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カズヤはディアナとの密着状態にちょっとドキドキしていた。


(くっ…この俺がこうも容易(たやす)くドキドキさせられるとは…彼女の計算された兵法にどう対抗すればいいのだ…)


一方、ディアナはと言うと、カズヤが先ほどの言葉通りに接触してきたと思いドキドキしながら硬直していたのだった。


この密着した状況でカズヤは重大な事に気づいた。


(くっ…密着し過ぎて右腕が動かせん…はっ! これはエンブレイスショルダー封じか! なるほどな…色々な方法で俺の策を封じる事が出来るアピールって事か…常に俺の数手先を見据えているとなると必殺コンボを決めるのは絶望的か…)


少しディアナと距離を取るだけで右腕をフリーにする事は可能。

しかしそれでは女子から逃げるこの世界の男子と同じになってしまう。

ここで距離を取ると彼女の思う壺、それだけは避けねばならぬ為、現状を維持するカズヤ。

そしてディアナは絶賛フリーズ中。


ディアナはカズヤ好みのブロンド美女。

カズヤは何時(いつし)か仕事を忘れディアナとの密着状態をドキドキしながら堪能していた。


そして数十秒後。


(はっ! 俺は何時(いつ)の間にか彼女の(ぬく)もりを堪能させられていたのか…くっ、彼女は俺が堪能する様仕向けていたって事か…その証拠に彼女は策を実行中の為、身動き一つしていない…恐るべき策略…)


それから間もなくして我に返ったディアナだったが大口を叩いてた手前、引くに引けず現状を維持する事に。

しかし一分と経たずにドキドキが(おさ)まらないディアナは、カズヤに離れるよう要求する事にした。


「狭いのでもう少し離れて頂けないかしら」


これは彼女の策と考えたカズヤは逆にグイグイと体を押し付け、更に耳元で「僕はもっと密着したいです」と言うとディアナは「ヒャッ」と、か細い声と共に反射的にカズヤから少し距離を取ってしまった。

思いもよらずディアナが離れた事により右腕がフリーになったカズヤは好機とばかりに一気に畳み掛けようとしたのだが…


(これは絶好の間合い! このまま一気にコンボを…いや待て…本当に好機なのか?もしこれが彼女の策だとしたら…成程、そう言う事か…

彼女はこれまで敢えて隙を作り相手を誘い込みカウンターで攻撃をする策を実行している。くっくっく。何度も同じ手を使うとは…)


ドキドキカウンターを警戒したカズヤは自ら仕掛けずに先ずはディアナの出方を(うかが)う為、先程は無反応だった会話を再度試みる事に。

少し落ち着きを取り戻したディアナはカズヤに対する訳の分からない気持ちが芽生えつつある自分を確かめる意味を込めて、逆にカズヤに質問を切り出した。


この世界の男子は女子と会話をする際、相手と目を合わせる事は無い。

そんな彼らとは対照的に、カズヤは相手の目を見て話をするので、その姿勢にドキドキさせられる女子も多い。

それはディアナも例外ではなく、会話でもまたカズヤにドキドキさせられていたが、まともに会話が出来なくなる事を懸念し正面を向いて会話を行っていた。


一方、カズヤはと言うと、ディアナがドキドキしている事も露知(つゆし)らず、会話を行いつつ器用にも一人脳内会議に(いそ)しんでいた。


(なるほどな…自国の男子に飽きてこの国の男子を虐めに来たって事か…この俺でも苦戦する相手なのだから全世界の男子は泣かされるのは必定。

ならば俺がここで彼女の暴挙を止めるしかないのだが俺の策は全て看破されている…更に必殺コンボを決めたくても数手先を見据えられて打つ手無し…

このままでは俺だけが一方的にドキドキさせられて終わる事に…何か、何か策は無いのか…)


ディアナが既にドキドキしてると知る(よし)も無いカズヤだったが、ある作戦を思いついたのだった。


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