表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/42

40

カズヤはマスターには本当の事を話す事にした。

それがたとえ信じてもらえなくても、マスターには話さずにはいられなかった。


「実は…」


カズヤは最初にこの世界に来た経緯、マスターとの出会い、店で働いた日々、そして現在の状況をザックリと説明した。

しかし、マスターの未来に関する事をカズヤは語る事は無かった。


(この過去の世界でも同じ生涯を辿るとは限らないからな…いや、限らないよね?)


カズヤの話を聞きマスターは意外にも、疑う事無く親身になって話を聞いてくれた。


「そう…大変だったのね…でも諦めないで! また同じ事をしたら未来に帰れるかもしれないじゃない!」


再度同じ事をすると言う発想が無かったカズヤにとって、まさに寝耳に水だった。


(そ、そうか、確かに…あの公園のベンチに座った時に現象が発生したと分かっているのだから、また同じ事をすればいいのか…気が動転して全く気づかなかったぜ…)


帰る方法の手掛かりを得たカズヤは居ても立ってもいられず、マスターに何度もお礼を言うと持っていたハンカチをポケットに入れて急いで公園へと向かった。


「あっ、わ、私のハンカチ…」


カズヤは目的のベンチを見つけ着席し、スマホで現在の日時を確認後、軽く深呼吸。


「よし、行くぞ! タイムテレポーテーション!」


カズヤはゆっくりと目を閉じ、数秒後に目を開けた。


「さて、これで移動したはずなんだが…」


カズヤは徐にスマホを取り出し現在の時刻を確認するが、先程確認した時刻から数秒しか経過していなかった。


「さっきと時間も景色も変わってねーっ!」


(どう言う事だ…このベンチに座って数秒目を閉じるだけで、お手軽に別世界に移動できるマジックベンチじゃなかったのか…?)


カズヤは暫し考えると、ある事に気づいた。


(そ、そうだ…俺はコーヒーを飲んでいた…成程、これがキーアイテムだったか!)


カズヤは早速自動販売機へ向かい、お金を入れてコーヒーのボタンを押そうとしたその瞬間、指が止まった。


「なっ、何いいいぃぃぃぃっ!!! コーヒーが売り切れだとーっ!! くっ…ま、まあ、ドリンクなら何でもいいかもしれんし…」


仕方なくカズヤは別のドリンクを購入し、再度ベンチへと向かった。

そして先程と同様にベンチに座り、今度はドリンクを飲んでから目を閉じた。

数秒後、目を開けてスマホを確認するが日時に変化は無かった。


「チキショーッ!!」


やはりコーヒーでなければダメだと判断したカズヤはコンビニへ向かおうとしたが、疲れたのでネカフェに向かった。


次の日。


コンビニに向かう途中、前から歩いて来た男に声を掛けられる。


「あら? あなた…昨夜の?」


(マスター!? そ、そう言えば…俺がこの世界に来た次の日にマスターと再会してデートクラブで働く事になったんだった…)


「また会ったわね、これからお仕事かしら?」


「い、いえ、ちょっと…」


カズヤはどう説明していいのか分からず言葉が濁る。


「昨日は急に飛び出して心配したのよ?何か困ってるならお店で話を聞くけど、どうかしら?」


(やっぱり過去と全く同じ流れだ…元の世界に戻れる保証も無いし、ならばいっそこのまま…いやいや弱気になるな! 俺はまだ可能性を試してはいない!)


カズヤはマスターの誘いを断ると急いでコンビニでコーヒーを買い、公園へと向かった。

そして例によってベンチに座りコーヒーを飲んでから目を閉じ、数秒後に目を開けても景色と日時に変化は無かった。


「何故だーっ!」


(まだ条件が足らんって言うのか…せっかく朝から来たっていうのに…はっ! そう言う事か…)


カズヤは過去に二度移動したのは仕事帰りの夜だった事を思い出した。

夜にならなければ条件を満たさないと思ったカズヤは、夜まで時間を潰す為、重い足取りで再びネカフェへと向かったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