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第28話 レーベルクの全体図

 

「リンさん、妖精王が貴方に会いたいと言っています。会いますか?」

「はひ?」


 朝ごはんのパンを口に入れて咀嚼していたとき、昨日の夜、夢で伝言を頼まれたんだとカロさんが私に伝えてくる。

 もごもごと思案しながらパンを飲み込む。えーと、妖精王?って言ったよね。

 妖精王は特別な力を持っていて、夢で伝言を頼むことができるとか。へぇーそりゃすごい。


「はい。妖精王オベロン様がリンさんに興味を持ったそうです。それに、なにかお願いしたいことがあるみたいですね」

「却下します」

「ちょっと、なんでシュウが先に答えるのよ」


 スープを飲みながら、パンをひとかじする。うん、パンはやっぱり固いからスープと一緒に食べると食べやすくなるね。日本で食べてたような柔らかいパンってないのかなぁ。

 カロさんとチロルにもスープだけあげたら、喜んで飲んでくれている。


「うーん、会うのはいいんだけど…先にベルさんの探している妖精さんを探してからかなぁ」


 王様と謁見なんて立場的にも断われないけど緊張するから気は進まない、かな。さすがにNOとは言えないよね。

 後回しにしちゃって申し訳ないけど、ベルさんの妖精探しの方が私にとって重要なのだ。


「リン…ありがとうね」

「ううん!ベルさんにはお世話になってるし!それに、私もプーカに会ってみたいな」

「なるほど…リンさんは人間ですし、おそらくオベロン様も会ってくれるならそれでいいと仰ると思います。では、そのように連絡しておきますね」


 カロさんが手配してくれるみたいだ。何から何までありがたいことですね。


「さて、プーカに会いに行くんでしたね。では私が案内をいたしましょうか」

「カロさんが来てくれるの?」

「ええ、私が1番適任でしょうから」

「僕も!僕もリンといっしょにいく!」


 チロルが勢いよく手を挙げてアピールする。ふふ、チロルも来てくれるならうれしいかな。


「いいよ、チロルも一緒に行こうか」

「わーい!」

「はぁ、全くこの子は…プーカの住処はここからだと少し遠いですね。一度、王都を通ってそこから闇の城方面へ向かいましょう」


 妖精王国レーベルクは6つのエリアに分かれてるらしい。

 火の山、水の都、風の森、土の洞窟、光の聖堂、闇の城、それぞれが中央部にある王都に繋がっている作りになっている。ふむふむ。あ、アルヴェラの塔が6棟だったのも、各属性ごとに研究所があったからか。

 ここケット・シーの住処は風と光のエリアの中間くらいにあるみたいだ。ケット・シー自体、光属性の妖精だってラルフさん言ってたもんね。各エリアに行くには一度中心の王都を通らなければいけないみたい。

 え?王都を通っていくんだから妖精王に会っていけって?それとこれと話が別だよ、うん。


「ではまずは王都に向かいましょう。そうですね…ここから王都までは3日ほどかかるかもしれませんね」

「思ったよりかかるんだ。結構広いんだね、レーベルクは」


 ここ妖精王国レーベルクでも魔物は出るみたいだ。でも、妖精は基本結界を使うし、あんまり移動自体しないみたいだから魔物なんて特に驚異でもないらしい。


「魔物かぁ…倒すのは良いんだけど、解体どうしよう」

「確かに、俺たちじゃ無理ですよね」

「王都に行けば解体できるかもしれませんね。一部の妖精は人の国とも貿易してるみたいですし、解体ができる者もいることかと」

「なるほどー」


 カロさんたちはそんなでも無いけど、基本的に妖精は人と関わらないらしい。ていうか、見えないんだから仲良くも何もないよね。それでも、人と交流を持つ妖精もいるみたい。物好きとか呼ばれてるらしいけど。

 あれ、人に見えないのにどうやって交流するの?


