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世の中には色々な性癖がありすぎて異世界で異世界

 暮れも差し掛かる年末の某日。


 まだ仕事納めまでは数日あるものの、一足早い忘年会、普段はあまり関わりのない部署の方も含めた忘年会が今日だ。


 俺【花岡陽介 27歳】が今の会社に就職して既に五年目。


 同僚との飲み会なんて、回数を重ねるにつれて同じような話題か仕事の話題しかない。

 たまにしか顔を合わせない同僚となれば尚更だ。


 当たり障りのない会話。

 無難な会話。

 そんな会話を愛想笑いで乗り切るのだ。


 笑えるような話やびっくりするような話等何も無く、飲み放題の時間が過ぎるのを待つ。


 そんな二時間だ。


「・・・・・・ふぅ」


 忘年会に行くくらいなら俺はさっさとお家に帰ってゲームをしたい。

 月初に発売されたタイトルの為だけにハードごとソフトを買ったのだ。


 目的は唯一、ただ一つ。


 オンライン対戦ができるこのゲームでキッズ相手にイキる。

 殺られたら即退出、倒したら相手が画面上から消えるまで暴虐の限りを尽くすのだ。

 悔しがるキッズを相手にお調子コキまくる27歳の俺。

 想像するだけで胸にこみ上げてくるものがある。

 俺はネットで龍になる。


 早くゲームがしたすぎて尿漏れしそうだ。


 そんなイキリマンな俺だが、飲み会のお誘いは基本断らない、断れないイキリチキン野郎なのだ。



 そんな事を考えながらも会場の居酒屋に到着してしまった。

 駅前の居酒屋では珍しい飲み放題付 七品 三千円。

 揚げ物、粉ものばっかりだが量はあるので俺は気に入っている。


 なのに後輩の新卒入社【小春よつば】は


「でぶの元ですよ~? 陽介先輩っ」


 なんてたいした乳もないくせに小生意気なことを言ってくる。


 今回の忘年会の参加人数は二十名弱。

 長テーブルを繋げて二つ、それを二列。

 長テーブル一つにつき五~六人が座り俺達の会社で四つを占領する。

 俺の席には同じフロアのよつばを隣にいつもの三人、そして別のフロアの宮下さんが目の前に座った。


 ネクタイを緩めビールから始まる乾杯、いつも通りの流れで忘年会はスタートした。



 開始1時間ぐらいたった頃、同じテーブルに座った宮下さんがふいに


「あ、そういえばさ、上のフロアの佐藤、知ってる?」


「知ってますよ、同じ部署になったことはないですけど」


「佐藤ってさ、変わったやつでさ」



 どんなふうにだろう? 俺の佐藤さんの印象はすごく真面目なザ・サラリーマンって感じの人だ。

 社内で仕事ができない、といった話も聞かない。

 良くも悪くも普通の三十路くらいの方だったと記憶している。


「そうなんですか? どんなふうに変わってるんですか? 」


「あいつさ、俺の大学の後輩でさ、仲いいんだけどさ。太った女性が好み、でさ」


「そうなんですね。好みのタイプなんて人それぞれですからね」



 まぁ、好みのタイプなんて千差万別だろう。

 俺はセクシー系おねいさんが大好きの年上好きだ。


 後輩のよつばがかいがいしく中央に用意された鍋を取り分けている。


 こいつはいわゆるかわいい系だ。キレイ系おねいさんのセクシーさは一ミリもない。

 セミロングの茶髪はくせっけなのかあえてなのか、少しふわっとしている。


 俺の視線に気づいたのか


「陽介先輩はたくさんキャベツ食べましょうね~ 」


 なんていいながら本当にキャベツだらけにしてやがる。



 タイミングを見ていたのか、宮下さんが


「でさ? ふくよかな子が好きだろうが細い子が好きだろうが、年下が好きだろうが熟女が好きだろうがさ。そこはいいんだ」


「私はおねいさんタイプが好きですけどね、まぁ趣味は人それぞれですよね」


「うんうん。でさ? 佐藤はさ、太った女性を縛るのが好き、でさ」



 ……おっと? ちょっと変わってきたな。

 俺の人生では縛る系の話をリアルには聞いたことなかった。

 ネットの世界の話だ。


「縛る!? なんですかそれ! セクハラですよ! 」


 よつばが興奮しながらも話に食いついている。

 セクハラとかそういう問題じゃない気もするが。

 宮下さんは続ける。


「まだ続きがあってさ? あいつさ、太った女性を縛って、四つん這いにさせて後ろからケツアナを見ながらコーラを飲む。のが好きなんだよね」


「ファ!?!? 」



 座ったテーブルの全員が声を揃えた。

 それにしても……



 太った女性を四つん這いにして後ろからケツアナを見ながらコーラ!?!?



「ええ!? すごいですね!? 」


「マジですかそれ!? 」


「嘘!? そんなお話初めて聞きましたよ! 冗談ですよね!? 」



 同じテーブルに座ったみんながまさかのパワーワードに驚く以外の反応ができない中、俺はどうしても聞きたかった。



「なんでコーラなんですか?!」



 宮下さんは一泊溜めると



「あいつ酒飲めないから」



 酒飲めないからコーラなの!?

 酒飲めたらじゃあなんなん!?


 ワイン!?


 ワインは赤なの!? 白!? シャルドネ!?

 舌先でワインを転がしながら鑑賞するの!?

 

 冷静に、ここは冷静に。まだ慌てる時間じゃない。


「もうなんか縛って四つん這いでケツアナ鑑賞だけでも十分なパワーワードなのに、そこからコーラくるとか佐藤さん天才ですね、見直します」


「だろ?」


「そもそも…… ケツアナなんて鑑賞して何が楽しいんですか? 何を鑑賞するんですか? 」


「そりゃお前、色とかツヤとか、形とか角度とか…… 」


「角度!?!? そんな盆栽みたいな楽しみ方するんですか!? 」



 未知なものに遭遇すると人はフリーズするらしい。俺達のテーブルは時が止まっている。


 それにしてもどういうこと!?

 ケツアナって盆栽なの?


 どういうことなのよ……


 これから先スーパーに行ってさ?

 ステキな若妻がコーラをカゴに入れてるのみたら、そしたらさ?

 この若妻は旦那に縛られて四つん這いにされてケツアナを盆栽にされてるってソワソワしちゃうじゃないか……


 ってかさ。


 もはやコーラの本当の楽しみ方ってケツアナを鑑賞するためにあるのかもしれないってまで思い始めてきたわ。


 それ以外にある?

 コーラの一番おしい飲み方はケツアナだわ。


 それにしてもビールの飲みすぎでおしっこいきたい。

 俺は飲み始めるとトイレがとても近いのだ。


「ちょっとトイレいってきます。」



 席を立って少し歩いた先のトイレに入る。


 とりあえずおしっこだ。個室を確認するとどれも空いていたので一番手前に入る。

 俺はおしっこをする時も座る派だ。


 座れて楽だし、加えておしっこも飛び散らない、お上品な俺は座ってするのだ。


 ひとしきり出し切った俺はピッピと湯切りすると個室の扉を開けて……



「……は? 」



 そこは異世界だった。

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