表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
特務捜査官になったのですが、イカロスって何ですか?  作者: 伊吹 ヒロシ
第一章 二度目の小学生
9/33

8.久々の出勤

 ――警察庁公安。

 事件の翌日、桜さんが学校に連絡して欠席した。

 事件の翌日のため配慮されたと思ったが、職場から呼び出されたのだ。

 私は久々というより、二度目の出勤をする。

 今度は桜さんに連れられたが、途中で桜さんに扉の開け方を教わった。

 私は脳内内蔵型のデバイスもあるため、そちらの方でも身分証明が可能である。

 昨日は本郷警部に預けた際、代わりのデバイスを借りたが、表沙汰に出来ないためであった。

 兎も角二度目の出勤をした私を課長だけでなく、初めて見る顔ぶれが出迎える。

 「駿河さん、おはよう。昨日は大変でしたね。取り敢えず怪我がなくて良かったです」

 「はい、ありがとうございます。それから色々とご迷惑を掛けてすみませんでした」

 私は労わりの声を掛けてくれた佐伯警視に頭を下げた。

 「まあ、初めから上手く行きませんよ。前田警部補も新人の頃はやらかして、本郷警部に良く叱られていましたよ」

 私は思わぬことを知らされ、素早く桜さんの方に顔を向ける。

 「課長、昔の話をしないで下さい。それに、私にも上司としての立場がありますから……」

 桜さんが頬を染めて口篭り、奥の席では本郷警部が微笑を湛えている。

 そこへ佐伯警視が話を変える様に咳払いをした。

 「……オホン。余談はここまでにして、自己紹介を始めましょう。主任の本郷警部まで挨拶を済ませているので、順にお願いします」

 本郷警部の向かいの席の女性の方が席を立つ。

 「佐藤茜さとうあかね警部です。主任の次の席順だということを理解して欲しいわ。ちなみに、私の相棒は次ぎに自己紹介するから……駿河さん、よろしく」

 「は、はい、よろしくお願いします……」

 私は佐藤警部の男っぽい迫力に圧倒された。

 佐藤警部は女性にしては身長が高く、痩せ型で切れ長の目をしている。

 そして話し方が些か好戦的に感じられ、私は縮こまる様に頭を下げた。

 佐藤警部が再び腰を下ろすと、佐藤警部と桜さんの間に座っていた男性が立ち上がる。

 「初めまして、唐沢昇からさわしょう警部補です。のぼるという字でしょうと読みますが、昇る朝日の様に輝いてます。ちなみに、佐藤警部と一緒に行動してますが、佐藤警部の言い方はきついですが怖くないから安心して……! アイタ!」

 唐沢警部補が声を上げたが、隣から薄っすら頬を染めている佐藤警部に何かされたのだろうか。

 「余計な事は言わなくてもいい。とっと自己紹介をしなさい」

 「はい、僕は駿河さんの相棒の前田警部補のひとつ先輩なんだよ。困ったことがあったら何でも相談してね」

 「は、はい、こちらこそよろしくお願いします……! 私は駿河心、十七歳、高校二年生です。遅くなりましたが、よろしくお願いします」

 桜さんのひとつ先輩というのが気になったが、それ以外はチャラいという印象しか浮かばず、ぎこちない挨拶を返したが。

 ふと自分が自己紹介していない事に気づき、慌てて自分の名前を名乗ったのだ。

 「……オホン。駿河さん、取り敢えず席について下さい。もう分かったと思うけど、基本的に二人でコンビを組んで仕事をしています。後二人いるけど、なかなか全員揃わなくてね……。基本的に月曜日の朝は、全員集まることにしています。駿河さんは学校があるから仕方ないですが……それから、ここの部署は技術対策課で、科学技術系の問題に対して治安を任されている所です」

 佐伯警視の説明を聞きながら、私は桜さんの隣に座り色々と納得して頷き。

 「分かりました。それで、私に潜入捜査の話が回ってきたんですね。それに、今回の事件で、私と桜さんが捜査した理由も分かりました。私は小学校の中に入っただけですけど……」

 勢い良く答え出したが、途中から恥かしくなり口篭ってしまう。

 「いえ、そうでもないです。実は疑われず中に入るのは相当難しいのです。そもそも犯罪者は、大抵周囲を警戒してますからね」

 思わず頬が緩むが、更に話は続いた。

 「それから、昨日逮捕された小学校の教諭ですが、駿河さんのお陰でデータを取れました。それから、所持していたボールペンが違法なツールだと分かりました。半径一mくらいと小さな領域ですが、強力な電磁波を発するようです」

 「あのー……裏組織みたいなのは分かったんですか?」

 「いえ、まだ詳しくは……」

 「そうですか……」

 私は苦労して頑張っても報われないものだと肩を落とす。

 「簡単に結果は出ないわ。ひとつずつ片付けていくのよ。勉強と同じで積み重ねていくの。勉強に限ったことじゃないけど」

 桜さんが私の肩を優しく叩いて励ましてくれた。

 私は桜さんを隣の席から見つめ、うっとりしているが胸の前で手を組んだりは勿論していない。

 そこへ、再び佐伯警視が咳払いする。

 「……オホン。では、色々と学んだ駿河さんに、新しい潜入先を紹介しましょう」

 佐伯警視に咳払いが癖な『オホンおじさん』というあだ名を命名しようかと思っていたら、衝撃的な事を告げられた。

 私は目を丸めて固まっていたが、口を開く

 「……あの、小学校はどうするんですか? それに、そんなに高校も休めませんよね? 出席日数も気になりますが、定期試験を受けないと受験どころか卒業出来ないんですが……」

 「大丈夫です。小学校はすぐに転校手続きをしましょう。あの騒ぎの後ですから、誰も疑いません。それに、今度は潜入期間が決まっていますから、日数もそれ程掛かりません。短期潜入です」

 狼狽する私を余所に佐伯警視が話を進めてしまう――。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