氷の平原 ラウス氷河
「これがドラゴンの巣か……」
やはりヒビキの何倍も大きいドラゴンの巣だ。ドラゴン達の感覚では一階建てだが、こっちじゃあ十階建てみたいなものだ。と、言うよりかこのサイズの巣を余裕で隠す平原も凄い。
と、ここでドラゴンに話しかけられる。
「これが我々の子供だ。おいアンフィースラー、出てこい」
奥からアンフィースラーと呼ばれているドラゴンが現れる。
やっぱりか・・・とヒビキは思う。子供だとしても種族はドラゴン。ヒビキと同じかそれ以上のサイズがある、とても可愛らしい?可愛・・・らしい?ドラゴンだ。
そんな事を思っている所、アンフィースラーが声を出す。
「おっす、俺アンフィースラーってんだ!今日からよろしくな!」
「おう、俺はヒビキだ。よろしく」
うーん、どうしてこのアンフィースラーは他のドラゴンとは違ってテンションが高いんだろう……?
そう考えつつ、ヒビキは顔をドラゴンの方に向けて言う。
「そろそろ就寝したいんですが・・・」
「ああ、寝床ならこっちだ、着いてこい」
やっぱり寝床も広かった。俺の10倍はある。ベッドより布団の様で、少々雑だったが、それでも休憩できる事には変わりない。
ふぅ………やっと落ち着ける。今日は色々あったなぁ。
そうしている内に、ヒビキは眠っていった…。
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起きる。
「夜だ。まあ寝たのが昼だったしな。」
それより何より寒くてやってられん。試される大地の冬レベルに寒い。
「外で何かしら始まってんのか?」
ヒビキはそう言いながら外へ出ようとする。寒い空気がなだれ込んでくる入口を抜ける。そこでヒビキが見た物は、
「凍ってる・・・いや違う、降ってきてるのか・・・?」
驚愕の声を出して、目を丸くする。
上から巨大な氷の塊が降ってきては地面で刺さるか砕け、平原がどんどん氷に埋もれていく。
降ってきている氷の塊はヒビキより大きく、当たればほぼ即死だ。
「一応、外に出てみようか」
一気に滑り、体を氷に打ち付ける。鈍い痛みと、それすら忘れそうな冷たさを感じる。さらに氷の塊が少し先に落ちる。
「何この平原すっごく怖いんですけど」
声が震えて出てくる。そんな時、後ろから誰かが話しかけてくる。
「おお、ヒビキじゃないか。そんなとこで寝て何やってんだ?」
ヒビキはその声に寝たまま顔をそちらに向けて反応する。
「ん、アンフィースラーじゃん」
何かが疲れた様な感じでアンフィースラーは言う。
「あ、その名前長いから、ラーって略して大丈夫だよ」
「そうか。分かった」
ヒビキはまた付近に氷が落ちた音を聞きながら本題を話し出す。
「ちょっとこの場所を探索したいんだけど、手伝ってくれないか?」
「オッケー、じゃあまずこれ飲んで」
そう言われて、差し出された飲み物を問答無用で飲まされる。
まるで不味いのか美味しいのかよくわからない飲み物の効果をラーに尋ねた所、
「これはホットドリンクって言って、体が温かくなってくる飲み物だよ」
との事だった。
あれ?これただの酒じゃね? そうヒビキは思いつつも、この恐怖の場所を探索することにしたヒビキだった。
「クックック……最近覚えた二つのスキルでモンスター達と仲良くなってやる!」
そう意気込んで、氷の平原へと駆け出すヒビキとラーだった。