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第56話 鑑定のスクロール

久しぶりの更新になります。

 

「はぁぁぁつっかれたー!」

「お疲れ様でした」


 宿屋に戻ってきて早々に料理長に捕まりかけたけど、後で!と放置し、足早に部屋に戻ってベッドにダイブする。そんな私をシュウは苦笑いで見ていた。なんでレストランにいたはずの料理長が優勝したこと知ってるんだか。


「ほんと心臓に悪いよ、なんでお菓子の大会に国王夫妻が来てんだよ」

「王妃はかなりのスイーツ好きだったのですね。でも、リンさんの作るお菓子はどれもおいしいので仕方ないですよ」

「シュウにそう言ってもらえるのはうれしいな」


 へへっと笑うとシュウも私に笑いかけてくれる。やっとさっきの緊張感が薄れてきたよ。


「しっかし、予想外に話が大きくなったね。ちょちょいと優勝して鑑定のスクロールもらって退散するつもりだったのに」

「どう考えてもそんな訳にはいかないでしょうに…」


 シュウが呆れたようにこっちを見ていたけど、私はほんとにそのつもりだったんだよ。

 あ、そうそう鑑定のスクロール!倉庫から商品でもらった鑑定のスクロールを出す。本というよりは巻物っぽい。この世界では巻物の概念がないから本って表現してるのかな。


「読むだけで鑑定のスキルが使えるようになるんだよね?」

「そうみたいですね」


 さっそく試してみよう。巻物の紐に手をかけ中身を確認しようとすると、脳内に突然念話が入った。


『リン、そのスクロール、シュウと一緒に確認してごらん』


「はい!?」

「うわっ、リンさんどうしました?」


 今の念話はいったい誰だ?聞いたことない声だった気がする。でも私たちの名前を知ってたよね。巻物にかけた手をいったん戻し、頭の中であなたは誰?と思い浮かべてみる。


『ふふ、僕のことが知りたいならフィンドルの大聖堂においで。待ってるよ』

「ちょっ、 まっ、教えるだけ教えておいて急に消えないでよー!」


 その言葉以降、いくら呼びかけても返事はなかった。フィンドルっていうと…確かサンファイユ皇国の首都だっけ?こっちから語りかけてもこれ以上返事も無さそうだし、ひとまず謎の声の言うとおりにしてみよう。


「シュウ、このスクロールいっしょに見よう」

「えっ、スクロールって1人しかスキルの獲得ができないはずでは?」

「いいの、こっち来て」


 ぐいっとシュウの腕を引っ張り、私の近くに寄せる。近いですって言われたけど特に気にしない。巻物を閉じている紐を解き、シュルリと巻物を広げる。その瞬間、巻物が一瞬白く光り、気がつくと手に持っていたはずの巻物は消えていた。

 お互い急いでステータスを確認すると、私にもシュウにもスキル欄に鑑定がきちんと記載されていた。


「おーほんとに2人とも取得できたね!」

「なぜ、でしょうか」


 シュウから少し離れ、先程の出来事を説明する。シュウはなんとも信じ難い顔をしていたけど、実際に2人とも鑑定のスキルを取得できたわけだし、結果オーライだね。


 部屋の前に気配を感じるので仕方なくドアから顔を出す。案の定、部屋の前にはそわそわしている料理長がいて、私が顔を出すとめっちゃ笑顔で大会の優勝をお祝いしてくれた。


「おめでとう、やったな!俺はリンが優勝すると分かっていたがな!」

「料理長も協力してくれてありがとうね!」


 大会が終わったらという約束だったので、お菓子の各種レシピを料理長たちに教える。教えてほしくてみんなうずうずしてるみたいだしね。


「シュークリームは焼いている間絶対にオーブンを開けないでね。きちんと膨らまなくなるよ」

「なるほど」


 レストランの厨房でリンさんのお料理講座が始まった。今はお昼も過ぎてお客さんもいないし、ディナー帯まではお店をお休みにしたみたい。みんな各自メモを取りながら熱心に私の話を聞いている。私が各出場者お菓子のレシピやアレンジの仕方などをひと通り説明すると、あっという間に要領を得て完璧なお菓子を作り上げていた。さすが料理人なだけあるなぁ。


「おおっ、これでいつでもこのお菓子が食えるな!リン、本当にありがとうよ」

「ううん、その代わり私にも作ってね!そういえば、料理長さんこれから忙しくなるんじゃない?」

「え、なんでだ?」

「ストローム商会で商品化するらしいよ、私のお菓子」

「はぁっ!?」


 あれ、聞いてなかったの?大会に国王夫妻が来ていて商品化を急かされていることを簡単に説明すると、料理長がおもしろいくらいあわあわし出した。


「そんなことになっていたのか。これは速く会長に伝えないとな。よし、リンとシュウ、今から俺と一緒に会長の所に行くぞ」

「マジっすか」


 有無を言わさず料理長に引っ張られながら私とシュウはストローム商会に向かうことになった。街を歩いていると、変に注目されているされている気がする。大会の衣装のまま着替えてないし、私がさっき大会で優勝した人だってバレてるのかな。みんな会場で見ていたのか、私のことを知っているようだ。


 道行く人に手を振られるので笑顔で振り返しながら、ストローム商会まで歩いていく。宣伝、大切。ロームさんにはこれから迷惑かけそうだしな。


 ストローム商会に私たちが入っていくのを見た街の人たちは、いつになったらさっきのお菓子が食べられるのかとストローム商会の店員さんに詰め寄っていた。店員さん、なんかごめん。

 定番となった商談室で少し待つと、ロームさんがバタバタと部屋に入ってきた。


「リンさん、優勝おめでとうございます。もうひっきりなしにあちこちから連絡が来ていますよ!」


 ああ、私がストローム商会で販売するって大会で言ったからね。もうそんなに連絡きてるんだ。ロームさんは興奮した感じでとてもテンション高い。ほんとに商売が好きなんだろうな。

 シュウが国王夫妻との話し合いについてロームさんにざっと説明する。ロームさんはとても驚いていたが、高かったテンションがさらに高くなり、私の手を掴みかかったが、避けたらシュウの手をガッチリ掴んだ。ロームさんは、そんなことは気にせず、感動で涙を流している。そんなにですかい。


「その話が本当なら、きっと王家御用達ロイヤルワラントを貰えることでしょう。リンさんとシュウさんに出会えたこと、神に感謝いたします」


 表現が重いなぁロームさん。でも、王家御用達というのはほんとに名誉なことで、王家が認めたごく一部の商品しか受けられない称号らしい。王家御用達の称号を得た商品を販売できるというのは商人にとって夢であり、目標であるとロームさんは熱く語っている。


「ささ、そうと決まれば早く話を詰めなくては!ベニア!」

「はい、会長」


 バタバタとロームさんとベニアさんが書類を出して何か書いたりしてる。大会で優勝して鑑定のスクロールをゲットするっていう本来の目的は達成したけど、目に見えて慌ただしくなりそうなストローム商会に、まだまだこの街を出る訳には行かなさそうだ。




今後も不定期で更新して行く予定です。よろしくお願いします。

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