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第27話 猫ちゃんたちとの交流会

 

「リン!あそぼ!あそぼ!」


 カロさんとの話が終わった瞬間、チロルが座っている私の膝の上に乗ってくる。がまんしてたのかな、えらいな。


「いいよ。じゃあ、チロルにケット・シーの住処を案内してもらおうかな?」

「うん!案内する!リン、いこ!」


 チロルを一撫でし、家の外に出ようと立ち上がる。もうそろそろ夕方になるけど、見たところケット・シーの住処は広くないようなので、ごはんまでには戻ってこれるだろう。ツリーハウスから出ようとすると、シュウも一緒についてきた。


「リンさんひとりでは行かせられません。俺も行きます」

「リンひとりじゃない!僕がついてる!シュウはダメ!」

「俺も行きます」


 また言い争いになりそうだったので、チロルにシュウも一緒でいいかな?と聞く。しぶしぶだけどOKしてくれたので、一緒に行くことにした。その代わり、抱っこして欲しいと言われたのでもちろんいいよ、と同意する。

 ベルさんにも行くかどうか聞いたけど、断られた。この国に来てから少し体調が悪いみたい。なんでも、この国は魔力がとても濃く、慣れないと少しキツいみたい。私とシュウはなんでもないんだけど。

 カロさんも少し休んだ方がいいと言っていたので、ベルさんはお言葉に甘えることにしたようだ。


「ねえ、チロル。この辺りに生えているこの草はなに?」

「これは、エノコロ!遊ぶと楽しいんだよ!あと、おくすりになるとかお母さん言ってた!」

「そっか、チロルは物知りなんだねぇ」


 よしよしと腕の中にいるチロルを撫でる。チロルはうれしそうに私の顔に擦り寄ってくれた。かわいいが過ぎる。

 私たちが住処を歩いていると、他の猫たちがぺこりとお辞儀をしてくれるが、なんだか遠巻きに見ていた。チロルに聞くと、人間が珍しいみたいだ。うう、こっち来てくれたら思いっきり撫で回すのに。


 チロルの案内でケット・シーの住処を回ったが、予想してた通りそこまで広くはなかった。カロさんとチロルだけいいお家に住んでるな、と思ったら、カロさんたちはケット・シーの上位種らしく、他の猫ちゃんたちより妖精の力が強いんだとか。そっか、私たちはカロさんとチロルのお客さんってことになってるのか。だから私たち人間が来ても騒がないんだね。


 日も暮れてきたので一通り住処を見て回ってツリーハウスに戻る。そうだ、私カロさんとチロルにお土産買ってきたんだった。

 カロさんとチロルに買ってきたお土産を渡すとすごく喜んでくれた。交流の少ない人の世界のものはここではとても珍しいんだそう。そんなに喜んでくれるなんて少し申し訳なくなってくる。だってちょっと可愛いお皿とか魚の干物とかほんとに大したものじゃないんだよ。


 そろそろ夜ごはんを食べないと空腹で倒れそうな時間になってきた。カロさんたち妖精はレーベルクではごはんを食べなくても生きていけるらしい。ここは魔力が濃いから食べなくても平気なんだそう。

 私たち人間はそうもいかないので、持ってきたごはんを食べることにする。あ、オークの肉がまだいっぱいあるな。外で焼くか。


「ねぇカロさん。食べなくても平気なだけで、食べられないわけじゃないんだよね?」

「ええ、私たちもみんな人の作るご飯は好きですよ」


 よし、ここはみんなで親睦をはかるためにオークのお肉で焼肉パーティーだな。ベルさんもここの魔力にだいぶ慣れたようだし、シュウもお腹が空いてきたみたいだ。バタバタしててお昼食べてなかったもんね。


「カロさん、ツリーハウスの下でケット・シーのみんなも一緒にごはん食べよう!お外でお肉焼いてもいいかな?」

「それは構いませんが…私たちもいいんですか?」

「もちろん!カロさんたちの仲間だし、私たちも仲良くなりたいしね」


 ツリーハウスから降りて、付近から薪になりそうな枝木を拾ってくる。本当は鉄板で焼肉パーティーがしたかったけど、大きな鉄板なんてないことに気がついた。芸が無いけど、グリーンバードのときと同じように串に刺すしかないな。ようし、焼肉パーティー改め豚串パーティだ。