「ああ、それはですね…実際にお見せした方が早いですかね」


 カロさんがそういうと、何かの短い呪文を唱えた。その瞬間、目の前にいるのは白い猫ではなく、ロングの白髪に白い猫耳の可愛いお姉さんだった。


「カ、カロさん…?」

「はい、カロです。これは〈人化〉という魔法ですね。久しぶりに使いましたが…どうです?上手くできてます?」

「めっっちゃかわいい!!」

「それなら良かった。ありがとうございます」


 そういってカロさんはふわりと笑った。美人…!ベルさんが妖艶なお姉さまなら、カロさんは儚げな深窓のお嬢様って感じだ。

 人化したカロさんの周囲をガマンできずくるくる回って全体を見る。お尻からは白くて長い尻尾も生えていた。猫耳!尻尾!うわぁテンション上がる!


「カロさんができるってことは、チロルもできるの?」

「もちろん!リン、見たい?」

「見たい!」


 いっくよー!と元気にチロルも魔法を使ってくれた。カロさんと同じく、チロルも白髪に白い猫耳で、子供くらいのすごくかわいい男の子だった。


「できた!リン、どう?」

「チロルー!かっわいいよー!」


 思わずしゃがんでチロルをぎゅっと抱きしめる。天使だよ、天使が目の前にいるよ!


「リンがいつもより近い!うれしい!」

「はいはい、そこまでにしておきましょうね〜」

「なにすんだっ!シュウ!」


 シュウがチロルと私を引き離す。あぁっ、私の天使が離れていく…!

 妖精みんながみんな人化した際に耳が出るわけではないらしい。なるほど、こうすれば確かに人と交流できるよね。人化している状態だと妖精が見えない人でも普通に見えるみたい。

 元々、意図的に姿を見えにくくしてるらしいし、それを解除すれば人に見えるようになるのでは?と思ったけど、どうもそれでも妖精が見える人と見えない人が出てくるみたいだ。確実に人に見えるようになるには人化するのがいちばん手っ取り早いんだとか。


 妖精自体、基本は自分たちのエリアから出ない閉鎖的な種族らしく、王都といっても物好きの妖精さんたちや王様に使える眷属たちくらいしかいないんだって。王都と言うからには賑やかな場所を想像してたんだけど、そんな理由なら仕方ない。それでも、いろんな妖精さんたちに会えそうで楽しみだ。


 王都に向かって歩きながら話していた私たちは、ケット・シーの住処を越え、大きな森に辿り着いた。森というより樹海?背の高い木が空を覆いつくし、陽の光の届かない暗い森。


「ここは風の森の入り口になります。光の聖堂を通って王都に行っても良かったのですが…王都に行くにはこちらの方が近いのでここを抜けていきましょう」

「くっらーい…」


 風の森なんていうもんだから、なんていうかこう、風の吹き抜ける緑豊かな森を想像してたんだけど…風というより完全に闇だよ外観は。


「光の聖堂経由ですと、どうしても時間がかかってしまうのです…ここは魔物も出ますが、リンさんたちなら問題ないでしょう」


 カロさんが言うには、光の聖堂経由で王都に向かうと軽く1週間は固いのだそう。なんでも、光の妖精たちは警戒心が強い者が多く、幻覚や混乱などの魔法を駆使して自分たちの住処を守ってるらしい。

 光の聖堂から王都に向かうには、どうしてもいくつか越えなければいけない光の妖精の住処があるみたいで、なるべくその道を選択したくないみたいだ。カロさんたちは光の妖精なので問題ないが、私たちが一緒だとどうなるのか分からないみたいだね。

 それに、カロさんが妖精王に返事の連絡をしたところ、会うのはプーカに会ってからでもOKだけど、闇の城に向かうなら風の森経由で王都に向かえとカロさんに伝えてきたらしいよ。うん、嫌な予感しかしないよね!


「魔物は出ますが、風の精霊たちは他のことに我関せずな者も多いですし、風の森は広いので彼らの住処を避けて行くこともできます。なので、リンさんたちは魔物が出てきたら対処をお願いしたいのです」

「そういう理由なら仕方ないね。そもそも、私たちのわがままで行くんだから、カロさんはそんなこと全然気にしなくていいんだよ!」


 ひとまず、日も暮れ始めたので今日はいったんここで野営して、朝になってから森に入ること決めた。


 …カロさん、王都までは3日ほどって言ってたけど、ほんとにこの森3日で抜けられるのかな?

 疑問には思ったが口に出さないことにして、明日に向けて早めに休むことにした。



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