるのは時間操作の水の魔法、つまり水の鎧パンタレイとみて間違いない」


ティブロンはそう断定した。




新宿の混乱を抜け出し達人はエリクシリオを連れて八重島家に戻ってきた。



「私も行っていいのでしょうか?」


「なんとか説得してみます。この世界で一番信用できるのはあの家族以外いないですからね」


八重島家に来る前芹沢達人とエリクシリオはそんな会話を交わしていた。


しかし家が近づくにつれ達人の気は重くなっていく。


ついには門の前で完全に立ち尽くすことになった。


気まずい。


この事に一番達人自身が驚いていた。


これまで連絡もせずに不在にしていた事など気にも留めていなかったものが八重島家の人達にどう謝るか考えているのだ。


しかし自分達を休ませてくれるのはここしかない以上覚悟を決めてインターホンを鳴らす。


要件を伝える前にいきなりドアが開くと「やっぱり。帰ってきたよ、お父さんお母さん」


八重島紗良の声に両親も玄関に出てくる。


「よかった。無事だったのね。心配していたのよ」


「新宿で戦ったんだろう?ご苦労だったな」


「彼女が助けてくれなければ死んでいました。彼女も一晩泊めてくれませんか」


「込み入った話があるようだな。まあとにかく中に入ろうか」


彼の後ろにいる少女を見て修一郎は二人を家に上げる。




軽い食事の後達人は八重島家のリビングで今度の事件の顛末を伝える。


「それでその犯人が今この庭にいる訳か」修一郎が庭に置かれたパノプリアの入った金属の箱を見る。


「今は私の魔法で『眠っている』状態です。鎧自体も力を使い果たしているので暫く動けないと思います。ただ彼らはもう一つ、水の四元将パンタレイをなぜか左腕が欠けた状態で持っています。そちらの方が心配です」


エリクシリオの言葉はその音と口の動きがまるで合っていないのを見て


「まるで映画の吹き替えを見てるみたい。それも魔法何ですか」


「魔法は使っていないのですがなぜかこちらでも意思が通じるみたいですね」


梓の疑問にエリクシリオが答える。彼女もそれが分っていないのだった。


「左腕ってまさか」


「八重島さんこの間発見したアレがそうなんじゃないのか。疑わしいならそれだけで奴らは動いてくる」


「まさか持っていらっしゃるのですか。次はここを狙ってくるかも」


「いや大学の研究室にあるんだがまだそうと決まったわけじゃない。それにこれだけの事をやらかしたんだ。流石に連中も大人しくしているだろう。もしかしたら内ゲバもありうるかもな」


「何でそんな事が分かるの?」


「TVの特集で知ったんだがあの組織は複数の小さな過激組織の寄り合い所帯らしいからな。そういう所は仲間内で足の引っ張り合い、つまり権力闘争が常という物さ」娘の質問に修一郎が答える。


「だが奴らが一枚岩でないなら次に何をしてくるかわからないというのが困るな」


「連中にしか通用しない理屈で動いてくるのは間違いないがそれを今考えても仕方ないだろう」


「だとすれば残りの鎧を見つけることが重要だな。炎と風、もし連中が入手した場合どちらが脅威ですか」


達人の問いに


「破壊力という意味なら炎ですが・・・ただ父の残した資料が断片的で定かではないのですが炎と水は双子だという文言から炎の鎧は失われている可能性が高いですね。」


「双子?」エリクシリオ以外の全員が声を揃える。


「何でも互いを感知できるのだとか。火と水は反属性のはずなので普通そういうことはあり得ないのですがもしそうだとするとEスリーですか、彼らが入手していてもおかしくはないでしょう」


「そして使わない理由もない」


「そうですね。私としては全く行方が分かっていない風の鎧テべリスを探す方が良いと思います」


達人の言葉にエリクシリオが頷く。


「待て。君たちはそんな名前を武器というか防具に付けるのか?」


「ええ。名付けたのは父を含む当時の学者達ですが」


(パノプリア)怠け者(テベリス)だとかおよそ愛着が感じられないな」修一郎が呻く。


「父は今レジリエンスと呼ばれる鎧を最強の鎧とすることに病的な執念を燃やしていたようなのです。父にしてみれば四元将もそのためのたたき台に過ぎなかったのでしょう」


「お父様は今何をしていらっしゃるの?」


「分りません。どこで何をしているのか。私個人はその手掛かりがあの鎧ではないかと思い探しているのです。もちろん国の為にも。父が優秀な技師であり学者なのは皆知っていますから」梓の問いにエリクシリオは気丈に答える。


