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ありさとのデートが終わってから数日後の朝、カズヤは何時も通りに店に到着。
そして何時も通りにカズヤは高いテンションでしずくに挨拶をする。
しかし、しずくからは元気が無い挨拶が返ってきた。
その瞬間、何者かがカズヤの前に現れた。
「お前かっ! カズヤとか言う糞雑魚野郎はっ!」
突然現れた女性は、前回デートを行ったありさを彷彿とさせるヤンキー的な女性でカズヤに対し激怒していた。
「デジャブかっ!」
カズヤは数日前に全く同じシチュエーションを体験したいた為、思わず口に出してしまった。
「ああーん?」
物理攻撃による接触行為を恐れたカズヤは慌てて話題を切り替えた。
「え、えーっと…デ、デートの予約をしたお客様と言う事で、よ、宜しいですか?」
彼女の名前はりな。先日デートを行ったありさの子分的存在の女性。
彼女曰く、リーダーだったありさが突然、真面目な格好をしてグループを抜けると言い出したので理由を尋ねた所、どうやらここでデートしたのが原因、との事。
そこで彼女は真実を確かめるべく、デートをする為にやってきたらしい。
「お前如き糞雑魚が本当に姐さんを誑かしたのかを確かめてやる!」
カズヤ自身はありさを誑かしたつもりはなかったが、実際にカズヤが言った事でありさが変わった事は事実。
もし自分が原因だとどうなるのかを恐る恐る尋ねてみた。
「はぁ?その時は二度とここで働けないようボッコボコにしてやんよ!」
(ひえええっ!)
「オラ、さっさと行くぞ!」
(うぅ…何故こうなった…俺はただ彼女に良かれと思って言っただけなのに…)
二人は店を出てデート会場のカフェ的な店へと向かった。
そして…
一時間後。
カズヤとりなはデートが終了し店に戻ってきた。
「カズヤさん、無事で何よりです…」
しずくはカズヤの身を案じていたが、無事と分かりホッとする。
「カ、カズヤ…さん…ま、また来ても…い、良いですか…?」
例によってカズヤの接触行為でメロメロになったりなの瞳は既にハートマークになっている。
「勿論さっ!」
カズヤの返事を聞くと笑顔になったりなは足早に店を出たのだった。
(デジャブ感がハンパねーなっ! おい!)
りなの変貌を目の当たりにしたしずくは、二度も怖いお姉さんを虜にしたカズヤに尊敬の眼差しを向けながらカズヤを褒めちぎった。
「くっくっくっ…俺ならば当然の結果なのさっ!」
前回しずくと話す際は気を付けるよう心掛ける事にしたカズヤだったが、その事はすっかり忘れ再度同じ過ちを繰り返した。
「はあ?またそれですか?学習しないのですか?」
例によって冷たい視線と辛辣な言葉をしずくは放った。
(なっ、何いいいぃぃぃぃっ!!! またやってしまっただとーっ!!)
カズヤは申し訳なさそうに小さな声でしずくに謝った。
次の日。
カズヤは何時もの様に元気よく店にやって来た。
しずくに挨拶を交わし今日のスケジュールを確認。
(ふむ…一人目は120分コースで外国人女性か…)
外国人女性が他国のデートクラブを利用する事は珍しい事ではない。
初めて外国人女性を相手にした時のカズヤは緊張していた上に血迷っていたが、何度か相手をした事がある今では特に緊張する事はなくなった。
しかし、カズヤの場合、緊張しなくても暴走する可能性があるので油断はできない。
「カズヤさん、お客様来ましたよ」
外国人女性がカズヤの前に現れた。
「お久しぶりデス!」
「ああ、う、うん…ひ、久しぶりだね!」
彼女の名はルーシー。数年前に留学でこの国に滞在していたが留学が終わり帰国。
留学中に一度だけカズヤとデートをした事があるが数年前の事なのでカズヤは忘れている。
今回は旅行でこの国に訪れたのだが、カズヤの事を思い出し予約を入れていたのだった。