玖
長らくお待たせ致しました。
やっと、やっと、書きたかったシーンが書けました☆☆☆
ここまでお読み下さり、本当にありがとうございます。もう少し、二人のほのぼのした物語に、お付き合い下さいませm(_ _)m
さて、達彦が来てから、10日が過ぎた。この日、やっと、家からお迎えが来た。
瑞希は、随分かかったなぁと、呑気に考えていたが、かなり厳しい物があったようで、大人組の表情は険しかった。
「長らくお世話になりました」
礼儀正しく、頭を下げたのは、何と、達彦の両親であった。長男の満彦は後始末をしているそうで、まさかの御当主様が直々に御迎えにいらっしゃったのである。これには、瑞希も斎も、ちょっと気になって、チラチラと見てしまった。二人とも、達彦にそっくりだった。いや、反対か。達彦が彼らに似ているのである。
「いえいえ、憂いが無くなったようで、本当に宜しかった・・・達彦くん、荷物は準備出来てるかのぅ?」
「はい、連絡があったので、昨日のうちに準備しました」
結局、辰彦の荷物は、そこそこな大きさのスーツケースで、一つになった。更に、学校の宿題が手提げに一つである。宿題という名のお復習は、斎の手も惜しみ無く借りて、何とか終わりを見せた。斎も兄弟みたく仲良しになったり、瑞希も新しい兄が出来たようで、喜んでいた分、寂しくなる。お別れを知って、斎も瑞希も、朝から元気が無かった。
「二人とも、また来るね! そしたら、また遊ぼう!」
「「うん、約束!」」
子供たちの微笑ましい姿に、大人組は優しい眼差しを向けていた。新たな縁は、とても素敵な物であった。
結局、忙しいご両親に促され、達彦は直ぐに外に出た。やはり、式に乗って帰るのは、お約束らしい。瑞希は、既に近くに居た先生の背に隠れている。
「ほへ~・・・」
瑞希のよく分からない間抜けな声が上がる。そんな声も、可愛らしいと、大人組は微笑んでいた。
さて、目の前に居るのは、達彦の父親が呼び出した、巨大な鳥。クリッとした瞳の、可愛らしい白い鳥は、満彦の式よりもでかい。
「お世話になりました」
強風が吹き荒れる中、達彦たちは帰っていった。まさに、あっという間だった。鳥の羽ばたきで、直ぐに見えなくなったのだから。
「帰っちゃった・・・」
「瑞希、また、遊びに来てくれるよ」
寂しそうな瑞希に、斎が頭を撫でながら、優しく言うが、流石に10日も一緒に居たのだ。斎とて、寂しいけれど、瑞希よりもちょっと大人な彼は、ちゃんと我慢が出来ただけだ。
「斎、瑞希、午後からお客様が来るから、準備を手伝ってくれるかしら?」
「「はい、御師匠様」」
まだまだ元気が無い二人だが、お手伝いはちゃんとする良い子達である。
「お客様は、お祓いの方ですか?」
斎の質問に、御師匠様はゆっくりと首を横に振る。
「いいえ、別件の方ですよ、あなた方にも関係する事です」
珍しい言い方に、斎も瑞希も、頭はハテナでいっぱいである。寂しさもつかの間、クルクルと表情が変わる瑞希と、あまり変わらない斎。新しいお客様に対して、悩みだした。
「誰だろう?」
「関係・・・?」
素直な二人に、大人組は和んでいる。寂しさも感じながらも、ほのぼのとした空気が漂っていた。
◇◇◇◇◇
準備は思いの外苦戦した。というのも、物置から、斎や瑞希の幼い頃に使っていた、服やオモチャ等々を出したからだ。空いていた部屋を片付け、そちらへ綺麗に掃除した、それらを置いているのだ。
洋服は少なかった。理由は、瑞希の実の弟妹へ、御下がりしたから。斎の服も対象になっており、箱二つ程があっただけだ。これだけで、午前中は全て消えたのである。
今は二人とも、ソワソワしながら、これから来るお客様を待っている。そんな二人に、やはり、大人達は優しく見守るだけだ。
「誰が来るんだろう」
「もうすぐ来るんだから、瑞希も座ったら?」
「斎だって、さっきからソワソワしてるじゃん!」
二人は言い合いをしつつも、気もそぞろに、外をチラチラ確認している。別館のコタツに居るが、瑞希も斎も、先程から立っては座りを繰り返していた。
「落ち着かんようじゃのぅ」
「仕方ありませんよ、依頼以外の来客は珍しいですから」
ニコニコの大先生も、仕方ないという先生も、二人とも結局、優しい顔をしている。二人が可愛くて仕方ないのである。
「二人とも、まだ早いですから、落ち着きなさい」
御師匠様に促され、渋々、コタツに戻ってきた二人だが、やはり、チラチラと外を気にしている。
「ねぇ、御師匠様、お客様が来ても、瑞希も斎も、一緒に居ていいの? お部屋に居た方がいい?」
瑞希の真っ直ぐな視線には、不安が垣間見えた。普段、お客様の対応は、瑞希のお仕事ではあるが、必ずではない。気を使っているのは、直ぐに分かった。
「今日のお客様は、あなた方も会う必要があるのよ、大切なお客様なの」
苦笑気味に御師匠様が教えたのは、更に謎を深めた。だって、今日は誰も仕事の服である、白い着物に赤い袴、または、青い袴は履いてない。大先生は普段着の着物を着てるけど、他の皆は服を着ている。やっぱり、変なのだ。
「直ぐに分かるわよ」
結局、教えて貰えない瑞希は、すっかり拗ねてしまった。斎は、何となく大人達の考えも分かるから、拗ねてしまった瑞希の相手をしている。
あれから、そう間を置かずに、玄関のインターホンが鳴る。
お出迎えは、先生と御師匠様が向かった。
「誰が来たんだろ・・・・」
瑞希は、お出迎えをしないから、余計に不安になった。
「直ぐに来るよ」
斎の言葉の通りに、直ぐに扉が開く。別館である私的な空間に、お客様が来るのは、かなり珍しいため、二人とも緊張したまま、先生の後ろに控えるように座った。癖のようなもののため、先生たる良太郎は苦笑するしかない。
「二人とも、お客様が来たぞ」
先導している大先生の後ろから、中年の見知らぬ女性と、幼い小さな子供がついてくる。一番後ろには、御師匠様である。今回のお客様との関係が分からない二人は、大人しく待ちながらも、盛大に頭の中ではハテナが舞っていた。
「改めまして、ようこそおいで下さいました、どうぞ宜しくお願い致します」
「こちらこそ、宜しくお願い致します」
穏やかに挨拶する大人組は、流れるように会話が進んでいく。
「では、そういう事で」
「はい、では、この子の事を宜しくお願い致します」
どうやら、この神社に新しい子が増えるらしい。難しい話は、二人は分からなかったが、そこだけは理解した。
瑞希は今まで、一番小さかったが、自分よりも小さな子が来た事に嬉しくて、でも騒げないから、顔を真っ赤にして喜びを噛み締めていた。