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第11話 もうお説教はお腹いっぱいです

 

「リンさんは大人しくするってことが出来ないみたいですね。だいたい...」

「はい...」


 ただいま絶賛お説教タイム中です。

 リコッタ村に着いたら、なぜか村人みんなに出迎えられました。総お出迎えです。

 なんか、あのグレネードの音はここまでバッチリ聞こえてたみたいです。

 村の人達は魔物か!それともどこか軍が攻めてきたか!とか大騒ぎになったらしいですが、そこでシュウが「この音はおそらくリンさんだと思うので、確認してきます」とその場を収めたらしいです。

 まぁ、実際に私だったんですけどね。ハハッ。

 シュウのありがたくないお説教タイムは夕方に帰ってきてから夜まで続きました。


 私が森でオークの集落を落としてきたと言ったら村長のノルドさんが驚いていた。

 ここ最近、どうも森から出てくる小動物が多かったのはそのせいかって。

 村からも結構近い位置だったらしいし、まだ出来たばかりのタイミングで叩けたことはラッキーだったらしい。とても感謝されたよ。


「あの兄ちゃんにはあんま心配かけんなよ。姉ちゃんがいない間、すごかったぞ」


 何がどうすごいのかは別に聞きたくないので、しおらしく「はい...」とだけ返事をする。


「いやまぁ、小さいとはいえオークの集落を1人で落としてくるとは、兄ちゃんだけじゃなく姉ちゃんもすげぇ強いんだなぁ」


 ふふん、まぁね。私だってやるときはやるんですよ。

 でもここで調子に乗るとシュウさんのお説教タイムアゲインという展開になりそうなので、とりあえずお茶を濁す。


「それにしてもオークか。あの肉もうまいんだよな」

「やっぱり食べられるんですね、オーク」

「食えるぞ。オークはDランクの魔物だしな」


 まぁ、倒したオークの大半は木っ端微塵になっちゃったからドロップした石しか回収してないんですけどね。そういえば、初めに討伐した2体分のオークは持ってるから、明日解体頼んでみよう。

