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デートタイムが終了しカフェ的な店を出ると、ディアナは勇気を振り絞って恋人繋ぎで手を握ってきたのだった。
カズヤは意表を突かれドキドキするも、店に到着するまでの間に何とかディアナをドキドキさせるため思案していた。
しかし、結局何も仕掛ける事が出来ないままカズヤは店に到着してしまった。
(何も出来なかった…だと…しかも店に着いたのに、ハンドをリリースする事が出来ない…)
ディアナは少しでも長く今の時間を堪能する為、店に着いても手を離す事なく、更にガッチリと手を握っていた。
「し、しーちゃん、た、ただいま…」
カズヤは現在ディアナと密着しているこの状況を気にして多少口籠っている。
「お帰りなさいカズヤさ…」
カズヤを見たしずくは言葉が止まった。
それはディアナがカズヤと腕を組み、頭を肩にもたれて密着している姿を目の当たりにしたから。
「なっ! なななな何をしているのですかっ!」
「えっ、いや、ただいま…」
「ただいまじゃないですっ! もうデートは終わったのですからさっさと離れて下さいっ!」
しずくは少し口を膨らませ、怒ったような表情でカズヤを見つめている。
「小煩い小娘ですね」
そんなしずくを横目にディアナは勝ち誇った様な表情を浮かべていた。
「ディアナ、そんな事を言っちゃダメだよ」
しずくの顔色を窺い軽くディアナを注意するカズヤ。
「も、申し訳ありませんカズヤ様…」
カズヤに注意されたディアナは俯き落ち込んでしまう。
そんなディアナを見て徐に頭を撫でるとディアナの表情は明るくなった。
ディアナはすっかりとカズヤに従順となっていたのだった。
カズヤは「はっ」として恐る恐るしずくを見ると、ゴゴゴゴゴッと地響きがしそうな表情でカズヤを睨んでいた。
(しーちゃんの表情が怖すぎる…これは嫌な予感しかしない…)
数分後、ディアナは名残惜しそうな表情をしながら退店。
すると、カズヤの懸念が現実となり、しずくの小言が再開した。
「カ、カズヤさん! 店に着いてまで密着してるとか、そ、そう言う事は、ダメですっ!」
「えっ…いや、でも、ほら…昔の人も『お客様は神様です』的な事を言ってたし…」
「そんな事、誰も言ってませんよ! 仮に言ってたとしても絶対違う意味ですよそれ!」
「えっ!? 誰も言ってないのっ…!? どれどれ検索検索…」
しずくの言った通り、スマホで検索してもヒットはしなかった。
(うーむ…そう言う所もちょっとナニかが違う世界なんだなあ…)
その後も、我を忘れたしずくの小言が続くも、次の予約客の時間が来る旨をしずくに告げると、その日は何とかしずくの小言から解放させれのだった。
次の日の朝。
カズヤが店に到着早々、カズヤが挨拶をするよりも先に、しずくが口を開いた。
「カズヤさん、おはよう御座います。昨日のカズヤさんの所業は目に余るものがありましたので、今後一年間はタダ働きをして頂きます」
密かにカズヤへ想いを寄せているしずくは、昨日の不完全燃焼の気持もあり多少きつめの言葉を放った。
「朝一発目のセリフがいきなり辛辣過ぎるっ!」
昨日に引き続き、数分間しずくの小言が続いた。
「それでは次からは気をつけて下さい」
カズヤは力ない声で返事をした。
(次怒らせたら本当にタダ働きをさせられそうだぜ…気をつけねば…)
そして、その日は特に何事もなく仕事を完遂した。
それから数日が経過。
ある日の朝、何時もの様に店に到着すると、既に予約客が待っていた。
その客はカズヤが目を見張る程の美少女。
しかし、その美少女はカズヤが今まで会った事がない、斜め上を行く娘だった。