表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/68

第4話 村とでっかい鳥

 

「あの、なにか勘違いをしているようですが、俺たちは怪しい者ではありませんよ」


 武器代わりの農具を持ったおっさんたちに囲まれて、流石のシュウの顔にも少し焦りが見えるが、努めて朗らかに返答をする。

 村に着くまでは2人とも武器を所持していたが、現在は警戒されないよう倉庫にしまってある。

 敵意のないアピールをするため、無手である事を証明しようとシュウは両手を軽く挙げる。


「うるせぇ!なにも持ってはなさそうだけどな、そんな変な格好してる時点で怪しいヤツにしかみえねぇんだよ!」


 やっぱりこの格好じゃダメだったか!チラッとそうかなとは思ったけども!

 シュウも同じことを考えてるのか、そりゃ仕方ないよねーみたいな顔をしている。


「俺たちは遠い田舎の国から冒険者志望でやってきたので、ここら辺の人とは少し格好が違うかもしれませんが決して怪しくはないですよ」


 笑顔でサラッとさっき決めた設定で話してるけど、この状況それで切り抜けられるの?


「遠い国だとぉ?冒険者志望だかなんだか知らないが、少なくともそんな格好のヤツがいるなんて聞いたことも見たこともないぞ!」


 ダメでしたーーー!!

 私がただひたすらあわわあわわ言って慌てている間に、シュウは冷静に打開策を考えているようだった。

 その時。


「だ、だれかーーー!こっちにグリーンバードが向かってるぞーー!!!」


 そう叫んで、奥の畑の方から焦りながら人が走ってきた。


「なにっ!?グリーンバードだとっ!?なんでこんな辺鄙な場所に出るんだ!」


 1番初めに声をかけようと思った鍬のおっさんが驚いたように声を上げる。あ、ここ辺鄙な場所なんだ。

 どうでもいいワードが頭を支配しかけたが、頭を振ってなんとか切り替える。


「どうするんだ?グリーンバードなんて俺たちじゃ追い払うのが精一杯だぞ!」

「追い払うって言ったって、怪我人、下手したら死人が出るぞ!」


 私たちを囲んでいた人たちもワーワーしだして、変な格好の怪しいヤツらどころじゃなくなったみたい。

 状況に置いていかれている私たちは2人揃ってポカーンとするしかなく、ただひたすら慌ただしくしている人たちを見ていることしかできなかった。


「きっ、来たぞ!!」


 誰があげた声かは分からないが、みんなが一斉に振り向いた先を見てみると、怪鳥ですか?というくらい大きくて緑色をした鳥が畑の作物を狙ってこちらへ向かっているところだった。


「おおっ、でっかーい鳥だなぁ」

「はぁ、リンさん。何を呑気に」

「シュウ、見て見てすごいよ!でっかい鳥!」

「リンさんリンさん、もっと危機感持ちましょうよ。村の方々がこんなに慌ててるんだから、ヤバい状況なんですよ」


 私らがそんな会話をしている間にも、農具をもったおっさんたちがへっぴり腰ながらでっかい鳥を迎撃する準備をしていた。

 先程の会話から察するに、到底敵わない相手なのだろう。

 手は震え、顔は強ばり、中には何かに祈るような者さえいた。

 シュウはそんな状況を見て何かを思いついたらしく、鍬のおっさんに声をかけに行った。


「あのー、大変な状況ですね」

「はぁ!?今は忙しくてオメー等に構っている暇なんかなくなっちまったよ!わかってるならその辺で大人しくしとけ!」


 そりゃごもっとも。

 しかしシュウはニヤリと笑って驚くような提案をする。


「あの鳥、俺たちがなんとかします。そしたらこの村に滞在することを認めてもらえますか?」

「なんだとっ!?」


 びっくりした顔で鍬のおっさんがこっちを振り向く。

 そりゃ驚くよ。だって私も驚いてるんだもん。


「そういや冒険者志望って言ってたな…。いいだろう、なんとかできんならなんとかしてみやがれってんだい!」


 鍬のおっさんはお前たちに出来るわけないだろうという顔をしつつ、ぶっきらぼうにそう言いきった。


「約束、ですからね?」


 シュウはいつの間にか倉庫からSRのM24を取り出しており、私のそばにきていた。


「リンさんはあの大きな鳥に向かって威嚇射撃してください。当てなくてもいいから少し気を引いて欲しいんです。あとは俺が何とかしますから」


 そういう寸法ですか。なるほどなるほど。って、できるのそんなこと!?

 戸惑ってるうちに、でっかい鳥は畑を目指して降下してきてる。


「リンさん!早く!」

「ああもう、わかったわよーー」


 とりあえず先程試し打ちをしたVectorを倉庫から取り出し、鳥に向かって構える。

 威嚇射撃ということなら、消音器サプレッサーは外した方がいいのよね。

 よし、準備OK!頭の中で、CAの始まる前に出る「Are you ready?」の表示が出た気がした。


 ダダダダダダダッ!


 消音器を外して撃つとこんなに大きな音がするのかとまず驚く。

 迎撃しようと気を張っていた農家のおっさんたちが音に驚いて一斉にこちらを見た。…なんかごめん。せっかく気を張っていたのに今ので解けちゃったよね。


 とりあえず、狙いを鳥に定めて撃ってみたものの、当たった気配は全くない。

 やはりゲーム内で射撃するのと実際に射撃するのとでは、感覚は雲泥の差だということを実感する。

 ま、まぁ、SMGサブマシンガンはそんなに得意じゃないから仕方ないよね?

 反動リコイルに関しては先程試していたので、今回はなんとか耐えられた。

 鳥にはかすりもしなかったが、それでも音と飛んできた弾丸にびっくりしたらしく、鳥の動きが一瞬止まった。


「リンさん、さすがです!」


 シュウの声が後ろから聞こえたと同時に、パスンッと聞いたことのある音がした。


 ギャウゥアアアァァ!


 けたたましい鳴き声と同時に、でっかい鳥が落下を始める。

 やがて、ドスンという大きな音を立て、鳥が地面に叩き付けられた。

 シュウが落ちた鳥に近づき、M24の柄で鳥の頭をごろんと回す。扱い雑じゃない?

 農家の人たちもおそるおそる地面に落ちた鳥に近づく。


「大丈夫、もう死んでますよ」


 笑顔でシュウが鍬のおっさんに告げた瞬間、ウオォォ!!と周囲から歓声が上がる。

 私ももう動かない鳥にそっと近寄る。近くで見るとやはり大きい。軽く私より大きいし、3メートルくらいはありそう。

 鮮やかな緑色の羽の鳥で、グリーンバードという名前も頷ける。

 顔をそっと見ると、頭部に長い綺麗な羽が3本ほど生えていて、その少し下の部分を弾が貫通していた。


 シュウ、すごいなぁ。

 一瞬動きが止まったといえ、飛んでる相手にヘッドショットかよ…

 えげつなさ過ぎて怖いわ。そういえば、CAでも飛んでるゾンビのカラスとか軽くワンショットキルしてたことをふと思い出した。

 チラッとシュウを見ると、シュウもこちらを見ていたのか、目が合った瞬間ニヤリと怪しい笑みを浮かべる。


 前世スナイパーなのかな、あの人。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