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第36話 アルヴェラへの帰還

 

「リン、シュウ、本当にありがとう。貴方たちのおかげで私の夢が叶ったわ」

「俺からも礼を言うぜ。お嬢ちゃんと会わせてくれてありがとうよ」


 ベルさん、ラビさんにお礼を言われた。私たちは何にもしてないんだけどね。ベルさんは、もう少しこの闇の城に滞在した後、アルヴェラに帰るそうだ。なんと、ラビさんも今後はベルさんと一緒にいることに決めたらしく、2人はとても嬉しそうだった。


「リン、なにかお願いがあったらいつでも言ってね。リンのためなら何でもするわ」

「ベルさん、そんな気にしなくていいんだよ!あ、でも、サンファイユ皇国について何か知っていることがあったら教えてほしいかな」

「サンファイユ皇国?なんでまた急に…」


 なんとなく事情はぼかして、稀人のことを知りたいならサンファイユ皇国に行けと妖精王に言われたからだと説明する。ベルさんはなるほどと納得し、サンファイユ皇国のことを教えてくれた。依頼で何度か行ったことがあるそうだ。


「そうね…有名なのはやっぱり皇都フィンドルかしら。確かあそこは大きな大聖堂が有名だったわね。何人かが神からの啓示を受けたことがあるとかなんとか」

「神の啓示…」

「眉唾ものだけどね。そこで神の導きにより自分は叡智を授けられたーとか言って宗教作ったバカもいるし」


 そんな人がいるのか。っていうかやっぱり宗教とかは普通にあるんだね。


「サンファイユ皇国はアルヴェラから少し遠いわね、詳しい行き方は戻ったらギルドマスターに聞いてみるといいわ」

「そうだね、いろいろ教えてくれてありがとう」

「いいえ、これくらいなら当然よ。また何かあったら頼って頂戴ね」

「はい」


 ベルさんとラビさんは2人でプーカたちの所へ戻って行った。すると、うずうずしたようにチロルが飛びついてきた。


「リン!僕も!僕もリンといっしょにいきたい!」

「チロル?」

「ダメです」


 飛びついてきたチロルを撫でていると、ラビさんがベルさんと一緒に人の国に行くことを決めて、チロルもガマンできなくなったようだ。

 チロルにもいろいろ助けてもらったんだよな。シュウはなんか速攻で断ってるけど、どうしよう。悩んでいると、カロさんがチロルに向けて口を開く。


「チロル、おやめなさい」

「お母さん、なんで…!」

「貴方がリンさんとシュウさんについて行っても足を引っ張るだけですよ」

「そんなことないよっ!僕だってリンを守りたい!」

「リンさんには俺がついているんで心配いらないですよ」


 うーん、足を引っ張るなんてことは無いんだけど、チロルはまだ小さいし危ないかな?っていうか、そんな小さい子にも守りたいとか言われてる私って…


「うーん、足を引っ張るわけじゃないけど、確かにチロルはまだ小さいから危ないかも」

「リンまで!そういうこというの!」

「チロルさ、知ってる?妖精王はいつでも指輪の力で私のところに飛んでこれるんだってさ」


 それを聞いたシュウがギョッとしてる。あれ、言ってなかったっけ?チロルはぶっすーとむくれているが、一応私の話は聞いてくれているようだ。


「何でそんなことできるのか聞いたらね、妖精石に自分の力を込めて成長させるとそれを媒介に人の国と妖精王国を行き来できるるようになるんだってさ。だからね、チロルもこの妖精石に自分の力を込めて、自由に私のところに来れるようになったら一緒に旅しよう?」


 カロさんから貰った妖精石の中から光属性の黄色い妖精石をチロルに渡す。断るのはしのびないから、妥協案だ。妖精は自分の力をきちんとコントロールして扱えるようになったら1人前らしいし、条件としてはちょうどいいかな。

 カロさんもその力を使って人の国と妖精王国を行き来してるみたいだし。っていってもカロさんは行くことはできるけど帰ることはできないから、帰りはお迎えを頼むしかないみたいだけど。チロルには少なくともカロさんを越えてもらわないとね。そうしたらきっとカロさんもチロルが私たちと一緒にいるのを認めてくれるはずだから。


