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異世界帰りの警部  作者: 因幡晴朗
人体発火
22/29

現場検証

『ニナさんとヤンさんと一緒にそちらの世界に戻っていた犯人は死亡しましたが、未だそちらに転移もしくは前世の身体に戻っている人が、かなり居るようです』


 オブザーバーとして、刑事課に身を置いて2週間近く経ったが、魔王ロキの部下は何か判れば刑事課のフランツのデスクに電話を掛けてきた。


「で、他にチェックする必要が有る人物のリストアップできたか?」

 その魔王の部下から依頼された転移者や前世の身体に戻った人物の調査をしているが、先週貰ったリストの分は既に調査を終えていた。


 ……もっとも、調査と言ってもリストに名前が有ったのはニナとヤンだけだったので、魔王の部下には「問題ない」と1言報告しただけだった。


『ええ、今送ります』


 どういう原理か知らないが、ファックスでリストや(白黒で見にくいが)写真を送って貰い、それをフランツが調査する事になっていた。


『殆どが貴方と同じケシェフの冒険者ギルドや隣のビトゥフの冒険者ギルドに所属する冒険者なので、恐らく顔見知りだと思います。一応、コチラでの名前とソチラでの名前、住所、電話番号、勤め先、略歴を記載しています』


 ファックスの印刷が終わり、A4用紙が1枚手元に飛んできた。


「1人目だが、知ってるぞ。俺が死んだ事件の被害者だ」

 そして、異世界で遺跡に行く前に調べていた1人だった。

 遺跡に向かう直前、立ち寄った村周辺で人が行方不明になる事件が多発していた。ニューヨーク市警だったのを知る部族長に「立ち寄るついでに調べろ」と命令され、いやいや調べてたのだが。


 その行方不明者の中に彼女が居た。

 名前はジュリアン。むこうで弟に会えたから話を聞いたら、ニューヨークで待っていると言われていた。


『本当ですか!?で、彼女は何かしていましたか?』

 魔王の部下曰く、コッチの世界で魔法が使えるから何か悪さしないか心配らしい。


「普段通り学校に通って家の手伝いをしてたさ、問題ない」

 リストに乗った他の人物も、異世界で顔見知りだった者が多かった。


「他の奴等も顔見知りが多い、心配無いな」

『そうですか、ではお願いします』


 向こうが丁寧な口調で電話を切ったので、フランツも電話を置いた。


「おはようございます」

「おーはよーございます」

 ジャックとゲイリーの凸凹コンビが出勤してきた。


「ああ、おはよう。……珍しく早いな」

 時計を見ると6時半だった。


「あー……。まあ、偶にはと思いまして」

 ジャックは言葉を詰まらせながらも説明を始めたが、ゲイリーは椅子に踏ん反り返り、溜息を吐いて新聞を読み始めた。


「なるほど。判った」

 朝一の挨拶が馬鹿みたいに元気で、その後不機嫌な時のゲイリーは決まって夫婦喧嘩の後だった。


 今度は何で揉めたのやら。


「おっは……ゲフンっ。おはようございます」

「おはようございます」


 またヤンがふざけた挨拶をしようとしたので、ニナが足を蹴り、言い直させた。


「おはよう」

 異世界じゃ同い年の悪友だったせいか、人狼のフランツを見ると昔の調子で話し掛けてくるので、その度にニナが蹴ったりド突いたりしていた。


「ジェシーは?」

 フランツと組んでいるジェシーのデスクが空いているのでニナが質問してきた。


「署長の所だ」


 フランツが答えた側から、呆然としたジェシーが戻って来た。


「あーその。ジェシーどうした?」

 心配したジャックが声を掛けるとジェシーはゆっくりと全員を見渡した。


「どうしよう……」

「何がどうした?」


 フランツにも聞かれたジェシーは、椅子に座っていたフランツに抱き着いた。


「おい!ジェシー!」

「警部になれって言われた」

「……誰が?」


 フランツが眉間に皺を寄せた。

「私が……」


 眉間に皺を寄せたまま、フランツは固まった。


「死んだアナタの代わりに警部(Lieutenant)をしてくれって署長が」


 フランツは冷静に状況を思い出した。


 先ず、ジェシーは他の4人より経験が有った。20歳で警官になり、24歳からフランツと組んで刑事を20年近く経験している。それに階級も刑事のランクも1だ。

 一方のジャックとゲイリーは刑事経験10年ちょい。ベテランだが、刑事のランクは2で出世は未だ早かった。

 最期のニナとヤンだが、知らん!


