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第12話 見張りの塔

 

 リコッタ村を出て歩いていると、見覚えのある草原まで来た。この世界に来てまだ3日だけど、いろいろあったせいか何だか懐かしく感じる。

 ここまで歩いてくる間に、シュウには魔石がCPに変換できることやカロさんに貰った精霊結晶の話をした。

 特に、魔石がCPに変換出来ることには驚いていたな。


 見渡す限り緑だと思っていた草原も、よくよく見れば東西南北の先にいろいろな違いが見て取れた。

 私たちのいたリコッタ村の東の方角は森だし、これから行く西のグランリール方面は塔のような建物が見える。どう考えても最初に塔が見える方角に行くのが正解だったよね。

 でも、リコッタ村に行かなければ村のみんなやカロさん達にも会えなかったんだから、今となっては結果オーライだ。


 ノルドさんから聞いた道をシュウと話しながらひたすら歩いていく。

 そういえば、チロルに応急薬を使った時に試し飲みしたけど疲れが取れたんだっけ。


「そういえばチロルの怪我を治した時に思ったんだけどさ、回復アイテムには怪我だけでなく疲労を回復する力があるのかもしれない。だから、事前にドリンクを飲んでおけばたくさん歩いても疲れないかも?」

「なるほど、それは試してみてもいいかもしれませんね。ドリンクは水分補給にもなりますし」


 ということで、そんなに疲れてはいないがちょっと休憩がてらドリンクを飲むことにする。

 2人で倉庫からドリンクを取り出してみると、エナジードリンクのような缶の飲み物が出てきた。

 缶を開けて、ごくごくとドリンクを飲んでみる。うん、見た目の通りエナジードリンクの味だ。久しぶりの炭酸おいしい。

 缶はここに捨てていくわけにもいないので、とりあえず倉庫に入れておいた。


 ドリンクを飲んで少し休憩していると、なんだか身体の中がポカポカして、何となく足は軽くなっていた。

 休憩を終え再び歩き出したが、全然疲れない。ドリンクの効果を実感する。


「すごいね、ドリンクめっちゃ効いてる感ある」

「そうですね。回復アイテムといい、これほど効果があるとあまり人に教えない方がいいかもしれませんね…」

「確かにそうかも。今日は野宿になるんだよね?ドリンクの効果がいつまで続くかわからないけど、進めるだけ進んじゃおうよ」

「その方がいいですね。ペースを上げて、夕方までにはあの塔に着けるようにしましょうか」


 ペース上げて歩いていくと、目標の夕方までに塔に辿り着くことができた。近くで見るとこの塔は割と高い。見張り台とか監視塔かなんかなのかな。塔の前には見張り役みたいな兵士さんがいた。格好が軍の制服っぽい。


「すみません、私達は旅の途中なのですが、今日はこの付近で野営をしても大丈夫でしょうか?」


 兵士さん、私達が塔に近づいたらめっちゃこっち見てたもんな。

 警戒されてもアレだし、とりあえず声をかけておくことにする。


「旅の者か、いいだろう。ここに泊めてやりたいが、生憎空きがなくてな。食堂だけなら利用できるから、良かったら使ってくれ」


 この塔は、リコッタ村方面にある森などから出てきた魔物がグランリールの街に入らないように監視するための守衛塔みたいなものらしい。

 簡易的な宿もあるらしいが、今日はもういっぱいらしい。食堂は利用できるらしいが、そもそも私達はお金持ってないもんね。貰った路銀はグランリールの街に入るときの関税に使いたいし、食料もあるから大丈夫だな。


