5節(1) 召喚組1年目の軌跡 (1)
第1章5節の改訂版(15/1/24)です。
分割した1番目です。
side 田中達也 場所 アルトヘイム国
俺の名前は田中達也、いや田中達也だったというのが正確か。今の俺の名前はタッチャンだ。勇者タッチャン、いい響きだ。
俺は、あの日神様に懇願されてこの世界にきた。世界を救うために、俺のかつての同級生たちと一緒にだ。
今俺はアルトヘイム国内にある迷宮のボス討伐に向っている。やっぱり俺がいないとまともに攻略できないみたいだな!
移動中暇だったので、俺はこの約10ヶ月間、召喚に応じた日からのことを思い出していた。
あの日、俺達は神様に神託の勇者としてこの世界の召喚に応じた。目を開けると祭壇のようなところにいた。周りに神官やらなにやらが厳かにいた。異世界召喚モノのテンプレ姫様もいたな。この辺は昔読んだ異世界召喚モノの小説のとおりだった。
この国を選んだ人数は、俺を含めて30人だ。他の7ヶ国にも最低何人かは行かなくては行けなかったので、この人数になった。一応、俺達のグループが最大グループだ。なんで最大数にしたかは理由は簡単だ。俺たちはいずれ集まることも視野に入れている。どのような移動手段があるかは知らんが、国家情勢を抜きにすれば地理的に中心の国に集まりやすいからだ。行く前に国家情勢を知っていれば変わっただろうが、あの時では最良の判断だろう。色々知った今でもこの判断は間違っていなかったと言えるな。
閑話休題。
召喚されて直ぐにステータスプレートをもらい、神官から使い方も聞いた。俺達が本物か確かめる意図もあったようだが、今思い返すと何とも失礼なことされたもんだ。
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タッチャン 人間族/男/18歳
Lv.1 職業 勇者
称号 異邦人(召喚)
HP 400/400 MP 350/350
STR:250 VIT:250 INT;205 MEN:205 DEX:205 AGI:250
スキル
【限界突破】Lv.1【聖剣降臨】Lv.1【ライトニングボルト】Lv.1【無詠唱】Lv.1【異世界語翻訳】Lv.1【剣術】Lv.1【アイテムボックス】Lv.1
武器
ミスリルの宝剣
防具
鉄の小手、鉄の鎧、鉄の靴、鉄の兜
アイテム
所持金 5000
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確か俺の初期のステータスはこんなだった。俺の初期設定の振分けは、職業『勇者』8000、特殊スキル【アイテムボックス】1000、スキル【異世界翻訳】10【剣術】100、武器と防具で500と200ずつ、残り140をHP+50,STR+45,VIT+45,AGI+45とテータスUPに注ぎ込んだ。そう、俺様のステータスは計算尽くされた完璧なものだった。Lv.1ではありえない力を有している俺達を見て、かなり困惑している様は中々滑稽だったな!これが前いた世界で、異世界チートものの小説が流行していた理由か!俺達は想像じゃなく現実に見られたから凄く満足だ!
その後王のもとに行き、交渉を行った。国に忠誠を誓わせたかったんだろうが、そうはいかない。俺達は初期装備や金もしっかりと分担して用意していた。伊達に30人まとまったわけじゃない。伊達に異世界チートモノを数十冊は読んでないのだよ!
