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第6話 グリーンバードで肉パーティ

 

 村長さんはリコッタ村についてざっと説明してくれた後、この世界の常識についても教えてくれた。


 まず、この世界は魔物が蔓延るガチガチのファンタジー世界だった。人間と共存している魔物も一部いるが、基本的に大体の魔物は人間に害をなす為討伐対象らしい。世知辛い世の中だ。

 魔物は危険度によってS〜Eランクに分けられているらしく、危険度が高ければそれだけ強いということらしい。

 一般の人がヒーヒー言いながらなんとか倒せるのがEランクらしい。

 つまり、さっきのCランクであるグリーンバードは農家のおっさんたちじゃ束になっても勝てない相手だったってことだね。そりゃ恩人だわ。


 ふと、異世界に行く前にプレイしてたCAののことを思い出してみる。

 あれにも確かに仲間と協力してクエストクリアしていくRPGモードみたいなものがあったけど、メインはやっぱり対人戦だった。

 それもあって、もっぱら対人戦メインでしかプレイしてなかったけど、CAのRPGモードはこんな世界観だったっけ?

 いや、違う。

 CAのRPGモードはゾンビや吸血鬼みたいなブラックホラーな世界観がベースだったような気がする。

 それに、クエスト自体の難易度はあったかもしれないけど、魔物自体にランクなんて無かった。魔物の強さによって討伐報酬が変わることはあったけど。

 つまり、この世界は特にCAと関連しているものではなく、たまたまCAのプレイ中に転移しちゃったから私たちはそのままCAのシステムを引き継いでるってことなのかな?


 うーん、これ、考えても答えでないよね。

 村長さんが「お前話ちゃんと聞いてんの?」みたいな顔で私を見ていることに気づき、ちょっと飛んでいた思考を村長さんの話に戻す。


「冒険者志望って話だからついでに話しておく。冒険者になるにはある程度大きな街にある冒険者ギルド行って登録するといい」

「なるほど、それで冒険者になる資格が得られるのですね」


 冒険者ギルド!ファンタジーの定番だね!


「ああ。さすがにこんな小さな村にはそんな立派なもんねぇからな。後で冒険者登録できるような大きな街までの行き方を教えてやるよ…なぁ、ずっと聞きたかったんだが、お前らのその武器ってなんだ?魔法か?」

「助けてもらった恩人だし、詮索はしたくないんだがよ」と付け足して、村長さんが遠慮がちに聞く。


 この世界には銃、って存在しないのかな?

 ていうかやっぱり魔法あるんだ。


「あのような武器、今まで見たことないですか?」

「少なくとも、俺はねぇな。そんなに多くはないが、今までもこの村に冒険者が来ることはあった。そいつらは普通に剣とか杖を持っていたな。弓などは見たことあるが、そんな強い飛び道具は初めて見た。」

「なるほど、この武器は俺たちの故郷の秘密でもあるんで、申し訳ないですが詳しくお教えすることはできません」


 シュウが少し頭を下げる。武器のこと、そういう設定にしたのね。まぁ、あながち嘘を言っているわけでもないし、無難なラインかな。


「さっき言った通り、詮索したい訳じゃねぇから気にしないでくれ。ただ単に俺が気になったってだけだしな」


 ぐぅぅ。

 何となく気まずい雰囲気でシーンとする中、私のお腹が鳴った。やめて、2人とも同時にこっち見ないで。

 仕方ないじゃん、この世界に来てまだ何も食べてないんだから。シュウ、笑ってんじゃねぇ、はっ倒すぞ。


「ははっ、姉ちゃんは腹が減ったのか。ちょっと待ってろ」


 村長さんが笑いながら外に出る引き戸をガラッと開けると、そこにはさっき集まってた農家のおっさんたちがいた。


「おめーら、どうしたんだ」

「村長!俺らもアイツらになんかお礼したいって思って色々持ち寄ってきたんだ」


 そう言って、各自色々持ってきてくれた農家のおっさんたち。それを見て、さっきのグリーンバードのお肉があるじゃん!とピコーンとひらめいた。


「そうだ!シュウ、さっきのグリーンバードのお肉って食べられるかな?」

「鳥だからおそらく食べられるでしょうが…一応聞いてみた方がいいですね。村長さん、先程のグリーンバードの肉は食べることができますか?」

「おう、たいていの魔物は食うことができるぞ。グリーンバードなんてCランクだし高級品よ」


 そんないい肉なんだ。大きい肉だったし、この村に少しでも滞在するなら、村の人たちと交流と深めるために、お世話になりますという意味も込めてみんなで食べるのがいいよね!


