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第44話 移動の途中で

 

「俺たちが見張りをするから、リンとシュウはゆっくり休んでくれ」


 もごもごと倉庫から出した豚肉のステーキ肉を挟んだパンを食べていたら、ドミニクさんがそう言ってくれた。昼間のお礼の意味合いもありそうだし、ここは素直にお言葉に甘えよう。


「リンちゃん!寒くない?なんか飲む?」

「ううん、大丈夫だよ」


 私が治した元片腕のティニーさんがなんだか甲斐甲斐しく世話を焼いてくれようとしてる。とても恩義に感じてくれてるみたいなのはいいんだけど、ちょっと重いよー。


「リンさんには俺がついてるんでお気にせず」


 シュウがピシャリとティニーさんをシャットアウトする。ティニーさんはシュウに食い下がっていたけど、ドミニクさんに一喝されてすごすごと引き返していった。


「うちのがすまねぇな、悪いやつじゃないんだが」

「リンさんに手を出そうなんて不届き者、きちんと管理しておいてくださいね」

「ははっ、手厳しいな。わかった、そうするよ」


 すまなかったな、とドミニクはんも持ち場に戻っていた。突然ひゅう、と風が布を敷いてあるだけの地面に座っている私たちを吹き抜けていき、思わずぶるりと肩を揺らす。昼間は暖かかったけど、やっぱり夜になると少し肌寒くなるね。


「寒いですか?」


 バサッと自分のローブを私の肩にかけてくれるシュウ。


「ありがとう、シュウは寒くない?」

「俺はリンさんが寒くなければそれで」


 なにそれ、なんだかんだ言ってシュウも寒いんじゃん。シュウの肩にローブを返す。シュウはなんで?みたいな顔をしていたけど、返したローブの中に潜り込んでシュウの足の間に座り、ローブから顔を出す。


「り、リンさん!?」

「ふふ、こうすればふたりとも暖かいよ」

「近いです近いです…!」


 シュウは何故かあわあわと焦ってるけど、シュウのローブの中はすごく暖かいし、なんかいい匂いする。心地良さに微睡んでいると、このまま寝てしまいそうになってきた。


「ねむくなってきた…」

「この状態でですか!?」

「うん、このままねちゃダメ?」

「ダメじゃないですけどダメです!」


 どっちだよ。ぐだぐだ言っているシュウを反転して押し倒す。そのままローブに潜って、シュウを抱き枕にして寝転んでいると、いつの間にか寝てしまった。


「ちょ、リンさん!?ダメですって!…寝てるし!」


 朝になり、暑くて目が覚める。なんでこんなに…と思ったら目の前にシュウの顔。そっか、昨日シュウを抱き枕にして寝たんだっけ。それにしても、なんか幸せそうな顔で寝てんなぁ。動くと起こしちゃいそうなのでじっと顔を見ていたら、急にシュウの目があいた。


「おはよ、起こしちゃった?」

「おおおおはようございます!?」

「なにキョドってんだよ」


 慌てた様子のシュウを笑いながらローブから出る。うーん、野宿にしてはよく寝られたかな。ぐぐーっと手を上にあげ、身体全体を伸ばす。シュウも飛び起きて髪の毛を整えてる。


「おっ、リンたちも起きたのか。しかし、恋人で無いとはいえずいぶん仲がいいんだな」


 ニヤニヤしながらドミニクさんが顔を出す。うーむ、ドミニクさん、なんかお節介な親戚のおじちゃん感あるな。


「昨日は少し寒かったからね」

「そういうことにしておくか、ちょっと前にリンを起こしに行ったティニーのやつが呆然として帰ってきたから何事かと思ったぜ」


 むぅ、言い訳だと思われてるな。ほんとのことなのに。ケラケラ笑いながらドミニクさんが今日の予定を教えてくれた。

 今日はこのままルズベリーへ向かい、順調に行けば昼前くらいには着くそうだ。もともと馬車で1日のところを運悪くワイバーンに襲われちゃったから次の日にずれ込んじゃったらしい。


「日程は遅れたが、色々戦い方の参考になったぜ。リンがワイバーンの顎を蹴り上げたのには笑ったけどな」

「あの状況であれ以外の対処法があれば教えてほしい…」

「ははっ、確かにな!」


 笑いごとじゃない。あいつほんとに硬くて痛かったんだから。私たちの武器のことも聞きたそうにしてたけど、軽々と武器やスキルなどのことを尋ねないのが冒険者の暗黙の了解なのか、直接聞いてくることはなかった。


 馬車に乗り込み、出発する。そういえば、ロームさんも大きな大会があるからルズベリーに来たって言ってたし、大会のこと聞いてみようかな。


「ロームさん、ルズベリーで行われる大会について詳しく知ってる?」

「リンさんも大会に興味おありで?今回の賞品は鑑定のスクロールですからね」

「お菓子の大会って聞いたんだけど」

「そうですね、今回はお菓子の大会です。出場者が多いことが予想されるので、まずは書類選考で1次審査に通ると最終に出られるという話ですね」

「ほう?それで最終審査がコンテスト形式になるわけだ」

「ええ、いつもと同じだとすると、プロの料理人が何名かに一般の審査員の得票数で優勝を決める形になりますね」


 なるほど確かに。ルズベリーの大会は誰でも気軽に参加できるのがウリなんだとか。それならそんなに気負って参加しなくてもいいのかも。もちろん優勝は狙っていくけどね!


 大会についていろいろロームさんに聞きながら、ゴトゴトと馬車に揺られて2時間ほどでルズベリーの街に着いた。




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