 塔の近くに座り、村で貰ったパンをかじる。うん、相変わらず固い。

 夜ご飯にパンだけじゃ味気ないので、早速解体してもらったオーク肉を焼くことにした。


「そういえばさ、フライパンあるよね」

「ああ、ありますね」


 CAの装備には鈍器にフライパンがある。フライパンで殴ってダメージが入るのかと思うが、頭とか全力で殴られたら痛いよね。

 それに、フライパンは装備しているだけで背後からの銃撃をある程度防ぐことができるということで、意外と人気の装備だった。


 適当に乾いた木を拾って焚き火をする。その上にフライパンを乗せ、オークの肉を入れる。めっちゃいい匂いしてきた。

 焼きあがったら村で分けてもらった塩を少しの振りかける。シンプルイズベスト。


「いただきます…うわ、めっちゃおいしい!」


 見た目からちょっと忌避感あったけど、食べてみると普通においしい。分かってはいたけど豚肉だ。

 シュウもおいしいって言って沢山食べてるし、良かった。


 もぐもぐとオーク肉を食べてたら、なんか視線を感じる。あれは、塔に着いた時に話してた兵士さん?

 見られながら食べるのも食べにくいので、声をかけてみた。案の定、オーク肉の匂いに釣られて来たらしく、仕方がないので一緒に食べることにする。1匹分解体してもらったから、まだお肉はたくさんあるしね。


「いやぁ、ありがとよ。いい匂いがしたもんだからついな」


 オークのお肉をいい勢いで食べる兵士さん。貴重な魔物のお肉を食べさせてもらうお礼ということで、塔の見張り台部分で寝かせて貰うことになった。部屋じゃないけど、完全に外というわけじゃないから見張りも要らなさそうだし、ラッキーだ。


「俺は今日は見張り台で夜通し見張りをするからな、広くはないが好きに使ってくれ」


「ありがとうございます!あ、そうだ。少し聞きたいことがあるのですが…」


 兵士さんに教えてもらいたかったのはこの辺のお金のことだ。

 街に入る前にある程度知っておかないと困るだろうし。

 その年齢までそんな常識も知らないのかと驚かれたが、田舎に住んでいてお金を使う機会がなかったと言ったら納得していた。

 この世界で使われているお金は主に硬貨コインらしく、紙幣はないそうだ。

 鉄貨、銅貨、銀貨、金貨の4種類がメインに使われているらしい。


 鉄貨 10円

 銅貨 100円

 銀貨 1000円

 金貨 10000円


 聞いた話から察するに、この世界のお金を日本円に換算するとだいたいこれくらいかな。一応金貨の上もあるらしいが、使う機会もほとんどないため覚えていなくても大丈夫だそうだ。


 ちなみに、グランリールの関税が1人銀貨3枚、乗り合い馬車は2人で金貨1枚と銀貨6枚らしい。馬車高ぇ。馬車は魔物や野盗対策に冒険者を護衛で雇っているため、どうしても高くなりがちらしい。そりゃ仕方ないな。

 路銀として村のみんなからもらったお金を数えてみる。銀貨が12枚、銅貨が8枚。こんなにくれたんだ、なんだか少し申し訳なくなってきたな。

 とりあえず、乗り合い馬車は厳しいけど関税は大丈夫そう。街に入ることができそうで一安心だ。


 朝になり、出発の準備を整える。食堂に顔を出してみると、朝ごはんやお昼ごはん用にパンなども販売してるらしく、いくつかパンを購入することにした。

 実は、私たちの倉庫は物が際限なく入るだけではなく、入れたものが劣化しないという素晴らしいものだったのだ。

 でも考えてみればそうだよね、元々ゲーム内の機能なんだし、1年間ログインしなかったからと言って所持してるアイテム腐ったました!とかそんなことはないもんな。使用期限はともかく、そんな仕様だったらクレームはんぱない。


 パンを買い込んで、倉庫にしまう。パンは1個鉄貨3枚だったので10個ほど買った。馬車や関税は高いけど、物価はそんなに高くないのかな?

 兵士さんにお礼を言って、グランリールに向けて出発する。街までは馬車だと数時間だが歩きだとここから1日程度で着くらしい。でも私達にはドリンクがあるため、飲みながら普通の人より早いペースで進む。

 どうもこのドリンク、効果は2時間ほどもつらしい。優秀か。


 こうして、1日かかると言われていた所を、半日で到着することが出来たのだ。




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