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拾弐

長らくお待たせ致しましたm(_ _)m

ふ、二月ぶり・・・。えー、難産だったんです!! ご容赦下さいませ。

お昼は、野菜のたっぷり入った、煮込みうどん。更に、いつもは小鉢の御漬け物がたっぷりと出され、キノコや野菜の天ぷらも出て、普段よりちょっと豪華で、ボリュームがある。少食な瑞希、まだ幼い柚希は、小さめなお椀に盛られたが、他はほぼ一緒の量である。


「わーい! 天ぷら!」


思いの外、天ぷらに子供達が喜んだ事もあり、賑やかになる。とはいえ、ここは神社。神職の彼らの食事は、大変礼儀正しく、綺麗に食べている。柚希も、御師匠様に手伝ってもらいながら、もにゅもにゅと食べている。見ている側の気分は完全に餌付けである。そこだけ別世界で、ほのぼのした空気が流れていた。

とはいえ、可愛い盛りの三人の子供達。食べ終えれば、また賑やかだ。


「「ご馳走さまでした」」


先に、二人が完食した。ちゃんと手を合わせて、挨拶をする。それを見ていた柚希も、さっそく真似っこした。


「ごちちょーうちゃまでしゅた!」


ちゃんと言えてないが、先に食べ終わった大人達の、何の準備もしていない、柔らかいハートに、それは見事なヒットをした。本人は満足げにしているが、回りは既にノックアウトである。天を仰ぐ男二人が良い例である。

可愛い、とにかく可愛い。


「お、お粗末様でした・・・」


何とか体面を守った御師匠様は、かなり頑張ったといえるだろう。笑顔が力が入りすぎて、少し怖い。


「まだ案内終わってないから、また行こう! ね、斎!」


笑顔の瑞希に誘われた斎も、素直に頷いた。まだ幼い柚希は、広い家で迷子になる可能性があった。斎も必要だと思うため、反対するつもりも無かった。


「うん、迷子になったら、大変だからね」


今日は久しぶりに来客も無い。子供達が心行くまで遊んでも、1日くらい大丈夫・・・とは、行かなかった。突然の電話によって。話に行った大先生は、かなり難しい顔であった。


「皆、支度せよ・・・来客じゃて」


先程までの、和気あいあいな空気は成りを潜め、仕事の顔に皆がなる。瑞希でさえ、幼くとも聡明な子ゆえに、真面目な顔で話を聞いていた。唯一の例外は、柚希だろう。しかし、幼いながらも、空気が伝わったらしい。急に変わった空気に、目をパチパチしながらも、大人しく皆を見ていた。


「柚希はどうしますか?」


御師匠様の問いに、大先生は少し考えると、真面目な顔のまま、頷いた。


「連れていく、支度せよ」


「渡りました、斎、瑞希、あなた達も支度しなさい」


「「はい」」


素直に頷いた二人は、既に子供ながらに、仕事の顔になっていた。


「柚希は、まだ、仕事着がありませんから、私と皆を見ていましょうね」


「うっ? あい!」


不意討ちで受けた柚希の無邪気な返事に、せっかく締まっていた空気が、また緩んだ。


「・・・早急に何とかせにゃならんのぅ」


ほとほと困り果てた大先生の言葉に、顔には出さないが、柚希を除く全員が、内心で盛大に頷いたのだった。この強烈な可愛さは、中々の凶器になると・・・・・。



◇◇◇◇◇



その後、皆はそれぞれ、着替えを終わらせ、仕事の準備に入った。瑞希はお出迎えのため、玄関横の日の当たる廊下で待機だが、斎は縁切り鋏を確認している。それは、大先生や良太郎、御師匠様も同じである。

だが、部屋の準備や、お茶の準備等もあり、来客の時は何かと忙しいのだ。御師匠様は、細々した準備もしている。


「そろそろ、か? 神殿へ参るぞ」


気配を感じたのか、動き始めた皆は、瑞希以外が本殿へ向かう。


「柚希、皆の仕事をよく、見ているのですよ?」


「あい!」


可愛い柚希の元気な挨拶に、今度は誰も反応はしなかった。仕事である以上、気を引き締めているのだ。

今回は、柚希の事を御師匠様たる、正園が見る事になっている。流石に、三歳児を置いて仕事は出来ないし、何より、柚希には力の使い方を正しく覚えてもらわねばならない。悪用等、絶対にさせてはいけない力なのだ。

