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デートタイムの終了時間を迎えたのでカズヤとルーシーはカフェを後にした。


(カフェに向かう時はいいように(もてあそ)ばれたから帰りこそは俺のターンにしなければ…)


カズヤはルーシーをドキドキさせる画策をしながら、ふとルーシーをみると、ルーシーは両手を後ろに組んで歩いていた。


(くっ、これはホールドハンズ対策、先手を打たれたか…しかし彼女にはホールドハンズタイトリィさえ通用しない…ならば残された手はただ一つ、エンブレイスショルダーしかあるまい!)


ホールドハンズタイトリィとは恋人繋ぎ、そしてエンブレイスショルダーとは肩を抱く事。


どのみち手を繋ぐ事が出来ない以上、カズヤには肩を抱く以外の選択肢は無かった。


(彼女は完全に油断をしている、仕掛けるなら今が好機!)


カズヤが肩を抱こうとした瞬間、ルーシーは突然立ち止まった。


「オーッ!」


(くっ、俺がエンブレイスショルダーを仕掛けるのを察知されたか…)


「あのお店は何のお店ですカ! 留学中にはありませんでしたヨ!」


ルーシーは新しく出来た店に目を輝かせながら見ていた。


(いやまたかよっ! それ最初カフェに向かう途中に同じ事言ってたからね!)


その後もカズヤが肩を抱こうとする度に、ルーシーは自動販売機でドリンクを買ったり、店頭に並んでいる商品を見たりと落ち着きなく動き回り、偶然にもカズヤの思惑を回避していたのだった。


(ぐぬぬ…こうも容易く防がれるのか…アビリティーインバリッド恐るべし…)


そうこうしている内に店までの距離があと僅かになっていた。


(店までの距離的に次がラストチャンスだろう…彼女が歩き出した時に………ここだっ!)


立ち止まって何処かの店を見ていたルーシーが歩き出すと、カズヤはさり気なく密着し肩を抱いた。


(やっと成功したぜ…ふふっ、これで彼女もドキドキせざるを得んだろうて…)


「不意打ちですネ! 少しドキドキしマース!」


(いやそれ絶対ドキドキした奴のセリフじゃねーっ! 接触行為の耐性も兼ね備えているって事か…やはり強い)


結局カズヤはルーシーをドキドキさせる事は出来ず、店に到着してしまった。

ルーシーはまた来年来る旨をカズヤに伝えると足早に去っていった。

そしてカズヤは肩を落としながら店に入っていった。


「しーちゃんただいま」


「お疲れ様ですカズヤさん」


(ふむ…)


カズヤはしずくを見ると少し考えてから、(おもむろ)にしずくに近づくと、しずくの肩を抱いた。


「なっ、なななななにをしてるんですかっ!!」


(うんうん、この反応を求めていたんだ! やはり彼女が特別なだけだよな…)


ルーシーがあまりにも接触行為に対してリアクションが薄かったので、本来この世界の女子が取るであろうリアクションを再確認する意味を込めて、しずくで反応を試してみたのだった。


「か、カズヤさん…いつまでそうしてるつもりですか…」


しずくは両眼を閉じて怒りをこらえている表情をしながら拳を握っている。


「い、いや、これは…何て言うか…」


カズヤが返答に困り口籠(くちごも)っていると、奥からかえで(しずくの母)が姿を現した。


「しずくちゃん素直じゃないんだから…そんなに嫌なら私が代わってもらおうかしら?」


かえでは笑顔で冗談めかして言ってはいるが、その実カズヤに肩を抱いてもらいたいと思う気持ちがあった。

突然現れた母の言葉にしずくは気が動転し、口は動いているが言葉になってはいなかった。


「そ、それじゃあ…つ、次はかえでさんを…」


カズヤは冗談で言ったつもりだったが、黒いオーラ的な何かを発しているかのような感じのしずくはカズヤの腕を力いっぱい握った。


「イ、イタタタ。じょ、冗談だからっ!」


(ふぅ、やれやれ…迂闊(うかつ)に冗談も言えんな…)


その日、仕事を終えたカズヤは真っ直ぐ家に帰らず何となく公園に立ち寄ったのだった。


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