4.帰宅後
「ただいまー・・・」
って、誰もいるはずないのだが。
俺は1日の授業を終え、家へと帰ってきた。家にはもう一人、同居人がいて、同居人が朝、俺が帰って来てからの家事を担当している。同居人は、部活をやっており、朝早くから朝練をするために登校し、夜遅くまで帰りの練習をしてくる。その頑張りは、ハヤトと同じく、感動を覚えざるを得ないほどのものだが、少し、無理をしていないかと心配になることがある。
一先ず、洗濯物を取り込み、明日、小テストの範囲の英単語を見て覚えながら、洗濯物をたたむ。いつも追試スレスレで合格しているが、今回の範囲は難しいため、書き取り練習をしなきゃいけないなぁと思っている間に、洗濯物をたたみ終え、今度は夕飯の支度をする。夕飯の支度は流石に刃物や火を使うため、危ないからながら勉強や作業はできない。しかし最初こそそんなことを考える余裕はなかったが、慣れてくると、宿題とか、テストの勉強をしなきゃいけないという思考にとらわれてしまってくるため、何とかして有効に時間を活用できないものかと考えてしまう。
そんなことを考えながら料理している最中、今度は別の方角で色の違う光が見えた。さっきは禍々しい色の光だったが、今見えた光は暖かい、優しい光だ。しかし、こちらも俺はそっちの方角から目をそらすことができなくなった。
「・・・、痛ってぇ!!」
「・・・ほー。光が見えてその方角から目をそらせなくなってぇ?指を切ってしまったと。」
「は、はい・・・」
えっと、これはどういう状況かというと、さっきの光のせいで、目をそらせなくなって余所見をしたまま、料理を続けてしまい、包丁で指を切ってしまったことを同居人に説教を受けているところだ。
「あのねぇ・・・、料理は刃物も使うし、火も使うの。余所見なんかしてたら危ないでしょ。」
「は、はい、すみませんでした。」
「はー、別に謝ってほしいとかじゃなくてさー。私はただただ心配だっただけだよ?だから謝る必要はないけど、気をつけて欲しいんだよ。もう二度とこんなことがなければいいだけの話。わかった?」
「はい・・・了解しました。」
「ならよし!」
この女は、俺の同居人で幼馴染みの高井ナナ。とりあえずさっきのような説教モードの時はひたすらに目が怖いが、それ以外の時はまるで聖母のように優しい。また、結構可愛くて、成績も優秀、部活(弓道部)でも一年にして県大会に出れるレベルだ。そのせいか、男子の中でも評価が高く、リノと同レベルにモテる。
なぜ俺とナナが同居しているかと言うと、俺達は同じ事件によって、両親を亡くしたもの同士なのだ。犯人も犯行手口も不明。凶器も現れず、事件は迷宮入りした。またこの家はマンションの一室なのだが、アルバイトも特にしていない俺たちがなぜマンションに住めるのかと言うと、このマンションはナナの親の所有物で、ナナの親族が相続したのだが、その人のご厚意で、学生の間、俺たちに一室を貸してくれる事になったのだ。
「それにしても光ねぇー・・・。そんな目を引く光なんて見てないよ?ホントなの?」
「やっぱり、見てないのか・・・。」
「やっぱりって?」
「いや、授業中にもそんなことがあったんだけど、その時もみんな何も見てないって言うんだ。」
なぜ俺だけに光は見えるのか、それとも単純に見間違いなのか、疑心暗鬼に陥りそうである。
「そんなことよりご飯食べましょ!あー、お腹空いた!」
「そうだな、食べよう。今日はハンバーグだぞ!」
「やった!部活頑張ってきた甲斐があったわ!」
光はその後見えることはなかった。しかしこれはこれから起きることの前兆でしかなかった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
これにて、書き溜めた分が終わります。
次回からは、投稿ペースが落ちると思うので気長にお待ちいただけたら幸いです。
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並行して執筆中の異世界転生ものです。
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