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第53話 1次審査の結果

 

 時間つぶしの依頼も終えて、そういえばワイバーン頼んでいたじゃんと思い出した。ロームさんに聞いたらもう解体は終わっているとのことだったので、ストローム商会の解体所に受け取りに行く。


「ワイバーンの解体ですね、終わってますよ。久々の大物に腕がなりました!はいこれ、預かっていた代金と肉です」


 あらかじめ私とシュウの2人分に分けてくれたみたいだ。ドスンとと大きな袋を私たちに手渡してくれた。ちょっと待って、なにこれ、すごい重いんだけど一体いくら入ってるの…?私とシュウがお金の入った袋をもらって唖然としていると、解体してくれたおにーさんが内訳の説明をしてくれた。


「ワイバーンの皮が小さめの5体が各金貨80枚、大きめのが金貨120枚で全部で金貨520枚、魔石が全部で金貨950枚。合計で金貨1470枚を2等分してお渡ししました!今回は討伐報酬も込みで少し高めに査定しましたよ!いやぁ、傷も少なくていい素材が取れました!俺からも感謝しますよ!」

「そ、そんなに…」

「金貨1000枚を越えるような大きい取引は久しぶりです。まぁ、ワイバーンすら珍しいのにそれを6体もですもんね」


 ワイバーンはさすがAランクの魔物で、各素材とも思っていたより高値がついた。討伐報酬込みとはいえ、想像以上の金額だ。もう皮の加工が始まっていて、買い手も名乗りをあげているとかなんとか。ワイバーンの皮があれだけするのに防具ともなると相当な値段しそうだけど、それを買いたい人はどれだけお金持ちなんだろうね。


 今回のお金とワイバーンの前からの依頼報酬とか解体のお金を合わせたら私たちも相当なお金持ちなんだろうけど。っていうか、サベージブルの分のお金も入るからこれからまだ増えるのか。うう、前世でもこんなにお金持ってなかったからなんか怖いな。

 今までもあんまりお金使うことなかったから貯まっていく一方だし、今度何かに使えたらいいなと思う。お金は天下の回りものっていうし、ずっと持ってても仕方ないからね。


ワイバーンの肉も6体分となると相当な量だった。これだけあれば何回肉パーティができるんだろう。今のところやる予定もないけどさ。解体のおにーさんに食べやすい大きさにその場で捌いてもらい、私とシュウの倉庫にしまった。


 解体のお金とお肉をもらって、大会の1次審査の結果が出るまでルズベリーの街でのんびりと過ごし、ついに運命の日がやってきた。


「うう、緊張するね…」

「リンさんなら大丈夫ですよ」


 1次審査は料理ギルドの前に掲示板が立てられ、そこに番号があれば合格となる。掲示板前は多くの人で溢れかえっていて、結果を見て喜ぶ者、悲しむ者と多種多様だった。人と人の合間を縫って掲示板に自分の番号があるか探す。74、74…


「…あった!シュウ、あったよー!」

「やりましたね!おめでとうございま…うわっ!?」


 喜びのあまり思わず横にいるシュウに抱きつく。シュウが絵を書いてくれたおかげでもあるし、ほんとに感謝だ。

 すぐにシュウから離れて、足早に料理ギルドの中へ向かう。シュウがぼーっとしてて全然来ないので、早く早くー!と少し大きな声を出したらハッとしたように慌ててついてきた。


「おめでとうございます。最終審査は3日後です。材料は各自で全て揃えてもらいますので、ご用意をお願いします」

「わかりました!」

「最終審査は調理過程、味、見た目で判断されます。一般の審査員からの票も大きなポイントなので、皆さん毎回色々と工夫してこられますよ」


 ふむ、一般の審査員たちはパフォーマンスに重きを置いている人も少なくないようだ。あとはもう単純に味の好みだよね。私のシュークリームはその点、みんな見たことないものだろうしいけるのかな?


