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デートクラブ荒らしが出没し同業のマスター三人にどうにかしてほしいと相談されたカズヤだった。
「くっくっく。久々に骨のある女性が現れたようだな。良いだろう…数々の兵法を持つ俺の前では何人たりとも…」
「流石カズヤさん!」
「頼りにしてます!」
「頑張って下さい!」
(いや…俺まだしゃべってる途中だったんだけど…)
三人はカズヤを尊敬してはいるが厄介事をカズヤに押し付けようとする側面も感じられる。
カズヤはカズヤで褒められて悪い気はしないので強気な態度に出てしまう。
「ならば次にその女性が現れた時にはこの店を紹介するとよい」
「「「いえ、ライバル店を紹介するのはちょっと!」」」
「何でだよっ! しかもそこは息ピッタリかよっ!」
そう言うと三人は自分の店へと戻っていったのだった。
(こいつら結局何しに来たんだよ…)
それから数日が経過した。
カズヤは例のデートクラブ荒らしについてしずくに確認した所、最近はパッタリと出没しなくなったとの事だった。
「それは残念。久々に骨のある相手とデート出来ると思ってたのに」
「カズヤさんは本当に不思議な方ですね…そ、そんな事より、そろそろ次の客様がお見えになりますよ交際して下さい」
「えっ? 交際?」
「そんな事言ってません。早く準備をして下さい」
しずくは時折カズヤに対する想いが口に出てしまう。
数分後、次の客が来店。
「ここが例のお店なのかしら…それにしても随分と…こんな所に本当に…」
ブロンド髪の美しい女性がブツブツと独り言を言いながら現れた。
「お待ちしておりましたお嬢さん。ではお店に行きましょう」
(うひょーっ! ブロンド美人だーっ!!)
「チェンジよ」
「えっ?」
(なっ、何いいいぃぃぃぃっ!!! 会って二秒でチェンジだとーっ!)
「あ、あの…こ、この店のボーイは僕だけ…なのですが…」
「そう…貴方は及びではないわ。予約はキャンセルよ! 失礼するわ」
ブロンド髪の女性はそのまま立ち去ってしまった。
カズヤとしずくは暫しの間、その場に呆然と立ち竦んでいたのだった。
それから数日が経過。
「カズヤさん…次のお客様ですが…」
しずくは珍しく言いにくそうにしている。
「ああ、うん。準備してくる」
そう言うとカズヤはしずくが言い終わる前にその場を離れた。
「本当にあの人が…にわかには信じられないわね…若くないし…でも今回は我慢して…」
次のお客様がブツブツと独り言を言いながら現れた。
「ようこそお嬢さん。それではお店に…」
カズヤは女性を見て言葉っが止まった。
それは、その女性が数日前キャンセルをしたブロンド美女だったからだ。
「ボ、ボーイは僕しかいませんが…」
「ええ、分かっているわ」
ブロンド美女の名前はディアナ。外国人だがこの国の言葉はペラペラ。
彼女は若い男子の鳴き声や苦痛にゆがむ顔を見るのが大好きな二十代のドエスな女性。
見るからにおっさんなカズヤは好みのタイプではないが、チラホラとカズヤの名前を耳にし他店のボーイに店を聞き出し、出向いて来たとの事だった。
(とんでもない性癖のお客様だったーっ! えっ?ひょっとしてこの人が例の…)
「貴方の様なおじさんの泣き顔には興味はありません。せいぜい私を楽しませて下さい」
(さっきからこの人ひでーっ! ならば…)
言われっぱなしが癪にさわったカズヤは強気な態度で接する事に。
「くっくっく。楽しませて、ですか…良いでしょう! ならば僕の持つ四十八のデート技…」
「では早く行きますよ。モタモタしてるとここで手を握って泣かせますよ? おじさんの泣き顔になど興味はありませんが…」
ディアナはカズヤが言い終わる前に噂が真実かどうかを見極める為に先を急いだのだった。