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第23話 初めての魔法

 


「リン、待ってたわよ!楽しみで眠れなかったわー!」


 そう言って私に抱きついてくるベルさん。朝からテンション高いね。


「ハイそこ、リンさんに手を出すのは禁止って言いましたよね?」

「いいじゃない、女同士なんだから」

「女でも悪意がある場合はダメです」


 相変わらずここはバチバチしてるし。なんか犬猿通り越して逆に仲良しなのでは?と思ってきたよ。

 乗り合い馬車に乗ってるのは私たち3人と、男女4人組の冒険者さんパーティーが1つ、恰幅のいい商人さんが1人に若めの御者さんだ。護衛の冒険者さんはいないみたい。


 時間になったので馬車が動き出す。ガタンゴトンと軽快に揺れるが、この前のフェザーウルフの馬車より全然ぬるい。あれ経験すればどんな馬車にでも乗れるのでは?

 馬車に乗るのはほんの1時間程度らしいので、いまだにわーわー言い合っている2人を置いてそーっと御者台に出る。お天気いいし、外出てた方が景色も空気もいいよね。


「いいお天気ですね、どこまで行かれるんですか?」

「魔法都市まで!御者のお兄さん、さすがに運転上手ですね!」


 御者さんと他愛もない話をしていると、前方に小さな影が見える。あれは…もしかしてゴブリン?そう言えばエドガーさんに、街に近い場所にいるゴブリン見かけたらなるべく倒して欲しいって言われてたんだっけ。


「今から貴方が見ること、他言無用でお願いしますね?」


 口元に人差し指を当て、御者さんに向かってナイショだよのポーズをする。やってから思ったけど、これこの世界で伝わんのかな?

 御者さんは少し顔を赤くしてこくこくと頷いてくれたので、どうやら無事に伝わったらしい。


「たしかゴブリンは小さな魔石しか落とさないEランクの魔物って言ってたよね…」


 倉庫からAWMを取り出す。8倍スコープと消音器装備して、と。御者さんはこっちを見てびっくりしていたが、魔法ですって笑いかけたらこくこく頷いてた。

 御者台に座りながら、AWMを構える。パスンっという音がして、遠くのゴブリンに命中した。魔石は回収できないけど、小さなものだしスルーしよう。


「かなり遠くのゴブリンを倒しましたよね。初めて見ますが、すごい魔法ですね」

「わ!御者のお兄さん、今の見えたの?」

「職業柄、目はいいんですよ」


 ニコリと笑って片手で目を指さす。その後も時折御者さんと話しつつ、遠くのゴブリンを銃撃していった。エイムのいい練習になりそうだこれ。


「リンさん!どこにもいないと思ったら、何してるんですか!」


 シュウが馬車の正面についている御者台が見える大きな窓から顔を出した。本当は御者台に直接来たかったみたいだが、そこまで大きくないこの馬車は御者台も狭く、御者のお兄さんと私の2人が限界だった。


「もう着くかな?」

「目的地は青の洞窟でしたよね、でしたらそろそろ着きますよ」

「俺は無視ですか!リンさん…!」


 さっき私が話しかけてもシュウとベルさん2人でわーわー言ってて全然聞いてないんだもん。お返しだ。

 すごくガックリと項垂れるシュウはとりあえずスルーし、引き続きゴブリンを見つけ次第引き金を引く仕事に戻った。


 そうこうしてるうちに、目的地についたようだ。御者さんにお礼を言って馬車を降りる。私たちの他にも、アルヴェラが目的地らしい冒険者さん4人組パーティも降りた。


 目の前に見える洞窟は「青の洞窟」というらしく、水辺が豊富でキレイな洞窟で、そこまで広くはないみたい。なんで青がついているかというと、スライムが出てくるからだそうだ。やっぱりこの世界にもスライムはいるんだね。

