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第15話 冒険者について

 

「強いとは思っていたが、まさか姉ちゃんもこれだけ動けるとはな!俺も手は抜いていたが、心底驚いたぞ」


 ナイフを変呼ばわりされて頭に血が上っていたが、エドガーさんが入口付近に転送されていたのをみて少し溜飲が下がる。ついでにシュウが驚いてるのも目に入る。何そのお前そんなに動けたのみたいな顔!お前も私のナイフちゃんの錆にしてやろうか?


 ひとまずナイフを倉庫にしまう。今回は私もシュウも奇襲みたいな形だったし、実際の戦闘経験はほとんどないから次やったら多分勝てないな。エドガーさんも手を抜いていたし。

 そう考えると、ある程度戦闘経験みたいなものを積んでおいた方がいいのかな?


「その腕があればグリーンバードを1撃で仕留めたのも頷けるな。きっと俺みたいに初撃で頭に一発か」


 正解ですよエドガーさん。というか、めっちゃ楽しそうですねあなた。


「しっかし、ほんとに変わった武器だったよなぁ。今まで見たことも聞いたことも無い。ありゃ、なんだ?」

「これは魔法で作り出した武器です。いろいろな姿形の物があります」


 シュウがため息をつきながらハンドガン、SMG、AR、SGといくつか出していく。エドガーさんの圧に屈したな。エドガーさんは興味津々な様子でシュウが出した銃火器を手に取ったり眺めたりしている。

 魔法で作り出した武器、倉庫もある意味魔法の1種だし、そこから出し入れしてるからいい誤魔化し方なのかも。


「ちなみにこれらと同じ物を彼女も使えますよ」

「なにっ!姉ちゃんも短剣と同時に魔法を使っていたから面食らったが、この武器も使えるのか!?」


 えーシュウ、エドガーさんの興味をコッチに振り分けようとしれっと何言ってんのさ。案の定こっちにも来たじゃん!


「あ、あはは。詳しいことは言えませんが、私たちの国の武器です」

「そうか、田舎から来たって言ってたもんな…」


 どうやらいろいろ納得してくれたようだ。あ、冒険者登録して直ぐにここに連れてこられちゃったけど、冒険者って何をすればいいんだろう?


「あの、エドガーさん。私たち、冒険者登録したばっかりなんですが、冒険者って何をすればいいんですか?」

「ああ、そういやそうだったな。冒険者っていうのはなーー」


 冒険者とは、ギルド経由や個人で頼まれた依頼を受けていくのがメインだそうだ。依頼以外にも、魔物を討伐して素材を売ったり、迷宮ダンジョンに潜ってお宝を得たりとかでお金を得ることもできるそう。メインとなる依頼は特定の魔物の討伐だったり、護衛などさまざまらしい。


 そして、冒険者にはランクというものが存在し、ランクによって受けられる依頼の難易度が決まっているそうだ。

 冒険者ランクはSからEの6段階で、1番下がEランク、1番上がSランクになっている。私たちは登録したばかりなのでEランクスタートということになる。

 一定の依頼を達成したり、偉業を成し遂げるとランクが上がっていくらしい。一般的にはCランクあたりから一人前、AやBランクになると周りから一目置かれる高ランク冒険者扱いになり、Sランク冒険者など数える程しかいないそう。


 依頼には期限があるものもあり、期限が切れたり依頼そのものを失敗したりすると違約金がかかるので注意が必要だという。高ランクになっていくと、指名での個人的な依頼がくることもあるらしい。また、突発的な緊急依頼やほぼ強制の依頼なんてものもあるんだとか。なにそれ怖い。

 基本的に冒険者は危険と隣り合わせになるのでソロで活動する人は少なく、ほとんどの人がパーティを組んで活動しているらしい。私にはシュウがいるから問題ないね。


「詳しくありがとうございます」

「いや、これもギルドマスターの仕事の一環だからな。気にするな」


 おっ、やっとギルドマスターらしい威厳のある顔に戻ってる。エドガーさんから冒険者の説明を聞いて終わったと思ったら、闘技場にさっきの受付のおねーさんがバタバタと走ってきた。


