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第33話 闇の妖精ミツハ

 

「おっそーい!もう待ちくたびれちゃったよー!」


 プーカの案内で城を進むと、そこでは女の子が待ち受けていた。赤い目、銀色の長い髪をツインテールにして、結び目には大きな黒いリボン。黒いゴスロリ風のドレスを着た少しつり目のテンプレなツンデレ風美幼女だ。


『ミツハ様、こちらが妖精王から連絡のあった方々です。くれぐれもよろしくお願いしますよ?』

「わかってるわよ!アタシだってオベロン様の言うことはちゃんと聞くわ!」

『では、私たちはこれで』


 そう言うと、案内してくれたプーカたちはどこかに行ってしまった。広い部屋に取り残された私たちと幼女。


「アタシは闇の妖精ミツハよ。闇の妖精ってのはね、その世代で1人しかいない偉大な妖精なのよ!」


 ミツハちゃんはふふんと無い胸を張って反り返る。自慢してるけど、すごいことなのかな?

 どうも、闇の妖精ミツハというのは常に1人しかおらず、その代の闇の妖精が死ぬと次の新しい闇の妖精が生まれてくるらしい。だから、名前も代々ミツハのままなんだとか。そういう妖精もいるんだね。


「オベロン様から連絡があったわ。アンタたちが闇の城にくるから丁重にもてなせって。なんでアタシがそんなことしないといけないのよ!」


 ははぁ、妖精王はこっちにも連絡を入れてくれていたわけだ。そりゃありがたいね。そのおかげで古城にもすんなり入れたし、黒妖犬にもおそらく襲われなかったんだから。

 プンプンと怒りながらこっちを見るミツハちゃん。と思ったら、顔を真っ赤にして急にうつむいてしまった。


「ミツハちゃん、どうしたの?」

「み、ミツハちゃんですって!?ま、まぁいいわ。アンタたち、名前は?」

「えーと、リンです。こっちの猫ちゃんたちがカロさん、チロル」

「ベルガモットです」

「…シュウです」


 シュウが名前を言った瞬間、パァァと花が咲いたように笑顔になるミツハちゃん。ああ、なるほどそういうことね。


「ミツハちゃん、よろしくね?ほら、シュウも」

「ミツハさん、よろしくお願いします」

「よよよよろしくお願いするわっ!」


 あははテンパってどもってる、かわいいなぁ。っていうか、シュウも罪な男だよねぇ。どこ行っても基本的にはこうなんだもん。シュウをじとーっと見ると、私の視線に気がついたシュウなニッコリと笑顔になった。何故ここで笑う。あ、ミツハちゃんがそれを見て死にそうになってるよ。


 ミツハちゃんとの挨拶を済ませた後、私たちはプーカのところに戻る。


『ラビから連絡が返ってきました。明日にはここに戻るそうです。ですので、本日はこちらにご宿泊ください』

「そっか!ありがとうございます!よかったね、ベルさん!」

「ええ」


 ベルさん、ほっとしたような顔してた。ほんとによかった。まだ会えたわけじゃないけど、明日には会えるんだもんね。


 古くてもさすがはお城、部屋はたくさん余っているらしいので一人一部屋貸してもらった。それはいいんだけど、泊まるっていってもまだお昼前なんだよねぇ。空から見た感じ、ここ闇の城には何もなさそうだし…どうしよう?

 そんなことを考えていたらプーカたちがいろいろ気を回してあったらしく、ミツハちゃんが王都まで連れて行ってくれるみたいだ。うさぎさんたちみんな優秀かよ。

 なんでも、各属性の代表格の妖精の住処にはなんかあったときのために王都まで転送できるようになっているのだとか。ってことはシルフたちのところもそうだったのかな?まぁ、私たちはグリフォンに乗って直接闇の城まで来ちゃったから使う必要もなかったんだけどね。


 部屋を案内してもらってすぐ、先ほどミツハちゃんがいた部屋に集合する。カロさんとチロルはお留守番をするらしいので、人間の私とシュウ、ベルさんで行くことにした。王都、さっき空から見ただけだけど、いくつかお店があったし楽しみだなぁ。