「ねえ、シュウ!このお肉、みんなで食べようよ!」

「はぁ?まぁ、たくさんあるのでいいとは思いますが」


 私のそんな提案に、シュウは怪訝な顔をしながらもそれを同意してくれた。


「おい、いいのか。さっきの話聞いてなかったわけじゃないよな?」

「いいんですよ!村長さんやみなさんにはこれからお世話になるんだし、おいしいものはみんなで食べた方がもっとおいしくなりますよ!」

「そうですね、良ければみなさんで召し上がりましょう。ここにいる方々以外も食べられるように、この村の中心部に大きな焚き火でもくべて、そこで肉を焼きましょうか」

「それいいね!さすがシュウ!村長さん、いいかな?」

「いいも何も、そんな高級肉が食べられるなんてこの先一生ないだろうし断る理由もねぇよ。おい、お前らももちろんいいだろ?」


 村長さんは話を聞いていたであろう外にいる人たちにも話を振る。

 その瞬間、グリーンバードを討伐した時よりも、もっと大きな歓声があがった。

 おぉー、なんだかわからないけど喜んで貰えるならよかったよかった。

 さっそく、村長さんに村の中心部に案内してもらい、各家から肉を焼くための焚き火に必要な枝や薪を持ってきてもらう。

 ある程度と大きな円に配置した薪や枝に火をつけ、その周りに枝を串にして突き刺したグリーンバードの肉を並べていく。


 枝串に刺さったグリーンバードを焚き火で焼くというのはなんだかとても原始的な光景だが、焚き火の周りにはこの村の住人全員来たんじゃないか?と思うほど人が数十人は集まっていた。

 みんな目を輝かせ、今か今かと肉が焼きあがる瞬間を待っているようだ。子供たち、汚いから涎は拭きなさい。


「おっ、そろそろいいな。ほら、姉ちゃんと兄ちゃん。討伐したのはアンタらなんだから、1番に食いな!」


 そう言いながら、村長さんが結構大ぶりの肉を私たち2人に渡してくれる。

 肉を枝串に刺して焼いた後、塩をふりかけただけというとてもシンプルな料理だが、出来立てなだけあってとても食欲をそそる。


「いっただきまーす!もぐもぐ…なにこれ、おいしすぎない?」


 枝串の先を持って豪快にかぶりつくと、口の中に上質な脂がじゅわっと溢れてくる。肉質は驚くほど柔らかい。

 塩のみというシンプルな調理法だからこそよくわかる、このお肉、めっちゃ上質なお肉だ。さすが高級品だと言うだけある。

 横を見れば、シュウは無言でもくもくと食べている。どうやら美味しかったみたいだ。


「ほら、おめーら!きちんと並べよ!」


 村長さんが仕切りながら、みんなに肉を配っていく。配られた肉、みんなすごい勢いで食べてますな。おいしいもんね、この肉。


「うまっ!こんな肉初めて食ったぜ」

「生きてた良かった…」


 各地で感嘆の声が上がってる。その光景を満足気に見ていたら、ふとパーカーの裾を引っ張られる。


「お姉ちゃん、こんなにおいしいお肉初めて食べたよ!変な格好してるけどすごいんだね!」

「少年、変な格好は余計だ。でも、良かったね。私もみんなに喜んでもらえて嬉しいよ」


 ポンポンと寄ってきてくれた少年の頭を撫でると、少年の母親であろう人が駆け寄ってきた。


「すみません、うちの子が失礼を」

「いえいえ、君は私にお礼を言いに来てくれんだよね?」

「そうだよ!お姉ちゃん、ありがとう!」

「私からもぜひお礼を。この村はこんな辺鄙な場所にあるので、肉なんてあまり口にする機会もないのです。ましてやこんな高級肉を。本当にありがとうございます」


 母親、少年が揃って私にぺこりとお辞儀してくれた。良い親子や。まぁ、実際に討伐したのはシュウなんだけどね。


「討伐してくれただけじゃなく、こんな高級肉を俺たちにも分けてくれるなんて、変な格好してるが本当にいいヤツらだな!」

「ありがとうよ!」


 その親子を皮切りに、食べることに夢中だった他の人たちも口々にお礼を言ってくれた。

 なんだかほんわかした気持ちになってると、シュウが村の女の人に囲まれてるのが目に入る。イケメンすげーな。


 手元に少しも残ることなく、グリーンバードは村の人たちと私たちで食べ切ってしまった。



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