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いつもお読み頂き、ありがとうございます♪

お待たせしました~♪

次回更新予定は、活動報告にて記載しますね☆

それは、正に、全身全霊を使うような、そんなかなりの気迫を感じるもの。部屋の中の空気が、ピーンと張り詰め、誰もしもの背筋が伸びた。


「これより行うは、『早解き』と呼ばれるもの、良太郎、美和、斎、瑞希、よう見とれよ」


その場に居る、弟子と孫弟子に、言葉をかけた先代は、しかし、こちらを一瞥もせずに、ただただ、全神経を集中させていた。気迫もかなりのもので、空気が張り詰めたような、独特のものに変わっていく。

なお、余談だが、美和というのは、正園の実名である。代々の神社を任された者が名乗る、受け継ぐ名前なのである。


「こんがらがった運命の糸、解かせてもらうぞ!」


勝ち気とさえ言える言葉だが、経験から来る自信は、誰もが見惚れるほど、雄々しいものだ。実際、場の誰もが、息をするのも忘れ、彼に見いっていた。一瞬かはたまたかなりの時間が立ったのか、それすらも曖昧になっていく。

ーーーーー集中力が最大に成った、その瞬間。かっと目を見開いた大先生は、印を組んだ手を絡まった糸へ向けた。


「かぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーー!!!」


気合いと共に、力が放たれた。一瞬にして、こんがらがった糸が、ピーンと伸びていく。それはまるで、糸が踊っているかのような、綺麗な光景であり、残ったのは、美しい糸に絡み付く、黒い糸だけだ。それも、大先生は懐から出した、美しい彫刻のある鋏で、サッと切っていく。


「ふむ、もう大丈夫じゃよ」


先程までの張り積めた空気は、既に無く。穏やかに笑う大先生の顔があるだけだ。


「・・・あれ? 何か指が軽い?」


不思議そうに、達彦が自分の指をまじまじと見ていた。あれだけ絡まっており、更には力を持つ彼は、指の糸により重く感じていたのだろう。急に軽くなった自分の指を、嬉しそうに見ている。


「そうじゃよ、もう大丈夫じゃ、安心せい!」


豪快に笑う大先生に、やれやれと正園は苦笑し、良太郎はホッとした姿を見せた。斎と瑞希は、ごく普通の少年に戻った彼を見て、変わりように驚いた。先程までは、反応が薄く、あまり話さない様子だったのだ。もとに戻った彼は、すっかり年相応の男の子になっていた。


「良かったなぁ、達彦!」


嬉しそうに笑う満彦だが、そちらには大先生からちゃんと釘が刺された。


「とはいえ、大丈夫なのは一時じゃよ? 元凶を封じるか、倒すかせん限り、また繰り返すじゃろうて」


「・・・勿論、我が一族の総力をかけて、元凶は駆逐致します!」


きっぱりと力を込められた宣言をした満彦に、状況が飲み込めないらしい達彦は、目を白黒していた。やはり、年相応に反応が出ている。というよりも、大変可愛らしかった。内心で、瑞希はちょっと萌えた。しかし、あくまでも顔には出さなかったので、誰にもバレてはいない。


「そうか・・・、とはいえ、元凶を倒すまでは、達彦くんはここに居た方がええじゃろ、あちらに戻れば、間違いなく、元に戻るじゃろうからな」


大先生の言葉に、満彦が今度は目を見開いていた。一緒に帰るつもりだったらしい。しかし、大先生が言ったのは、事実である。いくらほどいても、元凶と会えば、元に戻るのは当然だろう。お守りを持たせても、今回は効果が薄い可能性があった。術者は本来、悪い糸に一定の耐性がある。達彦も当然あるにも関わらず、こんなにもがんじがらめにされるなど、明らかにおかしいのだ。


「そんなぁ・・・両親も祖父母も、達彦に会えるのを楽しみにしていたんです、あの、倒さない限り、駄目ですか?」


何処か必死な長兄の満彦の姿に、達彦は困り顔である。とはいえ、着替え等を考えると、やはり、満彦には一度、帰ってもらうしかないだろう。


「何、用は敵を倒せば帰れるんじゃ・・・、安心せい、その間は此方で面倒を見るからの」


既にこれは、決定事項である。達彦を守る為には、必要な事であり、いくら頼まれても、今は難しかった。


「満彦にぃ、良いよ、僕、ちゃんと待ってるから」


真っ直ぐに満彦を見る達彦は、この状況に納得しているようだ。大人びた姿の達彦を見た満彦は、驚いてはいたが、最後には何処か寂しそうに項垂れ、小さく頷いた。


「・・・・・・分かりました、嫌だけど、すごーく! 嫌だけど、達彦の事、宜しくお願い致します」


勢い良くガバリッと頭を下げた姿は、少しだけ、やけっぱちにも見えたが、照れ隠しにも見えた。


「とりあえず、こいつの着替えをもう少し持ってきます、あと、勉強道具も・・・倒すまでの間、宜しくお願い致します」


この時の満彦の顔は、決意を固めた、キリッとしたもので、かなりカッコいいものだった。瑞希がちょっとドキッとするくらいには。それを脇目に見た斎が、面白くない様子であったのは、幸いにも誰も気付かなかった。何せ、皆の視線は、満彦に向いていたからだ。

善は急げとばかりに、満彦はその後、何度も達彦の事を頼みながら、後ろ髪を引かれるように式神で帰っていった。

勿論、瑞希はばっちり、御師匠様の背中に隠れたが。やはり、大きな式神は幼い瑞希には、怖かったのである。


「これから、しばらくの間、宜しくお願いします」


見送ったあと、プライベートの居住区の方でもう一度、改めて挨拶をする。何せ、彼は最初の辺りは、ぼんやりして居た事もあり、瑞希や斎の名前も知らなかったのである。なお、何故、居住区の方かと言えば、昨日まで彼が泊まった別煉に、流石に未成年者を泊めるのは、はばかられたからである。こちらであれば、誰かしら居るため、寂しい感じはしないだろうという、気遣いからである。勿論、寝る場所は、個室になるため、プライバシーは配慮されている。


「賑やかになるのぅ」


「そうですね、こちらこそ宜しく」


大先生と良太郎が挨拶をし、御師匠様も改めて挨拶した。


「しばらくの間、宜しくね、分からない事は遠慮なく聞いてちょうだいね」


「僕は斎、宜しく」


「わたし、瑞希! 宜しく!」


冷静な斎と、元気な瑞希に、達彦も嬉しそうに、笑顔であった。


「宜しくお願いします、・・・ねぇ、斎くんは今何歳なの?」


「えっ? 小五だけど」


「あ、僕と同じ」


嬉しそうな達彦に、斎も嬉しそうである。何処か通じる物があるのか、二人は直ぐに意気投合した。達彦は末っ子故か、女の子の瑞希を妹分と認識したらしい。ちょっと、照れていた達彦である。


「さて、そろそろお昼ね、さぁ、作るから、斎と瑞希は手伝ってね? 達彦くんは、今のうちに、別棟の客室から荷物を持ってきてね」


「「「はい!」」」


三人の元気なお返事に、大人組は優しい微笑みを浮かべる。

とはいえ、大人にも仕事はある。正園はお昼の準備、良太郎と大先生は、旅行バックの片付けてが待っている。何せ、洗濯物がギッチリと詰まっている。間違いなく、正園の素晴らしい笑顔が見れる事だろう・・・・・。

内心、素直な子供達が羨ましい、男性二人だった。

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