旅立ち
俺は週1回の父の授業を受け続けた。
魔法だけでなく座学や体術など、どれもこの世界の常識を大きく超える力を俺は持っているようだ。
6歳の頃には村1番の剣術使いであるレイを模擬戦で圧倒したし、7歳の頃には国内トップクラスの高等学園 (前世でいう大学)の予想入試問題で100点をとった。
その頃にはすでに神童だと村の中で有名になっていた。
「大いなる力には大いなる責任が伴う。」
これは大好きだったヒーロー映画に出てきた言葉。
中二病と言われれば反論の余地はないが、俺はこの言葉を繰り返し自分に言い聞かせ、世のため人のためにこの力を使うと誓っている。
そしてついに成人である18歳の誕生日を迎えた。
前々から人助けのために成人したら冒険に出たいとナイルとマリアに伝えていたが、2人も俺の才能を村で腐らせるのはもったいないとずっと思っていたらしい。
今の自分の全力がどれほどのものかは分からない。
もう10年は全力で魔法を使っていないし、全力で剣を振っていないからだ。
正直な話そこも楽しみな部分ではある。
俺が全力を出すにはこの村は小さすぎたのだ。
「そろそろ行こうかな…。」
「たまには帰ってきて顔を見せてね。その時はご馳走を用意してあげるから。」
「イーコ。お前は間違いなく天才だ。だがな、そんなことはどうだっていい。人の役に立つために冒険に出たい、その言葉を聞いた夜、俺と母さんは2人して泣いたんだ。寂しさや不安もあったが、何よりもこんなに心優しい子に育ってくれたから。イーコは俺たち夫婦の誇りだ。無茶をしてまた俺たちを泣かせたりなんかするなよ!」
そう言ったそばからナイルとマリアの目は潤んでいた。
「わかってるよ。…今までありがとう。俺、頑張るよ!
…それじゃあ……。
父さん…母さん………行ってきます!!」
俺自身も泣きそうになったが何とか堪えて村を出た。
「村からこんなに離れるのは初めてだな…。」
村を出て半日、ひらすら森の中を歩き続けていた。
村では自給自足で生活が成り立っていたため村の外に出ること自体必要なかったのだ。
すると奥から女性の叫び声が聞こえた。
急いで声の元へ走るとエルフのような耳の長い綺麗な女性が賊数人に囲まれている。
「定番のやつキターーーーー」
すぐさま助けに入り風魔法ウィンドで賊全員を吹き飛ばした。
そして女性に話しかける。
「あの、大丈夫ですか。」
グサッ