「カロさんもそれでいいかな?」

「リンさん、ありがとうございます。確かに、そこまで成長すればあまり心配はありませんね」

「…わかった。僕、自分の力をコントロールする練習いっぱいするよ。リン!すぐにリンのところに行けるようになるからね!それまで待っててね…!」


 チロルが悔しそうな顔をしながら私の胸に飛び込んできたので抱きとめる。チロルはえらいね、きちんとわかってるんだよね。

 なでなでとチロルの頭を撫でる。


「私もチロルと一緒に旅するの、楽しみに待ってるね」

「うん…」


 わかってはいるけど悲しそうなチロルになにかできないかな、と考える。

 あ、そうだ。私は自分の防具から赤いリボンをしゅるりとほどく。この防具、各所にたくさんリボン付いてるし、ひとつくらいいいよね。解いた赤いリボンをチロルの首元に結ぶ。ふふ、チロルは男の子なんだけど白い子猫に赤いリボン、めっちゃかわいい。


「これ、チロルにあげる。離れていても一緒だよってしるしだよ」

「リンのリボン…ありがとう!大切にする!」


 よかった、チロルは喜んでくれたようだ。あげた赤いリボンをぎゅっと握りしめ、うれしそうにじっと眺めている。カロさんにもとってもお世話になったから、と防具についているチロルの赤色より少し濃い紅のリボンを首元に結ぶ。うんうん、カロさんも紅が似合うな。


「私にまで…ありがとうございます」


 カロさんも喜んでくれたみたいだ。押し付けがましいって言われなくてよかった。

 話もひと段落したので、出発前にミツハちゃんに挨拶しようと一度闇の城に帰る。私の指輪を使えばすぐに元々いた街に帰れるみたいだ。そうすると、今回はアルヴェラの研究所かな。


 プーカたちに案内してもらい、ミツハちゃんのいる場所に向かう。扉が開くと、とても不機嫌そうな顔をしたミツハちゃんがいた。


「なんでもういっちゃうのよ!もっとここにいればいいじゃない!」

「あはは、そういうわけにもいかないんだよね」

「そうだわ!シュウだけでもこの城に残ってよ!」

「それはできません」


 名案だわ!という感じで提案してきたミツハちゃんだけど、シュウに即断られる。なんでよー!と怒っているけど、自分でも無理を言っているのがわかっているのか、大人しく引き下がる。


「ふふ、ミツハちゃん、また遊びに来るからね」

「アンタは来なくてもいい!シュウだけ来てくれればそれでいいの!」

「俺はリンさんがいないなら来ませんが」

「うそ!リンも来ていいから!」


 慌てて訂正する様子を見て、ミツハちゃんかわいいなぁと和む。本人は不本意かもしれないけどね。ミツハちゃんに別れを告げ、お世話になったプーカたちにもお礼を言う。プーカたちも是非また来て欲しいと言ってくれたので、また遊びに来よう。今回のお礼もしないといけないしね。


「じゃあ、カロさん、チロル、元気でね!今度はいつでも遊びに来れるから、また来るからね!」

「ええ、リンさんもシュウさんもお元気で」

「リン、またな!シュウはしっかりリンを守るんだぞ!」

「言われなくても」


 バイバイとチロルとカロさんにも手を振り、シュウの手をぎゅっと掴む。シュウはびっくりしてたけど、転送するためには私に触れていないと他の人も一緒に転送することができないのだ。妖精王がそう言ってた。

 眩しい光が私たちを包むと、一瞬でアルヴェラの精霊樹の前に着いた。おお、ワープすごいね。

 さて、どうしようかなと少し考えてたら、私たちが帰ってきたことを知ったラルフさんがすっ飛んできた。


「お、おかえりなさい!居てもたってもいられなくて飛んできてしまいましたよ!さぁ、妖精王国でのことを教えてくれたまえ!」


 久しぶりだなこの圧力。私とシュウは有無を言わさずラルフさんに研究所へと連行された。



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