玄関では、瑞希が暖かい廊下で、ちょっとぼんやりしていた。お昼寝には、最高のシチュエーションなのだが、勿論、これからお客様が来るため、気を引き締めている最中である。

と、人の気配がして、タイミング良くチャイムが鳴る。


「ようこそ、武山様、御待ちしておりました」


丁寧に頭を下げた瑞希に、武山と呼ばれた中年の男性は、生真面目そうな顔を綻ばせる。


「やぁ、お世話になります」


礼儀正しく、コートを脱ぎ、頭を下げる武山様は、まだ数回の方だが、感じの良い人で、幼い瑞希にも丁寧に接してくれる方である。


「ご案内致します」


だからこそ、自然と瑞希の対応も丁寧になる。何度かの廊下を曲がり、着いた神殿では、皆が勢揃いして待っていた。


「ようこそ、武山さん、御待ちしておりましたよ」


大先生の歓迎の言葉に、武山さまは静かに頭を下げた。


「こちらこそ、突然の依頼、申し訳ありません、どうしても気になる事があって・・・」


武山さまは、初めて不安そうな顔を見せた。気になる何かがあったのだろう。


「どれ、では拝見しましょう」


穏やかに好々爺とした顔で、大先生は武山様の手を取る。今日の補佐は良太郎が勤めており、御師匠様と斎、瑞希は見学である。柚希は御師匠様の横で、よく分かっていないようだが、真面目なところだと感じているようで、素直にちょこんと、瑞希と同じ薄い座布団に座っていた。理由としては、瑞希と同じであり、最初座ったら、コロンと転がってしまったのだ。バランスが上手く取れないらしい。転がって、キョトンとした姿が可愛かった。

なお、瑞希が隣で仲間が出来たと、密かに喜んでいたのは誰も気付いてなかった。誰もが柚希をガン見していたからである。


「ふむ・・・厄介な糸が出てますなぁ、絡んでおるしのぅ」


武山さんの指からは、カラフルな糸が沢山伸びており、かなり顔が広い事が分かる。その中に、明らかに黒い糸が数本混ざっており、それが周りの糸を巻き込んで、絡んでいるのである。


「最近、新しいお客様か、取引先が出来ましたかな?」


大先生の問いかけにも、武山さんは真面目に答えていく。直ぐに浮かんだのか、即答であった。


「はい、新しい取引先があります・・・知り合いからの紹介なので、無下にも出来ず・・・かと言って、信頼はまだ出来ないので、困っていまして」


苦々しいという顔である。知り合いの顔を立てているため、切るにきれない・・・という複雑さがあるらしい。


「フムフム・・・悪い縁は切りましょう、それがこの糸かは分かりませんが、良き方へ向かうかと思いますよ」


「ありがとうございます、最近、取引先とのやり取りで、色々ありまして・・・」


「人間関係は難しいですからなぁ」


ウンウンと穏やかに聞く大先生に、武山さんもポツリポツリと最近の事を話始める。勿論、社名や詳しい話は無いが、取引先とのやり取りにかなり、疲れている様子だった。

なお、柚希は大人しくしていたが、ついに船を漕ぎ始めたので、御師匠様と静かに退場している。だから、この場には見習いの二人が静かに、手元を見ていた。


「・・・いや、お恥ずかしい、すっかり私ばかり話してしまって」


「ご気分が晴れたようで、良かったですよ、糸もほどけましたし、悪い縁は切りましたからな、しばらくは安泰ですぞ」


「ありがとうございます!」


嬉しそうな武山様は、次に約束があるらしく、かなり忙しいようで、時計を確認しながら、帰っていった。


「ふぅ・・・流石に、商売人の糸は多いのぅ、目がチカチカするわい」


「確かに、今日の方のは、カラフルでしたね・・・」


近くにいた良太郎も見えていたらしい。少し、疲れた様子だ。

見学していた斎も、瑞希も、色とりどりの糸には、かなり驚いたから、帰ってからホッとした。未だに、目がチカチカするのだ。二人も。


「凄いカラフルだったね」


「うん、凄かった・・・」


ついつい、二人も溢してしまうのだった。

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