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02

カズヤは久々に初対面の客とデートをする事になった。


(まずは何時もの様にホールドハンズで相手の心を鷲掴みにするとしますか。まあ実際に掴むのは手だけどね!)


カズヤはそっとハルの手を握った。

するとハルはゆっくりと手を離した。


(あ、あれ?おかしいな…ホールドハンズが解除された…だと…いやいや、そんな馬鹿な事が…)


この世界の女性は男性から手を握る等の接触行為に憧れている。

当然カズヤはその事を知っているので今まで躊躇無く女性の手を握ってきた。

今までは驚いたり恥ずかしがったりする女性は結構いたが手を放す女性は居なかったのでカズヤは戸惑っている。


(なるほど、そう言う事か。彼女が手を動かそうとした瞬間に俺が手を握ってしまった為、その勢いでホールドハンズが解除されたか…

俺とした事がホールドハンズの発動タイミングを見誤ったか…ま、まあ、初対面の相手では仕方あるまい。

ならば再び発動するか…ホールドハンズアゲインを! よし、このタイミングだっ!)


カズヤは再びハルの手を握った。

すると、またもやハルはゆっくりと手を離した。


(なっ、何いいいぃぃぃぃっ!!! もはや偶然では済まされん。彼女は意図的に行っている…

まさか、これは…アンチホールドハンズ! 馬鹿な…この世界にアンチホールドハンズの使い手が存在するとは…

かつてない強敵だ。どうする…このままでは…俺が格好悪すぎるっ! な、何か対抗する策は無いか…)


今までカズヤはカフェに到着するまで相手の手を握りドキドキさせる事により道中の会話をカットする事が出来た。

しかし、その作戦が通用しない今、多少気まずいまま普通に無言でカフェに到着してしまった。


カズヤは女性に想定外の行動をされると軽くパニくってしまう。この辺りは数年経った今でも全く進歩はしていない。


(久しぶりに先制を許してしまったぜ…ここから何とか挽回せねば…ならば使うしかあるまい…禁断の奥義シットネクストをっ!)


シットネクストとは、かつてクイーンと呼ばれていた女性に食らった技を参考にカズヤが編み出した技…

と、例によってカズヤは病的に命名してはいるが、単に相手を先に座らせてから隣に座る事である。

通常なら相手の目の前に座るのが一般的だが隣に座る事により相手との距離を縮め、常にドキドキさせ会話の主導権を握る事が可能。


店員に案内されテーブルに向かった。


「ハルさん、どうぞお座り下さい」


カズヤはハルを先に着席させシットネクストの準備を整えた。


(くっくっくっ。これで彼女の隣に陣取り、ダブルホールドハンズを仕掛ければ彼女とて…)


カズヤは有利にデートを運ぶ策を算段している最中、ある事に気づいた。

案内されたテーブルは片方は1人用の椅子で片方は壁際のベンチシートになっている。

そして、ハルはそのまま手前の1人用の椅子に着席したのだった。


(なっ、何いいいぃぃぃぃっ!!! シットネクストが封じられた…だと…)


カズヤにとって、これは大きな誤算だった。

正面に座られるとホールドハンズのテリトリー外になってしまうからだ。


(馬鹿な…俺の策は完璧だったはず…何故だ…まさか…俺の策を看破していたのか?

はっ! 今は昼時…敢えてこの混雑する時間を狙って、両面がボックスシートのテーブルが埋まる事を計算して…

くっ、出来る…この状況は彼女が計算して作り出したって事か…常に俺の策の上を行く…何と言う策士だ…)


説明するまでも無いが、ハルは単に空いていた時間に予約を入れただけである。


(だが、俺とて数年この仕事を続けてきた身…例え相手が諸葛亮孔明並の策士であろうと仕事を遂行せねばならんのだ。

策士相手に策を弄するなど愚の骨頂…正に俺は今、策士策に溺れる状態に陥ってるではないか…策略で勝てない以上、ここは小細工無しの正攻法で行くしかあるまいて…)


この世界のデートクラブとは女性客が男性店員と純粋に会話を楽しむ為の店。

故に本来、策略等は存在しない。カズヤが勝手に思い込んでいるだけなのである。


カズヤは不慣れながらも些細な会話をしながらハルの情報収集を行った。

すると、どうやらハルはデートクラブの利用は初めてな上にカズヤの店がオプション込みの店とは知らなかった事が発覚した。

ハルもこの世界の一般的な女性なので男性と手を繋ぐ行為に憧れてはいたが、この世界では当然その様な機会に恵まれた事は無かった。

そんな訳で、いきなり人前で男性と手を繋ぐ事が恥ずかしくて、つい手を放してしまったとの事だった。


ハルは男性との会話は初めてなので緊張して自分から話題を振る事は出来なかったがカズヤからの質問等で何とか場を繋ぐ事が出来た。

殆どカズヤの質問攻めになってしまっていたが1時間コースのせいか、あっと言う間に時間になったので戻る事にした。


(なるほど…デートクラブは初めてだったのか、だから色々とアレだったんだな…しかし! オプション料込みでやってる以上このまま何も無しで帰すのは俺のプライドとか何か色々とアレだっ! 

俺は今までホールドハンズを欠かした事は無い。しかし、それが出来なかった時はデートバトルの敗北を意味する…ここは何が何でもホールドハンズを成功し、彼女をドキドキさせご満足していただくっ!)


カズヤは無駄にサービス精神が旺盛である。


(ならば使うかっ! 禁断の必殺技…ホールドハンズタイトリィをっ! くっくっく。この必殺技の前に敵はおらん)


ホールドハンズタイトリィとは相手の手をギュッっと恋人繋ぎにする事である。


(この技は普通のホールドハンズと違って解除は不能、異性との接触行為を存分に堪能してもらうとしよう)


カズヤとハルはカフェを出て歩き出した。


(よし、この辺りで良いだろう。ホールドハンズタイトリィ発動!)


カズヤはハルの手を握ろうとしたら、ある事に気づいた。


(なっ、何いいいぃぃぃぃっ!!! セルフホールドハンズだとっ!!)


ハルは自分の両手を軽く握りながら歩いていた。


(馬鹿な…これは完全にホールドハンズ拒否の構え…くっくっく。良いだろう…その挑戦受けて立つ! 

俺とて数々のデートバトルを制してきた身。この程度の窮地は幾度となく潜り抜けてきてるぜ…さて、彼女の構えを崩す方法は山ほどあるが…よし、アレを使うとするか)


こうしてカズヤはハルと手を繋ぐ為に策略を巡らせるのであった。


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