「適任だと思うぞ」

 フランツが励ますとジャックとゲイリーが続いた。


「そうだ、ジェシーなら経験も有る」

「色々知ってるだろ?」


 ニナとヤンが黙ってるので、フランツが「お前らも何か言え!」と目で合図した。


「何をしたら良いか全部知ってるから適任よ」

「そうだ、絶対なるべきだと思う」


 皆から励まされたが、ジェシーはフランツに抱き着いたままだった。

「ジェシー、俺が死んでオブザーバーになっても、代わりに現場を動かしていたろ?上が居ないから代わりに仕切るんじゃなくて、ホントの意味で上に立つんだ。お前なら出来る」


 ジェシーが啜り泣き始めたが、不意にジェシーのデスクの電話が鳴った。


「出まーす」

 ヤンが代わりに電話に出た。


「自信無いよ……。代わりに仕切れていたのも、生まれ変わったアナタが側に居たからだし。私は女だし黒人だし」

「ジェシー。おい!」


 フランツはジェシーの顔を両手で掴み自分の顔の正面に持ってきた。


「お前が女性だとかアフリカ系だとか、そんな事で批判して来る奴は無視しろって言ったろ!?バッジは伊達じゃないんだ。それだけ周りがお前の事を信用して任せられるからバッジを持ってられるんだ。自身を持て」


「ブルックリンのキングストリートで焼死体が出ました!」


 ジェシーの代わりに電話に出ていたヤンが叫んだ。


「ほら……」

 フランツが促したがジェシーが黙っていたので、電話の方を目で示した。

「チーム全員お前の指示を待ってるんだ……警部」


「あっ……皆現場に行くわよ。ヤン場所は!?」

「キングストリート75の精肉店前。そこに止めてあったパトカーだそうだ。急に燃えた男が降ってきたんだと」


「よし、じゃあ行きましょう」





「全く、堪ったもんじゃないよ」


 現場に着くと、焦げてひしゃげているパトカーの屋根の上に、真っ黒に炭化し熱硬直で腕を曲げたご遺体が仰向けで横たわっていた。


「落ちて来た時は何処に?」

 ジャックが質問すると、カニンガム巡査部長はパトカーを指差した。


「あの中だよ。彼処の質屋に強盗が入ったって連絡が有ったから彼処に止めたんだが、降りようとした時に急に叫び声がしてな」

 メモを取りながらジャックはパトカーと質店を交互に見た。

「強盗事件の方は?」


 質店のアフリカ系の店員はゲイリーに聴き取り調査をされていた。


「それが、強盗事件は無かったそうだ。嘘の通報だったんじゃ無いか?」


 イタズラだとしても、タイミングが出来すぎている。


 ジャックはパトカーが止まった精肉店の屋上を見上げた。


「そう言えば、あの犬耳男。本当にフランツみたいだな」


 屋上からパトカーを見下ろすフランツに気付き、カニンガム巡査部長は話し始めた。


「一昨日、非番だったんだが俺の店に来たんだ。カミさんのミートパイが食いたくなったって言ってな。その時色々話したがフランツと俺しか知らない事とかアイツも知ってたし、仕草がまんまフランツだ」


 目の前でも犬耳男はバーグ警部の様に、まるで誰かに身振り手振り何かを説明しているかのように現場を見渡し、頭の中で何が有ったのか考えてる様子だった。


「オブザーバーで居て貰ってるんで、ジェシーが仕切ってますけど。殺人課じゃ、バーグ警部が死んだ雰囲気じゃ無いですよ。今じゃすっかり警部が犬耳男になっちゃった馴れましたよ」





「何か有った?」

 屋上から全体を見渡していたフランツの所にニナが現れた。


「鑑識が足跡と指紋、その他犯人の痕跡を探してたが、足跡と吸い殻それに雑多なゴミぐらいしか見つからなかったそうだ」


 4階建ての古い建物だが、下から放り投げられた空き缶とかが在った。


「魔法の類かな?」

 ニナも上からパトカーを見下ろしてから質問した。


「可能性は有るな。10日前に狼男の証拠品を盗もうとした犯人がパトカーの中で燃えたのは聞いてるだろ?アレと燃え方が似ている」


 炭酸ガス消火器を吹き掛けたが、遺体は完全に炭化していた。その割に、パトカーの方は熱による変形や塗装の劣化が見られないのがおかしかった。


「そうなると、あの犯人みたいに自殺かな?てか、あの犯人も身元不明のままだし、この犯人も身元が判んないんじゃない?」


 衣服が一切燃え残って無いので、身分を証明できるものは無さそうだった。


「まあ、検視官(ハイネン)に任せるか」

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