 料理ギルドの中には1次審査に合格したであろう人が数人いた。受付のおねーさんが言うには最終審査は5人程度で行われるらしい。私は5日前に申し込みをして74番だったから、今回の大会は結構競争率激しそうだね。


 料理ギルドを出て、ロームさんに報告するためストローム商会に顔を出す。ベニアさんにいつもの商談室へと案内してもらい、ロームさんの到着を待った。ここで出てくる紅茶は相変わらずおいしいなぁ。


「リンさん、1次審査通過おめでとうございます。さて、最終審査ですが、どんな衣装で出るのか決まっていますか?」

「衣装ですか?」

「ええ。今回は節目の大会ということで観客も多いですし、大きなお祭りのようなことになると思われます。ですので、観客や一般の審査員へのパフォーマンスのひとつに、普段より目立つ衣装を着てこられる方も多いですよ」


 そんなことまで考えてなかった。どうしよう、最終審査コンテストまであと3日しかないよ。私が思案していると、ロームさんはニコリと笑いながらベニアさんを呼んだ。そのままベニアさんにボソボソと何か伝えると、ベニアさんは頷いて私たちに着いてくるように言ったので大人しく着いていく。

 案内されたのはストローム商会のすぐ近くにある大きな服屋さんだった。ストローム商会が経営する服屋さんらしく、服屋の店員がベニアさんに深々とお辞儀してる。ロームさん、手広くやってんだなぁ。


「リン様は3日後の最終審査に出られます。その衣装をいくつか見繕ってもらいたいのです」

「かしこまりました。リン様、こちらへ」


 ベニアさんが店員さんにひと声かけると、あれよあれよという間にフィッティングルームへと連れて行かれる。持ってきてもらった服を自分で着ようとするけど、お任せ下さいと言い切られてなされるがまま状態だ。


「こちらはいかがでしょうか?」

「いえ、リン様にはこちらの方が…」


 店員さん2人であーでもないこーでもないと相談した結果、ようやく決まったようだ。

 着せてもらった第一印象は、赤ずきんちゃん?だった。赤いパフ袖のワンピースに、白のレースとリボンがたくさんあしらわれた可愛らしいエプロンドレス。これ、なんで丈が膝上なんだろう。頭にはリボンとお花の飾りがついた赤いベレー帽っぽい帽子。靴はそのまま今履いているロングブーツかな。

 防具も可愛いデザインのものだし、こういうの着られるのはうれしいんだけど、お菓子大会にこんなんでいいの?


「まぁ、たいへんお似合いです!」

「リン様、とってもお可愛いです!」


 ああうん、ありがとうございます。ていうか、なんでこんなの店に置いてあるの?


「おや、可愛らしいですね。赤は目立ちますし、それでいきましょう」

「リンさん、それで出るんですか!?」


 シュウがこっち見て固まってる。うん、私もそう思うけどベニアさんもこれでいいとか言ってるし、もう何も言えないよね。

 そのままの格好でロームさんを訪ねたけど、これで問題ないとか言われちゃうし。

 お金を払おうとしたら、ロームさんがこれは私からのプレゼントだからお金はいならいと言ってくれた。あれだな、これで私が優勝したらいい宣伝になるもんな。ストローム商会で売り出される予定のシュークリームのね。さすが商人ですわ。


「リンさん、さっきは驚いて何も言えませんでしたが、とっても可愛いです」

「ありがとう。確かに衣装はかわいいよね」


 いったん宿屋に戻ろうと街を歩いている最中、シュウが意を決したように私を褒めてくれる。別に無理に褒めなくてもいいからな?


 その後、衣装も決まったしあとは最終確認とクロカンブッシュの試作だ。レストランの厨房をお借りして、シュークリームをひたすら作ってはタワーのように積み上げていく。バランス難しい…

 当初は若干険悪だった雰囲気もどこへやら、今となってはすっかり打ち解けた料理長や料理人さんたちと、意見を出し合いながら試作を進めていった。


 そうこうしているうちに、あっという間に最終審査の日が来てしまった。




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