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お待たせいたしました!!

可愛い子供達を、今年も宜しくお願い致しますm(_ _)m

しばらく、会話をしていた女性だが、時計を確認すると、新しい子をくれぐれも宜しくとお願いして、小さな子に何やら言ってから、中年の女性は何枚かの書類と共に、帰っていった。どうやら、施設の人か親戚の人らしいのは、会話で斎も分かった。瑞希は隣で、歓喜しているので、斎はスルーである。


「話の分かる方で良かったわい」


どこか、一仕事を終わらせた様子で、大先生は苦笑いである。やはり、この仕事上、説明が難しいのである。


「可愛がっているようでしたね」


先生も、優しい表情である。小さな子は、よく分かっていないようで、キョトンと辺りを見ていた。先程の女性が帰っても、泣かないのは偉い。もしかすると、気付いてないのかもしれないが。


「瑞希、斎、この子は今日から、ここに一緒に住む、柚月ゆづきよ、二人とも仲良くしてね」


御師匠様に紹介されたのは、3歳くらいの中性的な顔立ちの子で、同年代の子よりも小さく見えた。着ているのも、茶色のシンプルなセーターに、ベージュのズボン。髪も短めだが、よく似合っている。しかし、性別が今一分からない。


「御師匠様、柚月ちゃん? くん?」


間違えたら失礼だから、一応確認した瑞希である。斎も気になったようで、チラチラと御師匠様を見ていた。


「フフッ、どっちだと思う?」


質問を質問で返されてしまった。結局、瑞希はうーん、うーん、と、一生懸命考えている。その可愛らしさに、大人たちは優しく見守っており、近くに居た斎は、埒が明かないので、普通に本人に聞く道を選んだ。


「こんにちは、僕はいつきって言うんだ、君は自分の名前は言える?」


片膝をついて、視線を合わせた斎に、柚月は素直に元気いっぱいに頷いた。


「うん! ゆじゅき! ちゃんちゃい!」


発音が若干怪しかったが、上手く伝わっている。というよりも、仕草が可愛くて、大人組は陥落した。各々が、頭を下に向けたり、天を仰いだり、手で顔を隠したり・・・、普段は見せない、ちょっと危ない一面の気もするが、真剣に悩む瑞希は気づいていないし、斎は柚月を見ているため、此方も気付いて居なかった。


「年まで言えるんだ、柚月は偉いね! 柚月は、男の子? 女の子?」


斎は瑞希の幼い頃も面倒を見ていたし、お客様が連れてくる小さな子も見るため、面倒見は良い方である。


「うにゅ? ゆじゅきは、おとこのこ!」


「そっか、男の子か・・・・・瑞希、男の子だって」


柚月の頭を撫でながら、瑞希に言えば、ちょっとだけ頬を膨らませて不機嫌な瑞希が居た。どうやら、当てたかったらしい。


「不機嫌にならないの、柚月? 僕はいつき、この子はみずきだよ、言えるかな?」


「にゅ? いちゅき? みじゅき?」


全く発音が出来ていなかった。しかし、首を傾げて一生懸命、発音する姿があまりにも可愛くて、近くに居た瑞希も陥落した。下にうずくまり、奇声を上げ始めた。なお、大人組はすっかりメロメロである。・・・・・幼児、恐るべし、かもしれない。


「うーん、まだ難しいかな? じゃあ、にーに、ねーね、なら言える?」


斎の問いに、瑞希がいち早く復活した。


「にーに? ねーね?」


グフッ! という、早速、子供に聞かせてはいけない音が響いたが、斎も瑞希も、何となく予想出来たため、無視である。今は、柚月に、呼ばれているのだから。


「偉いね、柚月!」


瑞希は既にデレデレである。顔がかなり、だらしない。斎は変わっていないが、かなり、心が揺さぶられていた。幼子の不意打ち程、心臓に悪いものはないのかもしれない。


「先生と大先生、御師匠様って、呼べるかな・・・?」


斎が不安そうに、そう柚月に聞いたら、元気いっぱいのお返事が返ってきた。


「あいっ! ちぇんちぇ、しちょうさま?」


グフッ! という声が、また聞こえてきた。どうやら、二人の心へ、見事に突き刺さったらしい。


「無理みたいだし、こうなったら、じーじ、パパ、ママ

かな?」


果たして、これでいいのか、分からなかったが、大人組を見れば、すかさず素知らぬ顔で、こちらを見ていた。どうやら大人組としてのプライドが、萌えに勝ったらしい。


「斎、それは駄目よ、ちゃんと大先生、先生、御師匠様で統一してちょうだい」


どうやら、そこは駄目らしい。確かに、本当のご両親に失礼だなぁと、斎も納得した。


「でもでも! 私と斎は、にーにと、ねーねで、いいでしょう?」


瑞希はすっかり、ねーね呼びが気に入ったようで、すがるような視線で、御師匠様にねだる。


「・・・・・はぁ、仕方ないですね、この子はまだ幼いようですし、二人はいいでしょう」


瑞希のおねだりが効いたのか、違うのか、そこは分からないが、諦めたように、御師匠様は許可を出した。


「やったぁー! 柚月、ねーねとにーにって、呼んでね!」


「あい!」


可愛い光景に、場にほっこりした空気が流れる。


「どれ、まずは準備した柚月の部屋じゃが、小さいしのぅ・・・しばらくは、二人の部屋じゃな」


二人とは、先生と御師匠様の夫婦の部屋だ。


「そうですね、小さい子ですし、斎は大丈夫でしたけど、瑞希はついこの間まで、一緒に寝ていましたし」


御師匠様の懐かしい思い出として語られた、当の本人である瑞希は、恥ずかしそうだ。小学生に上がるまでは、瑞希は一人で寝れなかった。瑞希は五人兄弟姉妹の真ん中で、いつもは兄弟達と一緒に寝ていたのだ。それが、能力もあり、此方へ一人で来たため、当初の瑞希は、慣れない場所や、環境が変わって、夜寝れなくなってしまったのだ。


「今は、一人で寝れるもん・・・」


「怖い夢見た時は、御師匠様の所に行くじゃん」


斎に珍しくからかわれ、瑞希はフンッと、顔を背けた。柚月は分かっていないのか、辺りをキョロキョロしている。それを見ていた大先生が、良いことを思い付いたようで、手を打った。


「瑞希、斎、準備もあるから、柚月と建物探検して来たらどうじゃ?」


探検というキーワードは、小さな子には楽しい物に映ったらしい。柚月の目が期待でキラキラしている。


「たんけん!」


「うん、じゃあ、行こうか」


「しゅっぱーつ!!」


三人の子供達は、楽しそうに部屋を出た。

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