「ギルマスー!大変ですー!」

「おい、立ち入り禁止だって言っておいただろうが。って、何があったんだ?」

「オーガが出たみたいです!あっ、シュウさん!」

「なんだと!?なんでこんなところに!」


 オーガ、っていうと鬼?受付のおねーさんが大慌てで立ち入り禁止超えて入って来るってことは一大事なのかな。なんだが緊急事態っぽいし、緊急依頼になるのかなー?それにしても、こんな状況でもシュウに気が付くとは、やりおる…

 そんな悠長なことを考えていると、シュウがまた私の腕を引っ張りながら早く行こうと急かす。そんなに急いで何かあったのか、もしかしてお腹でもすいたのかな?


「じゃあ、俺たちはこれで失礼しますね」


 シュウに連れられササッと闘技場から出ようとしたところ、エドガーさんにガッチリと捕まる。


「待て待て、そんなに急ぐこたぁねぇだろ?ん?」

「いえ、俺たち急いでるので」

「ちーっと頼みたいことがあるんだけどなぁ」

「お断りします」


 なんだか嫌にニヤニヤして私たちの前に立ち塞がるエドガーさん。避けて闘技場から出ようとしても、道を塞がれて出られない。

 あぁ、さすがの私も察したよ。私たちをオーガの討伐に行かせる気なんだなこの人は。


「大体、今冒険者登録したばかりのド新人を緊急依頼に行かせるのってどうなんですか」

「お前らなら大丈夫!だから、な!」

「嫌です」

「なら姉ちゃんはどうだ!?行ってくれるよな?な!」

「へぁッ!?」


 シュウとエドガーさんが押し問答してるのをボケーッと見てただけなのに、急にこっちに振られて思わず変な声が出てしまった。


「姉ちゃん、頼む!今高ランクの奴らが依頼で出払っててすぐ行けるやつがいねぇんだよ!」

「ちょっ、リンさんに振るのはナシです!」

「兄ちゃんには聞いてねぇ!俺は姉ちゃんに頼んでるんだよ!」

「そういうやり方は汚いですよ!」

「緊急事態に汚いも綺麗もあるか!」

「え、えーと…?」


 私に振られたはずなのに、いまだにシュウとエドガーさんがギャーギャー言い合ってる。高ランクがどーたらこーたらってことは、もしかしてオーガって強い?


「私に…倒せますかね?」

「リンさん!?」

「行ってくれるか!いやーありがたい!グランリールの門外の見張り塔付近にオーガが出たんだ。1体だけらしいんだがな、どうも普通のオーガではないって報告が来ててな…」


 そう言って、エドガーさんは受付のおねーさんをチラッと見る。


「はい。塔の兵士の話ですと、通常種ではなく特殊種ユニーク希少種レアじゃないかって話ですね。今見張り塔に常駐している兵士や街からの応援が防衛に向かっていますが、あまり状況は良くないみたいです…」


 オーガは通常種でもそこそこ強いらしいが、兵士さんたちが協力すれば倒せなくとも森に追い返すくらいはなんとかなる相手だそうだ。それが、塔に出現したオーガは通常種よりも大きく、色も通常種は緑なのに対して紫色らしい。攻撃もほとんど通らず、逆に怪我人がどんどん増えていく始末。


 グランリールの門外の見張り塔っていうと、途中に通った所かな?あそこにいた兵士さんにはお世話になったし、助けられるなら助けたい。状況は悪いらしいが、私が行くことで少しでも力になれるのなら喜んで手伝うよ。


「行きます」

「行ってくれるか!感謝する!」

「はぁー。やっぱり行くんですね。リンさんが行くなら俺も行きますよ…」


 シュウは私に着いてきてくれるみたいだ。ひとりじゃ心細いしめっちゃありがたい。


 そうと決めた私たちはすぐにオーガ討伐に向かうことにした。




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