 私たちが準備をしていると、他のケット・シーたちもなんだなんだと集まってきた。一緒にごはんを食べようと提案すると、喜んでいた。みんな、ごはん自体は好きらしい。たくさんの猫ちゃんに囲まれて私はとても幸せだ。


 串にオークの肉を刺して焚き火で焼いていく。やがて、いい匂いがしてきたので火から上げ、塩と胡椒を振りかける。猫ちゃんたちの分は塩を少しだけかけてあげた。一応、猫じゃなくて妖精だけど胡椒みたいな香辛料、鼻が良さそうだし食べられるかわからないもんね。


 さっそく焼きたてのオーク肉にかじりつく。うまっ、なにこれ。胡椒は高かったけどやっぱり買って正解だったな!

 シュウもベルさんもおいしいって言ってくれた。猫ちゃんたちも喜んで食べてくれている。みんな夢中でオークの肉をはぐはぐしてて、見てるだけで癒される。


「リンさん、これはこの前のオークですかね?貴重なものをありがとうございます」

「リン、おいしーよ!」

「そうそう。喜んでもらえて良かったよ」


 カロさんとチロルと話していると、遠巻きに見ていた猫ちゃんたちがこちらへと寄ってきてくれた。


「人間、お肉おいしい、ありがとう」

「いい人!いい人!撫でて!撫でて!」


 猫ちゃんたちは撫でてもらうのが好きらしく、次々と撫でてもらいに私のところへやってくる。楽園はここにあったのか…

 シュウやベルさんのところにもたくさんの猫ちゃんたちが寄ってきている。無事、私たちは受け入れてもらえたみたいだね。

 猫ちゃんたちがたくさん私のところに寄って来るのが面白くないチロルがリンは僕の!とか周りに牽制してて、またシュウとバトってたけど。そんな様子をカロさんは微笑ましそうに、とても楽しそうに見ていた。


 ごはんを食べて、猫ちゃんたちをひと通り撫でたあとツリーハウスに戻る。


「リンさん、オークの肉、ありがとうございました。みんな喜んでいましたよ。夜はぜひうちで休んでいってください」

「ありがとうカロさん。お言葉に甘えさせてもらうね」


 奥にあった2部屋はカロさんとチロルの部屋だったようで、チロルにいっしょに寝ようね!と言われた私はチロルの部屋にお邪魔することにした。


「えへへーリンといっしょに寝られるのうれしい!」


 そんな可愛いことを言いながら、スリスリと私の足元に擦り寄ってくるチロル。ああ、チロルほんとにかわいいよ、私を萌え殺しにきてるよ…


「うんうん、一緒に寝ようねぇ」

「うん!」

「ぐっ…チロル!俺もチロルの部屋で寝てもいいですよね!?」

「シュウはダメー」

「ぐぅっ…!」


 チロルに速攻で断られるシュウ。今回はチロルの部屋ということで、シュウもいつも程強くは言えないようだ。

 シュウはすごく不服そうだが、ベルさんとシュウはリビングに寝袋を出して寝ることになった。


「それでは皆様、お休みなさいませ」


 カロさんが私たちにおやすみを言って部屋に入っていった。私たちもカロさんにおやすみを返し、各自就寝ことにした。


「じゃあシュウ、ベルさん、おやすみなさい」

「おやすみ、リン」

「ううぅ…リンさん、おやすみなさい…」


 リビングに寝る2人にあいさつをしてチロルの部屋に行く。チロルの部屋は、シングルベッドと箱だけが置いてある4畳半くらいの部屋だった。部屋に置いてある箱にはチロルの宝物が入っているらしい。中を見てもらいたいみたいだけど、今日はもう遅いからまた明日ね、と言ってチロルと共にベッドに入る。


「リン、あったかい!」

「チロルはもこもこで気持ちいいねぇ」


 チロルのベッドには枕が無かったので、寝袋をくるくる丸めて枕代わりにする。

 今日は猫ちゃんたちに囲まれて楽しかったな。また明日、みんな遊んでくれるかな?


「ふふ、おやすみなさい、チロル」

「おやすみ、リン!また明日いっぱいあそぼうね!」


 枕が変わっても余裕で寝られる私はチロルと共に仲良く眠る。明日は何をしようかな…?




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