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しのぶが男と判明したが、純粋にデートを楽しみに来たと判断したカズヤは全力で相手をする事にしたのだった。


(だからしーちゃんは店内で手を繋いでも何も言わなかったのか…ま、まあ、男と分かって多少テンションは下がったが、男であろうとお客様。いつもの様にドキドキを提供するだけだぜ!)


しのぶが男と分かった事で会話の内容も男子サイドにシフトしようと思ったカズヤだったが…

男子好き男子の場合、果たしてどちらサイドの話が良いのか悩むカズヤ。

暫しの間悩んだ挙句、結局、性別には関係のない日常的な会話をする事を余儀なくされたのだった。


(ふぅ、やれやれ…これは思った以上に強敵だぜ…まあ、デート兵法を駆使する女子よりは遥かにマシではあるが…)


そんなこんなで、お互い共通なゲーム等の話題で意外と会話も盛り上がりをみせた。

会話は相手を飽きさせず楽しい時間を提供する手段ではあるが、カズヤには別の目的もあった。

そう、例によって会話で隙を作り、接触行為によって相手をドキドキさせる事。


(彼女、もとい彼は今、ゲームの話題により、完全に油断をしている。ここで突然ホールドハンズを仕掛ければドキドキする事間違いないぜ…)


カズヤは会話をしながらしのぶの手を握る為、手を伸ばした。すると、あっさりと手を握る事に成功したのだった。


(やれやれ…女子と違って男子は無防備な事この上無いぜ…まあしかし、これで彼もドキドキせざるを得んだろう…)


カズヤは少し微笑みながら、心の中でしのぶがドキドキする事を確信していた。

そして、しのぶはカズヤの思惑通りドキドキしている。

しかし、しのぶはドキドキする感情をカズヤに悟られないようにグッと堪え、とんでもない言葉を言い放った。


「カ、カズヤさんて…そういう趣味がある人だったのですね…」


(なっ、何いいいぃぃぃぃっ!!! 俺がゲイだと思われているだとーっ!! 最初に手を繋ぎたいって言ったのはそっちだろーっ!)


カズヤの予想とは裏腹に、しのぶはカズヤが同性愛者だと疑うような言葉を発した。

そうなるとカズヤは接触行為をする事が出来ず、引き攣った表情をしながら先程盛り上がった会話に話を戻したのだった。


(くっ、まさかただの女装男子だったとは…いや、よくよく考えたら男子と話がしたいだけならわざわざデートクラブを利用せずに友達と話をしたら良いだけなのでは…? はっ! ぼっち…だと…)


しのぶには友達がいないと勝手に思い込んだカズヤは学校や友達の話題を避け、趣味の話に専念する事にした。


二人は暫く趣味の話で盛り上がっていると、しのぶは突然、話題を変えてきた。


「カズヤさんはこんな風に女性とも楽しく会話する事が出来るのですか?」


この世界の男子はデートクラブの店員ですら、まともに女子と会話をする事が出来ない。

そんな男子しか見ていないしのぶの疑問は当然だった。


「えっ!? と、突然だね。ま、まあ…数年この仕事してるし、女子と話すのは苦手じゃないから普通に会話出来ると思うけど…突然どうしたの?」


「そ、そうなのですね…」


しのぶは少し考えてから軽く深呼吸をしてから、ある決意を胸に再度口を開いた。


「カズヤさん、ごめんなさい…実は私…お、女の子です…」


(なっ、何いいいぃぃぃぃっ!!! 男の娘と思わせつつ、実はただの女装男子と誤認させ、更には普通に女子だっただとーっ!! 何て恐ろしい策をぶっこんでくるんだ…俺は彼女の手のひらで激しくダンスをさせられていたって事か…)


しのぶは過去何度かデートクラブを利用したが、当然まともな会話をする事ができなかった。

そういう経緯があって男子同士なら普通に会話ができると思い男子と偽ったのだった。


カズヤはしのぶの言動に戸惑いながらも、女子だと聞いて喜ばずにはいられなかった。


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