拾参
お待たせ致しました☆
和気あいあいとした、夕食の時間。
今日は、山菜の炊き込みご飯に、根菜たっぷりの煮物。たっぷりの具が入ったキノコ汁に、根菜の漬物、ゴマで包んだ中身は山菜と豆腐を混ぜた、丸い揚げ物もある。
それぞれがご飯半ばくらい、可愛い柚希にほっこりしながら、食べていたら、また固定電話がなった。
この時間は、あまり電話は鳴らないため、かなり珍しい事だ。
大先生が席を立ち、電話をしている間、皆はまた和気あいあいと食事をしていく。
柚希の食事は、小さなお椀に練習用の箸、おかずは御師匠様が取って、お世話をしながら食べている。小さくしてもらいながら、自分で食べる柚希は、美味しそうに食べるので、見ている側もほっこりする。実際に美味しいので、食事が楽しみである。
と、電話が終わった、大先生がどこか困った顔で戻ってきた。
「明日、斎も瑞希も休みじゃな? この前来た陰陽師の家の者が来るぞ」
言われても、直ぐには分からず、斎も瑞希もキョトンとなる。普段から客が多いため、直ぐに出てこなかったのだ。
「陰陽師って、あの式神の人ですよね?」
「陰陽師・・・って事は、達彦くんが来るの!?」
ようやく分かって、嬉しそうな二人に、大先生は朗らかな笑みを浮かべている。
「あぁ、長男殿と一緒に来るらしい」
前回、それなりの長さで滞在した達彦は、すっかり斎と仲良くなったし、瑞希の事を妹のように可愛がってくれた。男兄弟しか居ないらしく、妹は新鮮だったようだ。それに、次男殿より、長男殿になついているらしく、あわや兄弟喧嘩という場面もあった。今時青年の次男を、達彦は不満いっぱいで見ていたようだ。
「あ、あの、少し話をする時間とか、ありますか?」
珍しく斎の不安そうな質問に、大先生は優しい笑みを浮かべる。この子達が本当は、友達と遊ぶのを我慢しているのを知っているから、勿論、最初から時間を作るつもりだった。
「安心せい、泊まっていくそうじゃから、また遊ぶ時間があるぞ」
そう言えば、斎も瑞希も、パッと笑顔になる。隣で、柚希は御師匠様に頬を拭いてもらいながら、一生懸命にご飯を食べており、あんまり話には興味はなさそうだ。とはいえ、陰陽師兄弟が柚希を見て、どういう反応になるか、大人達も今は分からない。
この魅了は、同じ血を引く者にしか、効果はないが、術者にはそれなりに、この血を引く者が居るのも確かなのだ。大抵は、運命の糸を見る事は、あまりない。あやかしに関する力だけを持つからだ。だからこそ、陰陽師兄弟の反応が、分からないのだが。
「いやはや、ちと心配じゃわい」
過保護な親心を持ちつつも、喜んでいる斎にも瑞希にも、不安にさせたい訳ではないため、表面上は取り繕う。
「楽しみだなぁ~♪」
瑞希の鼻歌混じりの嬉しそうな笑顔が、不安を吹き飛ばしてしまったようで、場は一変し明るい物になった。
◇◇◇◇◇
次の日、朝からソワソワと落ち着かない斎と瑞希に、御師匠様も仕方なく、危ないからと注意をする。掃除や、料理の時などは、怪我をしかねない為、注意は必要である。平行して、柚希の世話もしていく。幼い頃に引き取られた斎や瑞希の世話もしていた為、かなり手慣れてはいるが、二人よりも幼い柚希に、時々、瑞希の母に電話して、相談しているようだ。二人はかなり、仲が良い。
「まだかな? 達彦くん、まだかなぁ?」
チラチラと、窓の方を見て、落ち着かない瑞希に、多少自制心がある斎も、やはり、何処か上の空で、チラチラと、同じように見ている。
「きっと、もうすぐですよ」
苦笑気味に、もう何度目かの同じ台詞を繰り返す。御師匠様とて、気持ちが分かるので、注意はしない。
「先に、勉強を終わらせなさい」
先生にまで言われて、また渋々、自主勉強を始める二人。今日は、古文の中でも難しい、古文書を読み解く修行である。とはいえ、先程から進捗はない。ミミズが走ったような、流れる字に、悪戦苦闘している。
「仕方あるまい、今は使わない書体じゃからのぅ」
朗らかに笑う大先生は、それらをスルスルと読んでいる。漢文もあるのだが、この神社にあるのは、流れるような筆記の古文が多いため、勉強するしかない。大先生と先生が翻訳して、今の時代の言葉に直し、パソコンで新しく作ってはいるが、中々、こちらも進んでいなかった。
「ふむ・・・来たかのぅ?」
山の結界に、反応があった。これには、斎と瑞希が直ぐに反応した。以前の訪問で、式神の気配を二人はちゃんと覚えていた。何より、柚希以外の全員が分かっているため、必然的に勉強や古文書解読は、終了の流れとなった。
とはいえ、全く分からない柚希は、可愛い顔をキョトンとさせて、皆を見ていた。
「にーに、ねーね、だれくるの?」
そわそわしていた二人が、柚希を見て、一瞬で嬉しそうに満面の笑顔になった。新しい弟分が自慢出来ると、二人は内心、ウキウキしていたのだ。
「僕の友達が来るんだよ」
斎が分かりやすく言ったが、柚希はまだ良く分かっていないらしい。
「うにゅ?」
柚希が首を傾げているが、ただ可愛いだけだ。そうこうしてるうちに、気配はだんだんと近付いてきている。
「さて、そろそろ来るじゃろ」
大先生が外を見て、立ち上がる。出迎えに出るため、全員で外へ向かう。誰しもが、久しぶりの出会いに、足取りが軽くなっていた。




