始まりの草原 ラウス平原
後ろには何匹かのドラゴン、そして今居るのはモンスターの巣窟らしき平原。
これ詰んでんじゃね?と思っていながらも、まだ生きる希望は捨ててはいなかった。
どうにかしてここから逃げれないかと考える熱海ヒビキだったが、やはり無理そうな事を悟る。そのせいか逆に思考が冷静になって、
うーん、どうしてこうなったんだろう? とここに至るまでの経緯を思い出す。
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いつもの様に会社に行き、帰り、残りの一日を過ごす生活をしているヒビキ。
会社ではしっかり働き、家ではやる事もなくのんびりと暮らす。
そして色々なパンフを時々読みつつ気が付けば寝ている。と、そんな風な人生を過ごしていた筈のヒビキだったが、目を覚ますと見慣れない澄んだ青空が広がっていた。
「ここ……どこだ……?」
ベットの場所は草になっていて、布団は見当たらない。それどころか辺り一面起伏の激しい草原だった。
さらに、家の一軒も見つからない。そして、ヒビキは崖の上で寝ころんでいた。
「危ねぇ! 高い!」
ここから下まで100mあるくらいの高低差だ。下を覗くと体が震える。土地が高いので、割と見晴らしがいい。なるべく下を見ないで辺りを見回す事にしよう。
「なんだあれ・・・・?」
よく見れば、まるでモンスターのような生物もうろついていて、多分襲われたら確実にやられると感じる生き物までいた。ふと、こんな所で生きて行けるのか・・・と考えが頭をよぎったが、まずは帰ることが重要だ、どうすれば帰れるかと思考を整理する。
見慣れない景色に地球にはないと思われる平原・・・そしてモンスター・・・
「そうか! 異世界転生モノだ! きっとそうに違いない!」
何とか納得できる答えを出し、ここからどう動くかを考える。
「まずどこかしらに都市とか町とかがあると思う。まずは街道を発見するのが優先だ」
とにかくなんでここにワープさせられたかは後回しにしよう。
だがもし街道が見つからなかったらどうするかも考えねば。
最悪、雨風しのげれば問題はない。何とかして洞窟くらいは見つけよう。
転生させるならもうちょっと暮らしやすい所にしろよ・・・と文句を呟きつつ、まずは目視範囲で探す事にしたヒビキであった。
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駄目だった。道はおろか、看板的な物まで見つからないとは・・・。
一体どうなってんだ、この世界。
なんとか雨風しのげる場所は発見できたし、持っていた紙に辺りの地図も書いた。
だがどこを見ようが自然だけで、人工物は何一つ見つからない。
「もうこの事は洞窟発見できたから置いとこう。そういやステータスとかはあるんだろうか」
幸いな事に時間だけは有り余っていた。とにかく現状を打開しよう。
もしかするとテレポートとか使えるかもしれん。と頑張る事にしたヒビキだが、
駄目だった。
それっぽい画面は出てきたが、スキルなんて項目は無かった。勿論魔法も無かった。
そしてステータスの様な物の数字も中々低かった。
多分この世界では最弱クラスだろう。
「・・・よし!まずは拠点となる洞窟に行くか・・・!」
この世界で生きていけるのか? そう考えつつ、動こうとした瞬間、
「殺気!?」
背後に強い気配を感じ、後ろを向くと、そこにはドラゴンが居た。
そして冒頭のシーンに繋がる。
「畜生!何かこう後ろのドラゴン倒せる魔法みたいなスキルはないのか!」
半ばヤケクソ気味になりつつ叫ぶが、一向に返事はない。
「くっそ!こんな所で死ぬのは嫌なんだよぉ!気が付いたらよく分からん所に飛ばされて!俺にはまだ夢はあるんだよ!」
流石にスタミナも限界だ。もう走れそうにもない。このままここで死んでしまうのか・・・?と思うくらい絶望的な状況だった。
だが、その時何故か追いかけて来たモンスター達の動きが止まった。
「やったか?」
振り返ると、そこには倒してはいないが襲い掛かってもこないモンスター達の姿があった。
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新たなパッシブスキルを手に入れました。
1.中立←new!
中立・・・心ある者の敵意を消し、中立状態になるスキル。その後の行動で敵対するかが変わる。
初投稿です。
ほのぼのしてなくね?って思われる方もいるかと思いますが、
次からほのぼのしていく筈です(震え声
もし良かったらゆっくり次回もみていってね!