第13話 いざグランリールの街へ
「うわぁぁぁ、大きな街だねぁ…!」
関税を払い、門を越えてグランリールの街に入った今、私はとても感動していた。中世ヨーロッパのような、レンガを基調としたキレイな街並み。人も多く、街は活気に溢れている。
「リンさん、口が空いてますよ…」
シュウが呆れた顔をしているが、今の私にそんなことは気に入らない。それだけ感動しているのだ。もうこうなると、完全にお上りさん感丸出しである。
「シュウ、すごいよ!キレイな街だね!」
シュウの腕をつかみ、無意味にぶんぶんと振る。シュウの顔がが呆れた顔から困り顔に変わっていたが、なにせハイテンションだから仕方ない。
「ハハッ、姉ちゃん、このグランリールの街は初めてかい?」
私らの態度や会話を微笑ましいというような目で見ながら、街の門番さんが話かけてきた。
「はい!こんなにキレイな街、初めてです!」
「そう言ってもらえると嬉しいな。姉ちゃん達は、この街には何か用があって来たのかい?」
「俺たち、冒険者になりたくて。すみませんが、冒険者ギルドはどこにありますか?」
「あぁ、それならあっちだ。気をつけて行けよ!」
親切な門番さんに冒険者ギルドの場所を教えてもらい、早速向かうことにした。
見かねたシュウに手を引かれ、キョロキョロしながら冒険者ギルドまでの道のりを歩く。こういうの、新鮮でとっても楽しい!
「ここですね」
「ここか!大きいね!」
目の前には木造の大きな2階建ての建物。ワクワクしながら入ると、大きなカウンターが目に入る。どうやらここが受付らしい。
カウンターの横には酒場らしきものが併設されており、昼間だというのに何グループかの冒険者たちが騒ぎながら食事を取っていた。
「とりあえず、登録をしましょうか」
「あ、うん。ねぇ、シュウ。手、いつまでこのまま?」
掴まれた手をアピールするように上にあげる。この前心配かけたのは悪かったと思うけどさぁ、子供じゃないんだから迷子になったりなんてしないよ。多分。
「う、わ、すみませんっ!」
慌てて手を離すシュウ。いや、別にいいんだけど、さっきから受付のおねーさんたちの視線が痛いんだよねぇ。
気を取り直して登録するためにカウンターに向かう。
「冒険者ギルドにようこそ!登録ですか?」
「あ、はい」
ギルドの受付嬢はとっても美人なおねーさんだった。長めの金髪に緑の目、スタイル良し。そして何より制服が可愛い。赤色のワンピースにメイドさんみたいな白いエプロン、それに合わせた白いカチューシャ。すごいかわいい!おねーさん、さっきからシュウしか見てないけど!
「登録には登録料がかかりますが、よろしいですか?」
「えっ、よろしくない!おいくらですか?」
登録料なんてかかるんだ!ノルドさん、聞いてないよ!
「ええと、1人金貨1枚ですね。別途で年間金貨1枚頂いてます。冒険者登録してギルドカードが発行されると、街に入るときの関税が撤廃されますので」
「あぁーそうなのか。それなら仕方ないなぁ」
世知辛いよ。どこも世の中やっぱり金ということなのか。
でも、ギルドカードを見せれば関税が無くなるのなら登録料や年間費は仕方ない。
「あの、買取は冒険者以外でもしてもらえますか?」
「はいっ!あちらのカウンターで買取の受付してますよっ!」
おおう、露骨かおねーさん。私の時よりワンオクターブ声が高いよ。蔑ろにされたわけじゃないから別にいいけどさぁ。
シュウはそんなおねーさんのアピールもどこ吹く風で、スタスタと買取カウンターに向かう。受付の隣にある買取カウンターには筋骨隆々のおっさんがいた。
「おう兄ちゃん、買取かい?」
「はい、お願いします」
シュウは倉庫からグリーンバードの羽類と緑色の魔石を取り出した。
「ほう、グリーンバードか。これ、どうしたんだ?」
「倒しました」
「兄ちゃん、さっき少し見てたがまだ冒険者でもなんでもないんだろう?」
「そうですが、冒険者以外でも買取してもらえると聞きましたよ」
なんか、良くない雰囲気になってきてるよー。このままじゃまずいかも?