 同じ馬車に乗っていた冒険者さんたちが先に洞窟へ向かったので、狭い洞窟内でギチギチに進むのもあれだし、洞窟前の草原ででお昼ごはんを食べることにした。


「うまっ!やっぱりあの食堂のマスター凄腕だよ!」

「私も頂いていいのかしら?」

「大丈夫!倉庫にいっぱい入ってるから食べて食べて!」


 食堂で作ってもらったごはんをベルさんにも渡して3人で食べる。お天気いいし、ピクニック日和だね。シュウはまださっきのことを引きずっているのか、無言でもくもくとごはんを食べていた。

 食べている間、ベルさんにこの洞窟の話を少し聞く。スライムはEランクの弱い魔物で、ドロップもごく小さな魔石しか落とさないらしい。基本的には通常種しかいないが、たまに希少種のスライムにも会えるそうだ。ちょっと会ってみたい気もする。

 スライムがメインで出てくるこの洞窟はアルヴェラに近いため、アルヴェラで冒険者になったの人達の練習の場としてもよく利用されているようだ。つまり、この洞窟はそこそこ安全ってことだね。


 ごはんを食べ終わり、洞窟へ向かう。もうそろさっきの冒険者さんたちと鉢会うこともないだろう。


「ベルさん、これが私たちの武器、銃です。その中でもこれは1番小さいものなんだけどね」


 Eランクのスライム相手なので、ハンドガンのP1911を倉庫から出す。一応、消音器と大容量マガジンをセットしておく。シュウも私と同じものを装備していた。


「これが…見たことない武器だわ。どう使うのかしら?」

「えっと、今は弾は入ってないけど、ここの引き金を引くと撃てるの」

「なるほど…面白い武器ね。弓みたいなものかしら」


 ベルさんは私の持っているP1911をまじまじと見ていた。興味があるようだ。弾倉をセットし、軽く構える。ハンドガンはあんまり使わないけど、ほとんど動きのないスライム相手なら問題ないだろう。


「中でスライム相手に使ってみますね。ではレッツゴー!」


 洞窟内は青の洞窟という名に相応しく、壁が青々と光っていた。青い鉱石によるものらしく、キラキラ幻想的でとってもキレイだ。

 中を見物しながらしばらく歩いていると、前方に水色っぽい透明で、まんまるいゼリー状のスライムが2匹現れた。大きさは大体サッカーボールくらいかな。


「きたな。ではいざ!」


 スライムに向かってパスンパスンと軽快に撃つ。スライムはどろりと溶け、死体は残らずドロップ品の小さな魔石だけが落ちていた。


「こんな感じかな?」

「すごいわ、その武器。音もほとんどしないのに、簡単に高火力を出すことが出来るのね」


 ベルさんが感心したように言う。普通、魔法を使う時は詠唱が必要らしく、こんなに早く攻撃することは出来ないんだそうだ。

 そんな話をしているうちに次のスライムが出てきたので、今度はベルさんが魔法を見せてくれることになった。


「火の精霊よ、我にその力を!〈ファイヤーボール〉!」


 ベルさんの前に出した手から、野球ボール程の火の玉が出る。おおっ!と感動していたら、その火の玉はスライムに向って飛んで行った。

 ちょっとオーバーキルのような気もするが、ファイヤーボールを食らったスライムは魔石を残して跡形もなく消えていた。


「すごいすごい!魔法カッコイイ!」

「ありがと。でもこれくらいならできる魔術師がほとんどよ」


 今のファイヤーボールは火の初級魔法らしく、火の魔法が使える人はみんな使うことができるそうだ。この世界に来てから初めて触れる魔法に私のテンションは上がる。


 魔法はその属性の適性があれば使うことができるらしい。基本的には火、水、風、土の4属性。それに加えて、使える人は少ないが光と闇もあり、6属性の魔法があるのだという。

 一般的に0〜2属性の適性持ちが多いらしく、3属性、ましてや4属性は稀だとか。改めて話を聞いた後だとやっぱりベルさんすごい人なんだと思う。私にもなんか適性あるのかなぁ。


 ベルさんに魔法の話を聞きながら、私たちは危なげなく青の洞窟を抜けていくのだった。



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