「立ち入ったことを聞いて悪かったね。今日は早めに休むといい。部屋は達人お前の部屋をエリクシリオさんに貸してやれ」


「ああ、分かっている」




その夜


半ば達人を追い出す形で部屋を得たエリクシリオはふぅ、とため息をつく。


なれない環境で疲労よりも驚きというか面食らう事の方が多かった。


この国は豊かだ。


このフトンという寝具の柔らかさもそうだし食事も彩り豊かで種類も豊富だ。


それは失踪前の父やイオアンネス老人から聞かされていた転移前のアトランティス帝国の生活に近いのではないか?


(そうだとすればこの国もいずれアトランティスと同じ運命を遠からず辿るかもしれない)


その第一歩が四元将パノプリアの目覚めと暴走なら、未曽有の危機がこれからこちらの世界を襲う事になる。


(少なくともこの家の人達は、いやこの世界の多くの人々は善良な私達と同じ人間なはず。もしも・・・・)


頭の中に1つの恐るべき考えがよぎり、その考えを打ち消すように頭を振る。


その時コンコンと扉を叩く音がした。


彼らアトランティス人にノックの習慣はない。だからエリクシリオはそれを訝しみながらも「どうぞ」と部屋の外の人間に声を掛ける。


入って来たのは紗良だった。


「ごめんなさい。もしかしてもう寝てました?」


「いいえ。でもどうかしたのですか?」


「もしかしたら色々と困っているんじゃないかと思って。さっきのお風呂の時もそうだったし」


「確かにああいった物は向こうにはありませんでしたね。でも大丈夫。この部屋の物は大抵は見慣れている物ばかりですから」


エリクシリオは先刻のシャワーや蛇口のお湯と水の切り替えを全く分からなった事で一騒動を起こしたことを思い出す。


そこで紗良から色々と教わりながら内心帰ったらこれらの技術をパリノスらに研究させてみよう、と思っていた。


「大抵はってこの部屋に変わった物あります?」


「例えばこの時計は変わった形と装飾がありますがどういった物でしょうか?」


エリクシリオはデジタル時計をクルクル回転させながら訪ねる。


「ああそれ。デジタル時計の目覚まし用のアラームの設定に使うボタンですよ」


「目覚まし用の機械があるのですね」


「向こうの世界って、ああそうかやっぱりメイドさんなんかが起こしに来てくれるんですか?」


「そういう所もあるみたいですが私はそういう目的には使っていませんね。自然と目が覚めるので」


メイドがいる事をさも当然の様に言ってのけるエリクシリオに紗良はようやくこの女性が別の世界の人間であると自覚する。


「あの・・・向こうの世界の事色々と教えてくれませんか?もしよければ、ですけど」


「ええ、良いですよ。何から話しましょうか」


2階の部屋は結局深夜まで明かりと話し声が絶えなかった。




翌日



「では大変お世話になりました。皆様に神の祝福があらんことを。最後に達人」


エリクシリオは達人に向かって何か言おうとして一瞬言い淀む。


「魔甲闘士の成長は精神的成長と直結しています。つまり精神の強さがそのまま魔法の力を増大させるのです。今の

あなたなら魔法の鎧レジリエンスの秘められた力を開放することがきっとできます。私にはそれが何を意味するのか

分からないのはその資格がないからでしょうね」


「そんなことは」ないと達人には言えなかった。自分の存在が彼女の運命を狂わせたかもしれない。


「風の鎧を探します。そして」そう思った達人はそれ以上続けられなかった。


ただ自分が全く別の事を言いたいのにそれが言えない、となぜか感じていた。


「手がかりになるかわかりませんが風の鎧を探すなら気象に気を付けて。風の魔法は情報を分析する、見抜くことに特化していますが嵐や雷雲を呼ぶ事もできるのです」エリクシリオがそう助言する。


「妙な気象現象があったらそれがテベリスの可能性があるわけですね」


「ええ。気を付けて下さい。では」


エリクシリオそう言って形成した八重島家の庭へ次元移動の穴を作り出す。


だがそれは一瞬の内にかき消えてしまう。


突然の事態に全員目を丸くしているが一番驚いているのは当のエリクシリオだった。


こんな事は今までにない事だった。


「あれ、エリクシリオさん。これってもしかして」


「はい。帰れなくなりました。原因は分かりませんが」

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