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ヤマンバギャルのセイラとデート後、数日が経過した。
その間は特にカズヤが妄想を膨らませる事もなく普通にデートを行っていた。
本日一人目とのデートが終了し店に戻ってきたカズヤ。
「おかえりなさいカズヤさん。馬…お客様が既にお待ちです」
「あ、うん。分かった」
(今、馬って言ったような…)
待合室に行き、次のデート相手を見てカズヤは驚いた。
(馬だーっ!!!)
そこには馬の被り物をした女性らしき人物が立っていた。
困惑しながらもカズヤは被り物をしている理由を尋ねると馬、もとい彼女はたどたどしい口調で説明をした。
彼女の名前はセイラ、以前にデートをしたことがあるヤマンバギャル。
以前のデートで別れ際に次は素顔の君に会いたい的な事をカズヤに言われ、ノーメイクで来たとの事だったのだが…
(顔が全く見えてねーっ!!)
どうやらセイラは極度の恥ずかしがり屋で素顔を見られるのが非常に恥ずかしいとの事だった。
「い、行きましょう…」
小さな声で力なく言うセイラ。
「えっ!? う、馬のままで行くの!?」
カズヤはセイラに尋ねると、セイラは首を縦に振った。
(ええーっ…馬の被り物をした女性とデートって…逆にこっちが恥ずかしいんだけど…何この羞恥プレイ……はっ! 成程、そういう事か…)
今回セイラとは二度目のデートとなる。
恥ずかしがり屋のセイラは同じ女性にのしずくに素顔を見られるのが恥ずかしくて店を出る直前で被り物を取る。と、カズヤは考えた。
そして…何事もなく店を出て街を歩くカズヤとセイラ。
(なっ、何いいいぃぃぃぃっ!!! 被り物をしたまま街中を平然と練り歩いている…だと…想像以上にメンタルが化け物だったぜ…)
「あ、あの…て、手を繋いでも…」
セイラはか細い声で言うと、被り物をしていてもハッキリと分かるくらい恥じらっている様子が伺える。
(女子の恥じらいは本来萌え要素なんだが、馬だからなあ…っていうか、前回手を繋いだらセクハラって言ってたような…まあいいだろう)
カズヤはニッコリとした表情でセイラと手を繋ぐと、セイラは更に緊張も加わり挙動不審な行動をしながらカズヤと共に歩き出した。
(馬の被り物をしながらその動きは何か怖いっ!)
馬の被り物をした女性と手を繋いで街を歩く羞恥プレイに周りの目を気にするカズヤ。
しかし、カズヤの思いとは裏腹に街行く人々からは何故か全く注目される事はなくカフェ的な店に到着したのだった。
店に入りテーブルに着くも前回同様にセイラから話を切り出す事は無くカズヤから話しかける。
時折セイラが被り物をしたままドリンクを飲む姿を見て器用に飲んでると感心するカズヤ。
例によって目が合うとセイラは横を向いてしまい終始前回とほぼ同じ内容でデートタイムは終了した。
・・・
カズヤが店に戻ってくると何処か見覚えのある三人の男性達が待ち構えていた。
「「「カズヤさんお疲れ様です!」」」
その三人の男性はこの界隈でデートクラブを経営しているマスター達。
彼ら曰く、ここ最近、デートクラブ荒らしが出没しボーイ達は怯えたり泣き出したり、更には出勤拒否する者が現れたりしたとの事。
カズヤは嘗てクイーンと呼ばれ、恐れられていた女性を華麗に撃退している。
(いや、撃退はしてねーよ。結婚するからデートクラブに来なくなっただけだよ)
そんな経緯もありカズヤはこの界隈の同業者からは神様的な存在に思われていた。
そんなカズヤにどうにかしてほしいと三人のマスターは相談を持ち掛けてきた。
「くっくっく。久々に骨のある女性が現れたようだな」
カズヤはクイーン以来の強敵に胸を躍らすのだった。