第41話 商会の馬車
注目を浴びて気まずかったので、そそくさと食堂に移動して朝ごはんを食べる。食べてから昨日の夜頼んておいた大量の料理を受け取り、宿屋の受付で精算していると何だか暖かい目で見られた。みなさんが何考えてるのかなんとなくわかるけど、さっきのは別に痴話ゲンカでも修羅場でもないからな。ご期待に添えないと思うぞ。
宿屋を出た後、レーベルクで狩った魔物の代金と素材を受け取りに冒険者ギルドに向かう。
買取カウンターに行くと、先日のゴリマッチョなおっさんが奥に案内してくれた。買取額が大きいから注目を浴びないように気を使ってくれたらしい。
「これがオークの肉とグリーンバードの肉だ。んでこれがその他の買取代金な」
おっさんがドンドンとお肉の塊と重そうな袋を置いた。とりあえずお肉は倉庫にしまう。この袋、見るからにギチギチに詰まってるけど買取一体いくらになったんだろう…
「買取だがな、オーク、ゴブリン、グリズリーの無属性の魔石(小)は合わせて11個で金貨3枚と銀貨3枚。グリズリーは皮が3匹分で金貨3枚、グリーンバードは肉以外で金貨8枚。んで、あとはグリムボアだが、牙が金貨8枚、肉が金貨12枚、皮が金貨18枚、魔石が金貨20枚ってとこだな。合計金貨72枚と銀貨3枚だが、解体の手数料として金貨2枚が差し引いてあるからな」
「おお、高値がついたなぁ」
「グリムボアはここいらじゃ見かけない珍しい魔物だしな」
「ありがとうございます」
この前のオーガの報酬といい、なんかめっちゃお金持ちな気がする。あとでシュウと分配して所持金確認しないとなぁ。
受け取るものを受け取ったので、ルズベリーへ向けて出発する。昨日ザールさんが地図をくれたので、それを見ながらルズベリーを目指す。ここから北に歩いて3日ほどって言ってたかな。
ルズベリーまで行く馬車もあるみたいだけど、そんなに急ぎじゃないし歩いていくことにした。大会までまだ時間はあるって言ってたしな!
「なんか、こうしてシュウと歩くのも久しぶりな気がするね」
「そうですね、なんだかんだ色々ありましたから」
シュウと並んで歩いていると、私たちを大きな馬車が追い抜いた。あれは乗り合いの馬車じゃないな。なんか家紋みたいなマークがついた大きな旗を掲げているし。
「立派な馬車だね。偉い人でも乗っているのかな?」
「いえ、あれはおそらく商会の馬車でしょうね。グランリールでもアルヴェラでもあの紋章の店を見たことがあります」
ほうほう、商会の馬車か。シュウはよく見てるなぁ。ってことは、お店の品物を輸送するための馬車かな。あんなに立派な馬車を持ってるなんて、よほど大きな商会なんだろうな。
しばらく歩いていると川に出たので、少し休憩がてらお昼ごはんを食べることにする。今日のお昼ごはんはさっき作ってもらった中に入ってるチキンのソテーとパンにした。あの食堂もごはんがとてもおいしかった。でも、パンばっかり食べてると米が食べたいよね。どっかの国に米無いかなぁ…
ごはんを食べ終わり少し休憩していると、なんだか前の方が騒がしい。叫び声とか聞こえる。この先は確か草原だったかな。特に強い魔物が出るわけじゃないけど、そこそこ魔物が出るから気を付けろって言ってたっけ。
「なにかあったのかな?」
「おそらくですが、先程の商会の馬車が魔物に襲われているのでは?」
「大変、助けなきゃ!シュウ、いこっ!」
商会の馬車なら護衛を雇ってるはずだけど、ここまで大騒ぎするってことはなんか対処できない自体が起こったってことじゃないの?座っていたシュウの手を取り、急いで叫び声が聞こえた方に走る。
「ちょ!リンさん!早いですって!あと、手!」
「急がないと間に合わないかもしれないじゃん!」
少し走ると喧騒が大きくなってきた。あれは…なんだ?なにか大きな魔物に馬車が襲われている。護衛の人じゃ太刀打ちできないらしく、けが人も出てるみたいだ。
空を飛んでいるのが3匹、地上で馬車を襲っているのが2匹。紺色の大きな竜みたいな魔物だ。足が2本に長いしっぽと大きな翼を持ってる。あれ、もしかしてワイバーンってやつ?そんなことより早く助けないとやばいかも!
「シュウ、あの空にいるやつは落とせる?」
「任せてください」
すかさずシュウがその場に伏せ、M24を構えてスコープを覗く。よし、じゃあ私は地上にいる2匹をなんとかしよう。
「行ってくるね」
「気を付けてくださいね!」
パスンと言う音がして、空にいたワイバーンが1匹地面に落ちる。おお、ナイスヘッドショットかよ。ワイバーンたちが何事!?と驚いている間にすかさずダッシュで地上のワイバーンに向かうと、馬車を襲っているのうちの1匹のワイバーンの長いしっぽをナイフで切断する。ギャアァァァと叫び声を上げて、ワイバーンが私を睨んだ。地上にいたもう1匹の子も、空を飛んでいる子も私を見たね。
「助けに来ました!ここは引き受けるのでケガ人がいたら治療に当たってください!」
「すまない!恩に着る!」
護衛の冒険者さんが馬車の中に引いていく。これでひとまず大丈夫かな。しっぽを切られたワイバーンが怒りの形相で私に向かってきたので、AK-47に切り替えて頭を狙う。直線だし、結構大きいから的はでかいし、なによりこの距離なら私だって外さんよ!
タタタタンとリズミカルな音がして、しっぽのないワイバーンはズシーンとその場に倒れた。こっちの子は無事に終わったみたいだね。間髪入れずに背後からもう1匹のワイバーンが私に向かって前足を振りかぶってきた。後ろに飛び退け、残ったワイバーンと正面から対面する。
チラッと上を見ると、飛んでいるワイバーンは1匹になっていた。シュウがもう1匹も落としたのかな。空にいた子も見えにくいシュウより私の方が気になるらしく、こっちを警戒しているみたいだ。
どうしようかな、と思っていたら不利だと悟ったのか、急に正面のワイバーンが飛び上がった。逃がすか!馬車の御者台を足場に馬車の屋根の上に飛び乗る。高く飛びあがられる前に仕留めなきゃ。すかさずAWMを構えて、じっとスコープごしに狙う。私はシュウほどエイムがうまいわけじゃないけど、的もでかいしとにかく当たればそれでいい!
引き金を引くとダァン!といい音がして、ギャウアアァという悲鳴が聞こえた。どっかしらに当たったみたいだ。落下してきたワイバーンに向かって馬車の上からジャンプし、即座にナイフで首を落とす。
上を見ると、最後の1匹になったワイバーンが逃げようとしていたので気を引かせるためにAK-47で撃ちまくった。さすがに高く飛んでるワイバーンには当たらなかったけど、無事に気は引けたみたいでシュウが難なくM24で撃ち落とした。
「ふぅ、なんとか終わりかな」
「ええ、アシストありがとうございました」
周りに落ちたワイバーンを回収し、馬車の中に逃げ込んだ人達に声をかけようと馬車へ近づくと、空から大きな鳴き声が聞こえてきた。
「グアアァァァ!!」
バサバサと翼をはためかせ、さっきのワイバーンよりひと回りは大きいであろうワイバーンが私に向かって飛んできた。なぜだかとてもじゃ怒っている様子だ。
あれは、もしかしてさっきの子達の親?




