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ブロンド美女のディアナが店に訪れ、デート前にバトルが勃発。
ディアナは手を握って泣かすと脅し文句を言い放ったのだった。
(くっ…ここは冷静に対応して彼女の真意を見極めるのが先決か…)
カズヤが「どうぞ」と言いながら手を出すとディアナは躊躇した。
予想外なカズヤの行動にディアナは戸惑ったのだった。
「えっ!?」
他店のボーイと同様にカズヤが恐怖に慄く姿を想像していたディアナは言葉が止まった。
「手を握らないのですか? ならばこちらから握らせてもらいますよ?」
(ホールドハンズ発動! くっくっく…これで主導権は握ったぜ! まあ実際は手を握るだけなんだけどね!)
カズヤはそっとディアナの手を握った。
だがその瞬間、ディアナは予想外の行動を起こした。
(なっ、何いいいぃぃぃぃっ!!! ホールドハンズタイトリィだとーっ!)
ホールドハンズタイトリィとは相手の手をギュッっと恋人繋ぎにする事。
基本的には先に手を握った方が有利、なぜならば握られた方はちょっと照れくさくなってしまうからだ。
だが、そこから更に恋人繋ぎにされてしまうと、逆に恋人繋ぎを仕掛けた方が有利になってしまう。
(出来る…よもやこの世界でホールドハンズタイトリィを体得している者が居ようとは…外国人恐るべし…)
カズヤは忘れてしまってはいるが、過去に恋人繋ぎをしてきた女性は存在する。
しかし、その時の相手は以前にカズヤが恋人繋ぎをした事で、それを模倣しただけだった。
それに対しディアナは自ら恋人繋ぎを編み出した点において、この世界では非常に稀有な存在とも言える。
カズヤとディアナは手を繋いだまま暫しの間お互いを見つめ合いながら沈黙していた。
「そう言う事は外でやって下さい!」
しずくは多少イラッとしながら言った。
すると二人は無言で手を離し店を出てカフェ的な店へ向かった。
(今の所、勝負は互角…しかし彼女は強い。ならばあの店を使わざるを得まい…)
カズヤは強者とデートをする際は決まって横並びにしか座れない店を利用する。
テーブルを挟んで正面に座る形式だと接触行為が出来ないからだ。
逆に他店のボーイは女子との横並びを嫌うので客は少なく、こういう店自体も非常に少ない。
カズヤが店を案内しようとするとディアナは行きつけの店があると言い、その店に向かう事となった。
(くっ…早くも先手を打たれたか…やはり出来る…)
店に到着し席に案内されると、そのテーブルは意外にも横並びに座るボックスシートだった。
(どうやら彼女も同じ事を考えているようだな…くっくっく。だが、墓穴を掘ったな! ここから先は全て俺のターンだっ! まずは座った瞬間ジャブ程度にホールドハンズを仕掛けるとするか…)
カズヤは余裕の笑みを浮かべながらディアナを先に座らせると、自分は悠々(ゆうゆう)と着席をした。
カズヤが店員にドリンクを注文しようとした瞬間、ディアナはいきなりカズヤの手を握ってきた。
(なっ、何いいいぃぃぃぃっ!!! ドリンク注文前にホールドハンズを仕掛けてきただとーっ! だ、だがここは冷静にホールドハンズタイトリィで返せば彼女も照れるはず)
カズヤは自分の膝の上に右手を置いている。
更にカズヤの右手にはディアナの左手が乗っている状態。
カズヤはとっさに手を裏返して恋人握りにしようとした瞬間、ディアナはサッと手を離したのだった。
(アンチホールドハンズ…だと…)
アンチホールドハンズとは、手を繋がせないようにする事。
手を繋ごうとした側は空振りをする為、結構恥ずかしい感じになってしまう。
カズヤは主導権を握ろうと手を繋ごうとするがディアナも再び手を繋ごうとしていた。
こうして二人の手繋ぎ合戦が始まったのだった。