 石、といえば。オークを倒した時に手に入れた石をテーブルの上にいくつか出す。


「あの、この魔物を討伐すると出てくる石はなんですか?」

「あん?それは魔石だな」


 やっぱそのまま魔石っていうのね。ノルドさんいわく、魔力を持っている動物などを魔物というらしく、大抵の魔物は倒すと魔石をドロップするようだ。

 小さいものは生活などにも活用や魔法の補助などに利用でき、幅広く使われているらしい。逆に大きな魔石は乗り物など大きなものを動かすのに主に使われているそうだ。

 大小問わず魔石は利用価値が高いため、小さくても結構いい値段で買い取ってもらえるらしく、使う予定がないならさっさと売りに出すのがオススメだそうだ。


 机の上に出した魔石を倉庫にしまい、何となく倉庫ウィンドウの小さい魔石をタップしてみると、魔石に分解という項目が出た。

 そのまま分解を押してみると、ウィンドウに「30CP」というポップが出る。

 なるほど、魔石を分解するとCPになるんだね。CPの獲得方法がわからず、弾がなくなったらどうしようかと思っていたがこれで何とかなりそうだ。


「CP、こうやって獲得するんだ...」

「姉ちゃん、しーぴー?ってなんだ?」


 いけないいけない、思わず口に出しちゃったけど、ノルドさんと話してる最中だった。

 なんでもないですよと軽く笑って誤魔化す。ノルドさんは不審な目でこっちを見ていたが、気にしたら負けだ。

 そういえば、カロさんたちになんかもらったんだっけ。倉庫からもらった袋を取り出す。


「なんだろうこれ。綺麗な結晶...」

「そりゃ、妖精石じゃねぇか?珍しいもん持ってるなぁ」

「妖精石?」

「実物も初めて見たんで詳しいことは知らねぇが...なんでも妖精を召喚できる石だとかなんとか。確かすげー高価なものだったと思うぞ」

「そうなんですか...実はお礼で貰ったもので」

「ははっ、お礼に妖精石を渡すとはよっぽどの金持ちか。それとも、妖精本人を助けたのか」


 後者です。はい。これが高価なものなら、むやみやたらに見せびらかさない方が良さそうだね。

 見た感じ、赤、青、緑、オレンジ、黄色、紫、白と7色の結晶が3つずつくらい袋に入ってる。大きな街に行った時に、知っている人がいたら詳しく聞いてみよう。


 今日もいろいろなことがあって疲れたなぁ。

 布団が敷いてある物置部屋に向かうと、すでにシュウが横になっていた。


「シュウ、心配かけてごめんね」


 私の声に、ブスっと不貞腐れたようなシュウがこちらを向く。


「リンさん、反省してるなら今回は許します。でもあんまり心配かけさせないで下さいね」

「はぁい」


 耳タコなくらい同じセリフを聞いたが、それほど心配をかけたんだろう。ちょっと心配しすぎでは、と思う面もあるのだが、ここは素直に受け入れよう。私だって反省くらいするのだよ。


「リンさんがいなくなったら俺は...」

「俺は?おーい、シュウ?」


 どうやら話の途中で寝てしまったようだ。

 昨日も全然眠れてないって言ってたし、今日も私のことがあったせいで昼間に全然寝られなかったみたいだ。 そりゃすぐ寝ちゃうよね。


「おやすみ、シュウ」


 昨日と違い、今日は口に出してシュウにおやすみを言う。

 そのまま私も眠りにつくのだった。


 朝起きたら今日もシュウは既に起きた後だった。うーん、今日もいい朝。早寝早起きは健康にいいし目覚めもいいね。

 シュウに朝会った時、顔真っ赤にしてモゴモゴとなんか言ってたけどなんだったんだろう。


 朝ごはんをいただいた後、ノルドさんに昨日のオークの解体をお願いする。ノルドさんは快く引き受けてくれた。

 肉だ肉だって村の人達が集まってきたので、1体分のオークを皆さんでどうぞって渡した。みんなとても喜んでいた。

 今回はみんなで食べるのではなく細切れにして、各家庭に配布されたようだ。残りの1体も同じように食べやすい大きさに解体してもらい、こちらは私の倉庫にしまう。

 街に行くまでの間の食料にでもしよう。


 ノルドさんが言うには、この辺から1番近い冒険者ギルドがあるような大きな街はグランリールという街なのだそうだ。

 ここリコッタ村からだと乗り合い馬車の止まる所まで2日ほど歩き、そこから馬車に乗って3時間程で着くらしい。結構遠いね。

 シュウと相談した結果、今日の昼頃この村を出てグランリールに向かうことにした。


 ノルドさんにお昼頃この村を出ることを伝える。もう少しいればいいのに、とすごく残念がっていたが、あんまり長居して、これ以上お世話になってしまうのも何となく心苦しいし、いいタイミングだろう。

 ノルドさんは私達に世話になったからと路銀をくれた。各家庭から少しずつカンパして集めたそうだ。

 そんなお金は受け取れないと固辞したが、グリーンバードやオークの集落の討伐、串肉会やオーク肉の配布など返しきれない恩があるからぜひ受け取ってくれと言われる。


 そもそも、乗り合い馬車は利用しなくても街まで行けるが、グランリールなどの大きい街に入るには関税がかかるらしいのだ。お金を持っていないと街にすら入れないということだった。

 なので、街に入る為にもありがたく受け取ることにした。


 水やパンなどの少しの食料をもらい、倉庫に入れる。オークの肉もあるし、グランリールまで長くても1週間あれば着きそうだから食料はこれで大丈夫かな。

 結局、私達の格好はこっちの世界に来た時のままの部屋着だ。

 村に服屋なんてものはなかったし、そもそも服は高いらしいので換えを持っているの方が珍しく、みんな余裕が無かったのだ。

 仕方ないので、布団ような大きい布を外套代わりにもらい、マントのように部屋着の上に羽織る。

 パッと見はだいぶマシになった。旅人っぽい。


 これで出発の準備は整った。街に向かうために村を出ようとすると、ノルドさんや村の人達が見送りに来てくれた。


「なんだぁ、もう出ちまうのか」

「はい、ノルドさんやみなさんにはとってもお世話になりました!」

「寂しくなるな、いつでも遊びに来いよ!」

「ええ、また来ますね」

「姉ちゃんたちにはグリーンバードといいオークといい、世話になったな。本当にありがとよ」


 みんな笑顔で手を振ってくれていたので、私達も笑顔で手を振り返す。

 また、いつかこの村に遊びに来たいな。

 その時はおいしいお肉をたくさんお土産に持ってこよう。




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