「あ、あの!私たち、とっても田舎の方から来てて!冒険者登録する機会もないままだったんです!」
「…なるほど。そういうこともあるか」
腑に落ちない顔をしているが、どうやら納得はしてくれたようだ。
「とりあえず買い取ろう。グリーンバードの羽が全部で銀貨8枚、冠羽が3本で金貨2枚、風の魔石は大きめだし金貨5枚だな」
「全部で金貨7枚と銀貨8枚!そんなになるの!?」
思わずカウンターに身を乗り出してしまう。相場とかは全然わかんないけど、グリーンバードは思ったより高い買取額だった。
「ああ、肉があればもっといい金額になったんだけどな」
肉はみんなで肉串会やっちゃったからね、仕方ない。そういえば、私もオークの魔石を持ってるんだった。シュウも私もまだまだCPに余裕あるし、当面の資金に全部売っちゃっていいかな。
「あ、あと魔石の買取お願いしたいんですが」
「兄ちゃんだけじゃなく、姉ちゃんも箱持ちだったのか。どれどれ、小さい無の魔石29個と中くらいの無の魔石か。小さい方が1個銀貨3枚、中くらいの方が金貨1枚だな」
「ふむ、銀貨10枚で金貨1枚ですから…金貨9枚と銀貨が7枚ですね」
「兄ちゃんも姉ちゃんも冒険者志望にしちゃ計算早ぇな。ほら、一応金額確かめておけよ」
商人目指した方がいいんじゃねぇか、と茶化すおっさんに買取って貰う品を渡し、お金を受け取る。合計金貨11枚と銀貨が5枚。うん、合ってるね。
ありがとうとおっさんにお礼をいい、買取カウンターを離れる。
「これでもっかい受付カウンターに行けば冒険者登録できるよね?」
「そうですね、行きましょうか」
受付カウンターに再度向かい、さっきのおねーさんに登録をお願いする。
登録には名前や年齢、職業などの記入が必要らしく、少し悩む。
記入すんのは良いんだけどさ、私らって職業なによ?
「シュウ、私らって職業なに?」
「そうですね…ガンナーなんて無いでしょうし…」
2人でうんうん悩んでいると、見かねた受付のおねーさんが助け舟を出してくれる。
「職業に関しては後々変わる人も出てきますから、そんなに深く考えなくても大丈夫です。魔法が使えるなら魔術師とか、簡単でいいんですよ。」
「なるほど…では2人とも魔術師にしておきましょうか」
「シュウはそれでいいよ。私はナイフちゃんメインだから斥候にしよ!」
シュウが何か言いたげな目で私を見ていたが、気にせず記入を続ける。今更ながら、文字や言葉は勝手に翻訳されるんだね。
記入が終わったので私とシュウ、2人分の登録費と年間費を支払う。お金を支払った後、用紙に血を1滴垂らしてくれと言われ、とてもしぶしぶ針で指を刺し、血を垂らす。こういう小さい傷が1番痛いよね。
受付のおねーさんは私たちが書いた書類を水晶のようなものにかざす。すると、紙はどこかに消え、代わりに2枚のカードが現れた。異世界マジックすごい!
おねーさんは出てきたカードを私たちに渡してくれた。これはギルドカードというもので、ランクなどの冒険者に関わる情報が記入されている。街の出入りのときに門番さんにこのカードを見せると関税を免除されるって仕組みになっているらしい。
「おめでとうございます。これでお2人とも冒険者になれました!」
「わー、ありがとうございます!」
「おめぇら、ちょっといいか?」
喜びに水を刺すような渋い声がカウンターの奥から聞こえる。
カウンターの奥から、昔は第一線で活躍してました!引退した今も筋トレは続けています!みたいな威厳のあるおじさんが出てきた。
「ギルマス?こちらのお2人がどうかしました?」
ギルマス…ギルドマスターか!
「コイツらにちょっと聞きたいことがある。おい、お前ら、俺についてこい」




