聖夜はあなたと共に…… 中編
私が朝起きると先輩はいなかった。テーブルには1枚の紙と鍵が置いてあった。
『おはよう!今日行く所が出来たから朝は何か使って食べて。鍵は月曜日に返してくれればいいから。また月曜日にね!』
「起こしてくれればいいのに……」
私は少し不貞腐れる。今日はクリスマスイブなのに……っと。
私は何も食べずに部屋を出た。そこからぶらぶらと街を歩く。周りはカップルだらけ……私だけ場違いな気がして人気のない公園へとやってきてベンチに座った。
「何やってるんだろう……私……」
マフラーに顔を埋めてボソボソと独り言を言う。
「先輩も恋人いるのかな……?」
居たら嫌だなと思う。初めて会った時。とても綺麗な人だと思った。おまけに仕事も出来るし、気も回る。優しい先輩だった。私と2つ違いの先輩……
「はぁ……恋だよね……これ……」
そう結論付けると私は立ち上がる。先輩に告白する為に。しかしそんな時にメールが届いた。私はメールを見るとすぐさま駆け出していた。
朝起きると後輩のゆみちゃんが寝息を立てて寝ていた。
(可愛い……)
ほっぺたをツンツンする。とても柔らかい感触……
「まだ寝かせあげるか……」
私は台所へ行き朝ごはんの準備をする。そして今日の予定を立てる。折角ゆみちゃんが来てくれたのだから2人で遊びに行こうと考えていた。だけどその前に携帯を見る。すると……メールが来ていた。
『月曜日までにプレゼンの資料をお願いします。昨日頼むの忘れてた。』
「あのハゲジジィ……」
メールに絵文字を使っているのが余計に腹が立つ……私の上司は正直無能だ。その尻拭いを部下がしているからあの野郎はのうのうと出来ている。
私は分かりましたとメールを送った。そして朝食も食べずにスーツに着替えた。そしてゆみちゃんへ手紙を書いてその上に合鍵を置いておいた。
「行ってきます……」
普段は言わないセリフを部屋へ向かって言う。例え帰って来ない返事でも……中に誰かが居てくれるのだから……
会社に着きパソコンを立ち上げる。その間に目覚めのコーヒーを淹れて飲んだ。朝はゼリー飲料で済ませた。昼は進捗によって決める予定だ。最悪もう1つのゼリー飲料で済ませるつもりである。
カタカタとプレゼンの資料を作る……そしてチラチラと時計を見てしまう。
(もう……起きたかしら……?)
時間は一向に進まず、資料も全く進まない。1人で仕事をするなんていつもの事……なのに今日はやたらとソワソワしてしまう。
「朝ごはん食べたかしら……そう言えば食材……卵と食パンくらいしかなかった様な……」
頭の中からゆみちゃんの事が離れない……あの寝顔を見てしまってからドキドキが止まらない。
「ええい!仕事に集中!」
私は気合を入れ直して資料を作る。そして気が付くともう15時だった。
「ん〜……ちょっと休憩!」
誰もいないオフィスでゼリー飲料を吸いながら携帯のメールをチェックする。するとまたしても上司からメールが来ていた。
『青木君会社にいるならついでに私の引き出しに入ってある明細書を取引先のA社にファックスしておいて欲しい。』
いい加減殺しても文句言われないと思う様になってきた。
私は上司の机の引き出しから明細書を取り出してファックスした。するといきなり入り口の扉が開いた。そこには……
「先輩!」
「えっ⁉︎ゆみちゃん?なんでここに?」
「あのハゲジジィが私にもメール送ってきたから先輩のいる場所が分かったんですよ!」
何故か怒ってる様に見えた。顔は真っ赤で息を切らしながら私の元へツカツカと歩いてくる。そして……
ぎゅーー……
私を力強く抱きしめてきた。
「1人でなんでも抱え込まないでください……私じゃ頼りになりませんか?」
「そ、そんな事ないよ。でも休日まで仕事する必要は……」
「良いんです!私!先輩と一緒なら仕事しますから!」
「えっ……」
「だから私を1人にしないで下さい!私……先輩が大好きなんです!」
「ええー⁉︎」
急な告白に頭が真っ白になってしまった。でも何故かすぐに答えは口から出ていた。
「私も……ゆみちゃんが好き……昨日家の前で待っててくれたの……嬉しかった……昨日一緒にうどん作ったの……楽しかった……昨日寝る前にずっと一緒に居れたらって……考えてた……」
「先輩……」
「先輩なんて言わないで!2人だけの時は百合って呼んでよ……」
「百合……」
そう言うとゆみは私の唇に自分の唇を重ねた。とても柔らかい唇の熱が私に伝わった。
「百合……あと仕事どのくらい?」
「あと2時間くらいは掛かるかも……」
「じゃあ私も手伝うから終わったらデート行きましょう!」
「うん!ご飯は私が奢るわね。」
「やったー!俄然やる気が出てきたわ!」
そうして2人で仕事を始めたのだが……
「百合〜お菓子食べる?」
「えっ?あるの?」
「引き出しに隠してるよー」
「ゆみちゃん……それやめなさいって言ったわよね?」
「でも、百合は今日もゼリー飲料しか食べてないでしょー?ゴミ箱見れば分かるんだからね……」
「うぐっ……」
痛い所を突かれて何も言い返せない私にゆみちゃんはクッキーを私の口に押し込んだ。
「今日だけは特別って事でいいわよね?」
「しょーがない……見逃します……」
私はクッキーを食べて仕事を再開する。しかしこんな話をしながらなので終わったのは19時過ぎになってしまった。
「もう!ゆみちゃんの無駄話のせいよー!」
「ええー、百合だって楽しんでた癖にー」
他愛のない話をして夜ご飯の店を探しているとゆみちゃんが私の腕を引っ張る。
「ここにしよう……」
「ここって……」
そこはネオンでめちゃくちゃ光ってるホテルだった。
「ラブホーー⁉︎」
「ルームサービスもあるから百合は食事代私が宿泊費払うわ!」
「ちょっ!ちょっと!私まだ心の準備がー……」
「そんなの中に入ってからすればいいよ!」
「……そうね。それにお菓子を隠してたお仕置きも出来るもんね……」
私は黒い笑みを浮かべるとゆみちゃんは逆に顔が真っ青になった。
「じゃあ行きましょうか……」
「まっ待って!私まだ心の準備が……」
逃げようとするもゆみちゃんの腕はしっかり私の腕に組まれて逃げられない。楽しいひとときが始まるのでした。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
後半は明日投稿予定!お楽しみ!
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