奴隷
「お名前はなんですか?僕はイーコといいます。」
「…ライラだ。言っとくけどあたしが見せたい光景を案内し終えたら、その後は付いてくるなよ。」
「わかってます。僕は人助けのためにここに来たんですから。」
「まだそんなこと言ってんのか………この街にいる奴らが助けるに値するのか、その目でしっかり見極めな。」
ライラはそう言いながら路地のさらに奥へと俺を案内する。
少し開けた場所に出るとそこには大きなテントが張ってあった。
中から微かに声が聞こえてくる気がする。
「これは…サーカスかなにかですか?」
「ハハッ面白いこと言うねあんた。まあ当たらずとも遠からずってとこかな。そこの隙間から中が見れるから覗いてみなよ。」
テントの側面にある隙間からそっと覗いてみる。
俺はすぐに状況を理解した。
奴隷だ。
犬小屋ほどしかない檻がおびただしい数並べられている。
檻に入れられてるのは全て尻尾の生えた獣人族のようだ。
「獣人は他の種族に比べて知能が低いから1番奴隷にしやすいんだよ。優れてるのは嗅覚くらいさ。」
「…もし僕が今この奴隷全員を解放したらどうなりますか。」
「ハッ、その瞬間犯罪者の仲間入りだよ。奴隷商売は国が認めてるんだ。強盗と一緒さ。」
そこに腹の肥えた奴隷商人のような男が来て、檻から1人の獣人の女を外に引っ張り出した。
「なんでまだ食い終わってねえんだ!売られる前に餓死してやろうってか?ふざけるな!!」
獣人が入っていた檻の中にはパンのかけらとその子の糞のようなものが転がっている。
男はムチで獣人の女を叩き始めた。
女はうっすらとうめき声を上げながらうずくまっている。
「あいつ…………!」
「おい!変な気起こすなよ。もうここはいいだろ。あんたに見せたいのものは他にもあるんだ。ついてきな。」
「…………………」
「こいって!おい待て!!」
ムチの破裂音が鳴り響く最中、俺は隙間からテントに入った。
やがてうめき声は止み、男も叩く手を止めた。
獣人の女は死んだ。
「欠陥品のゴミが。ぺっ。」
死体の顔に男は唾を吐いた。
その直後、俺は男の首を切り落としていた。