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side2 頼れる後輩の事情

 

 リンさんと異世界に飛ばされてからいろいろなことがあった。ヒヤヒヤさせられたことも少なくはなかったけど、なんとか今日も生きている。


 ご存知の方がほとんどだと思うが、俺はリンさんに先輩以上の感情を抱いてる。まぁ、リンさんは俺に対して後輩以上の感情を持ち合わせていないだろうが。

 ラブコメの主人公よろしく、とにかくリンさんは鈍い。俺の気持ちになんて微塵も気が付いていない。それどころか、ほっとくとすぐいろんなことに巻き込まれてる。


 異世界来た後だけじゃなく、来る前から結構アピールしてたつもりだけど、結果は思わしくなく軽く泣ける。他の女性に噂されるためにこんな好青年演じてる訳じゃないのに。肝心のリンさんはハイスペックイケメンけしからん!とか言ってるし。でもイケメンってリンさんに言われるのは素直に嬉しいかな。

 ようやく週に何度かゲームできる仲になったと思ったら異世界転生これだ。まぁ、この世界で唯一頼れる知ってる人間が俺だけっていうこの状況も悪くないんだけどね。


 異世界に来たばかりの時、俺はゲームをしていたはずではと目を疑った。毎週楽しみにしているリンさんとのゲームの時間、

いざゲームスタートを押した瞬間に気が付けば草原にいるのだから、驚くのも無理ないだろう。せっかくの俺の癒しの時間を返せ!とどこかの誰かに言いたい気分だ。

 だが、そんなこともすぐにどこか吹っ飛んだ。ピンクと白のボーダー柄のパーカーを着ていた可愛い猫が目の前で寝転んでいるのだから。リンさんだ。リンさんがいる。

 こんな状況でも気持ちが高ぶる自分をなんとか抑えて、落ち着いていつも通りリンさんに声をかける。リンさんは俺がいることに大層驚いていたが、知っている人がいてどこかほっとしたような様子だった。可愛い。本当に、一緒に異世界に来れてよかった。


 リコッタ村でリンさんが1人で散歩に行った時なんて、なんてことを許可するんだと村長を呪ったね。大人しく行って帰ってくることなんてリンさんには出来ないんだから。すぐ近くにいるリンさんに緊張しすぎて、昨日全然眠れなかった俺も悪いんだけど。

 案の定、リンさんは問題トラブルを抱えてた。運良く解決したみたいだけど、心配するこっちの身にもなって欲しい。

 あの猫、チロルとか言ったか。俺を見てたあの目は完全に敵と見なした目だった。猫のくせに生意気な。お前なんかにリンさんは渡さん!


 リコッタ村を出て、グランリールに到着したは良いが直ぐにまた問題が発生した。ギルドマスターのエドガーに目をつけられてしまったのだ。薄々そんな気がしたんだけどね。グリーンバード、珍しいって言ってたし。

 そこまでならまだ良かったが、まさかオーガ討伐に狩り出されるとは思ってもいなかった。ギルドマスターに言いくるめられてリンさんが行くって言ったから仕方なくだけどね。リンさんひとりで行かせる訳にもいかないし。


 あのオーガ戦、心臓がいくつあっても足りなかった。俺がオーガの角を折った瞬間、まさか怒ったオーガがリンさんに向かっていくとは。エドガーにはリンさんを守れと散々言っておいたのに!だがしかし、俺のせいでもあるからそこは猛反省した。

 リンさんがオーガの左足を切断して隙を作ってくれたおかげでなんとかトドメをさしたけど、もうあんな思いはしたくない。リンさんを守るって言うなら、俺も今以上にもっと強くならないといけないな。


 装備の貧弱さと今の格好に危機感を覚えた俺たちは、防具を買うことにした。宿の人におすすめしてもらった防具屋で俺はそれっぽい動きやすそうな防具を適当に選んだが、リンさんは相当悩んでいるみたいだった。そりゃそうか、この辺置いてあるのはいかにも防具ですっていうデザインのものばっかりで、リンさん好みのものはないし。俺としてはこれ以上目立ってほしくないし、その方がいいんだけど。


 ふと、隅でホコリ被ってるような防具が目に入った。なんの気もなしにその防具を店長に見せたのが運の尽き。

 それはあまりにもリンさんに似合いすぎていた。リンさんは許容範囲って言ってたけど、俺的には胸元めっちゃ空いてるし!足だって出てるし!ぼーっとしてるとそこばっかり見てしまいそうだ。その辺の女の人が露出の高い装備をしてても全然気にならないんだけど、リンさんとなれば話は別だ。

 何回か言っているが、リンさんは本当に危機感が無さすぎる。

 リンさんにそれとなく伝えても「お父さん」扱いされる始末。もうこれは慣れてくしかないんだろう。店長の嫁の…確かカルラさんがまたリンさんに防具を作るとかなんとか言ってたっけ。今度はもっと露出の低いデザインにしてもらわないといけないな。


 短期間でいろいろなことがあったが、今後は今以上に大変な目にも遭うだろう。それでも、リンさんと一緒ならなんでもできる気がする。


 しばらくはこの「頼れる後輩」は続きそうだ。




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