雨のバス停
初めて小説を書いてみました。拙い文章ですが、よろしくお願いします。
HNは弘山玉子です。卵ではありません…σ(^_^;)
『雨ですね。』
『あ、はい?』
『この時期に雨なんて…珍しいと思いません?』
『あ…そうです…かね?』
夜のバス停。
雨の音が木霊するバス停
そこで出会った、変な人。
『今日は何処まで?』
その声の主は若い男性だった。雨だというのに傘を持っている様子もなく、ビニールコートも着ていない。
私は正直関わりたくなかったが、バスが来るまでまだ時間がある。無視するのも失礼と思い、少し話に付き合う事にした。
『隣町まで。クリスマスのプレゼントを買いに。』
『奇遇ですね。私も行き先は隣町なんですよ。プレゼント…こんな時間にですか?』
『えぇ。買い忘れてまして。今から買いにいくんですよ。買い忘れたなんていったら息子からなんて言われるか…』
昔おもちゃを買ってやらず、1日口を聞いて貰えなかった事を思い出し、苦い笑みが浮かぶ。
『私にも子どもがいましてね。本当にやんちゃで…困ります。』
『お子さんは今おいくつですか?』
少し興味がわいた。同じ子どもを持つ親として。
『今年で5歳です。そちらは?』
『私の所は4歳で…今流行りの変身ベルト…ってやつを欲しいって駄々をこねてきて…』
自然と笑みがこぼれる。
『家族っていいですよね。家族といるだけで心が温かくなる。』
彼はそう言って深く息を吐く。
『おや…?雨が止んできたようだ。もう直ぐ時間だ。』
私は腕時計を確認する。
『え?まだバスまで時間がありますよ?』
雨の音が小さくなっていく
『いつ、その幸せが終わるか分からない。』
彼は立ち上がり、こちらを振り返り言った。
『今を 大切に』
彼は笑顔で言った。晴れやかで、何処か寂しい笑顔で。
その瞬間。光がバス停を包み込んだ。
その後の記憶は曖昧だ。
気が付いたら隣町行きのバスに乗っていて。バスの中に彼は居なくて。
あの光はなんだったんだろうか。あれは夢だったのだろうか。
分からない。分からないが。
家に帰り着いた時、喜ぶ息子や妻の顔を見た時、何故か涙が零れたのだ。
とても幸せだったのだ。
皆さんも家族を大切にしてくださいね。