「来たわね!仕方ないからアタシが王都まで連れて行ってあげるわ!」

「ミツハちゃん、ありがとうね!」

「ありがとうございます」

「べ、別にいいのよ!オベロン様にももてなせって言わせてたし!」


 ミツハちゃん、そんなこと言いながらチラチラとシュウを見てるのバレバレなんですよ。シュウは慣れているからか、相変わらずのシレッと無表情だけど。

 ミツハちゃんに部屋の奥に案内される。そこには、レーベルクに来るときに通ったようなガーデンアーチがあった。これを通ると王都に行けるんだね。


「さぁ!いくわよ!」


 ミツハちゃんを先頭に、ガーデンアーチをくぐる。くぐった先は王城内にある部屋だったらしく、とても豪華な部屋だった。そっか、緊急用って面もあるし王城にそのまま飛べるようになっているってことか。

 部屋から出ると、長い廊下だった。ちょうど廊下を歩いていたメイドさんらしき妖精がこちらに気づき、パタパタと走ってきた。


「転送ゲートを使われたのですね。ようこそレーベルクの城へ。リン様、妖精王オベロン様がお待ちですのでこちらへ。その他の皆様はどうぞ城でごゆるりとお過ごしください。外へ出て王都を観光していただいていても構いません」

「な、なんだと…?」


 恐れていた事態が起きてしまったようだ。っていうかよく考えればそりゃそうだ。城に来たんだから挨拶くらいしろってことだよね。ああ、せっかく避けてきたのになぁ。


「リンさんが行くなら俺も行きます」

「いえ、オベロン様はリン様だけで、と仰られましたので」


 取り付く島もないな、メイドさん。シュウはいろいろ言っていたようだけど、メイドさんは頑として首を縦に振らなかったので、ミツハちゃんに引きずられるようにして王都へと出かけていった。

 シュウがミツハちゃんに連れられて行く間際にくれぐれも気を付けてくださいね!って何回も言ってたけど、安全であろうお城の中で何を気をつけるんだか。


 メイドさんに連れられて大きな扉の前まで来た。行動早いし優秀なメイドさんだなぁ。この先は謁見の間、とでもいうのかな。そんなことを考えていたら門が勝手に開く。自動ドア便利だなぁ。

 その中は想像していた通りの部屋だった。赤い絨毯が道のように続き、階段を3段ほど登った先に玉座であろう立派な椅子がある。そして、そこには妖精王が座っていた。


「リン、よく来たな。俺はオベロン。この国の、妖精の王だ」


 とりあえずカーペットの上を歩き、玉座の方まで歩いていく。私、王様に対しての作法なんて全然わからないんだけど大丈夫かな?


「礼儀なんてどうでも良い。こちらへもっと寄ってきてくれないか」


 部屋の途中で立ち止まってあわあわしてる私を見てフッと笑うと、妖精王は私に向かって手招きをした。


「は、い。リンと申します」


 緊張しながら玉座の前まで行く。本当は跪いた方がいいのかもしれないけど、礼儀なんてどうでもいいって言ってくれたからその場でぺこりとお辞儀をする。そんな私を見て満足そうな顔をする妖精王。

 顔を上げてじっと妖精王を見ると、第一印象はうわ、イケメンだなぁ、だった。深い青色の長く伸ばされた髪に、精悍な顔、金色の瞳。白いガウンのような民族衣装っぽい服を着ていて、異国の王子様って感じだ。シュウもイケメンなんだけどさ、なんかこう、妖精王は神々しいイケメン。優劣は付け難いけどね。


「リン、風の森では世話になった。俺の意図をくんでくれてうれしいよ」

「いえ、無事に解決できてよかったです」

「カロに話を聞いた時から思っていたのだが、お前からは不思議な気配がするな。もしや稀人なのか?」

「…はい、私たちはこことは違う世界から来ました」

「なるほどな…」


 顎に手を当て少し思案する妖精王。イケメンは何をしても絵になるね、眼福だ。ほんの一瞬だけ稀人だって言うの悩んだけど、王様相手に隠し事はしない方がいいよね。そもそも答え合わせみたいな感じで聞いてきてたし、ある程度の確信はあったみたいだから。


 ひとまずお互い軽く自己紹介をしたし、リンにはまだ聞きたいことがあるからって言う妖精王に連れられてお昼ごはんを共にすることになった。

 妖精王も妖精だからごはんは基本的に食べないらしいんだけど、私が来るからっていろいろ用意してくれたみたいだ。イケメンすげぇ、めっちゃ気が回るな。


 天気がいいから、と庭に案内されたので、大人しく座って待つことにした。




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