交渉のときに判ったが、俺達の目標は魔王討伐でいいみたいだ。魔王は複数いるらしく、とりあえずぶっ殺そうかとも思ったが、やめておいた。いくらチート持ちだからといって未知の敵に突っ込むほど俺は馬鹿じゃないからな。この世界には魔王が住んでる迷宮があり、そこの迷宮攻略をまずは目標にしといた。迷宮の攻略でレベルあげながら、地上にいる魔王(魔王城にいる魔王、場所がわかってるやつ)を全力で叩く。話を聞く限り、迷宮攻略しなくていい地上の魔王が楽だからだ。もし全部の魔王を倒さないといけないのならば、そのときは魔王を倒してから考えることにする。
あと、魔王にも魔人とかいう知能をもったやつの親玉の魔王と、魔物の王の二種類あるようだ。特に知能が高い魔族の魔王は注意だな。ああ、これは秩序を乱す馬鹿な亜人達が元になっているらしい。そいつらが邪悪な力に染まって魔人となることは、俺達は確かめていないがそういうものだと判明しているそうだ。結局根拠はわからんが、"魔王も倒して世界を救っちゃえば良い"と分かっていれば問題ない。
そういやぁ、召喚された早々、クエストを俺たちはクリアしまくっていた。報酬がないクエストってなんだよ、ホント。『職業を手に入れてみよう』とか色々クリアしたが報酬がなかった。マジでけちくせぇ…そのうち報酬があるのあるかなぁ…?一応報酬を受け取るって形だけの確認ボタンを押しておいた。
それから、俺達は王宮に国賓待遇で住みながら戦闘訓練を行った。その過程で、"パーティは8名まで"とか噂だが"強力な職業の者はパラメータの成長がいい"だの色々知った。真実かどうかはともかく、俺達のような強力な職をもった集団は脅威だろうな!おかげで色々便宜を図って機嫌を損なわないように注意したのだろう。俺達は順調にレベリングと実戦経験を積めてホント助かった。流石の俺でも、いきなり戦闘じゃきつかっただろうからな。
そうそう、この国の情報も手に入れていたな。この国"アルトヘイム国"は大陸中央に位置する大国らしい。王城は煉瓦を中心とした3階建てで、建築技術は中世12~16世紀後半のゴシック建築程度の技術はありそうだ。その他の技術、金属の加工などの技術は古代ローマ程度な気がするが、物理法則が違うし前の世界では魔法を込めるなんてなかったので一概にはいえんな。服飾関連は、15世紀の中央ヨーロッパ系が主なようだ。
文明のレベルははっきり言って低い。道具も魔法を使った独特の物ばかりで、非常に不便である。
ただ唯一まともだったのは、食べ物とトイレだ。食べ物の味はそう悪くはない。衛生状態はトイレがしっかりと備付けられていたのには驚いた。前の世界、中世ヨーロッパでは窓から排泄物が投げ捨てられていたぐらいだ。ここ最近100年ほどで衛生面がかなり改善したことを考えると、なんともアンバランスな世界だな。不思議に思って聞けば、かつての異邦人(日本人)が広めたとのことだ。ある意味納得できた。やっぱりこの世界は遅れてる!
話を戻そう。
俺たちは国賓待遇で、迎えられることになった。それから一週間(この世界では6日)は、主にこの世界の常識とかについてもレクチャーしてもらった。殆どがスキルの使い方を騎士団相手にしていただけだが・・・あとはパーティ戦の基本を教えてもらった。俺たちはレベルは上がってなかったが、パラメータやスキルレベルは若干上昇していた。流石俺たちだ。今でも十分強いが本当に最高!
パラメータの増加量はレベルアップで増える量のほうが圧倒的に多いのだそうだ。7日目にレベル上げと初の魔物の戦いのため平原に行ったな。倒すのはウェアウルフという魔物だった。各パーティ一匹ずつになるように騎士団が誘導してたっけ。最初は加減がわからず、一発で仕留めてしまった。歯ごたえがなさ過ぎたな…ま、数回同じような状況で戦闘をした。戦闘後の解体作業は、付いてきた騎士団の下っ端にまかせ、報酬だけ貰ったっけ。そうそう、死体はアイテムボックスにも詰められることが判明したっけ。マジで便利だな【アイテムボックス】。ただ、仕舞う際に死体に手を触れないといけないのはいただけないが…。
俺達はレベルがポンポン上がった。試しにダンジョンに入ったら余裕だった!試したダンジョンは低レベルのやつだったがな!解体作業用に奴隷をひきつれて攻略しながら、俺達は力をつけた。1ヵ月ぐらいだったか、経ったとき他国に召喚された仲間と合流した。なんでも国家間で儀式魔法を使って、ゲームでいうところのワープを実現させたおかげだとかなんとか。こん時は少しは見直したな!
その頃からだったか、俺達は"全世界の賓客"となった。まぁ当然だな。俺達は世界を救う勇者なんだからな。それから冒険者ギルドってのにも参加してやったり、貴族籍を用意させてやったり、色々して忙しかったな。
それから冒険者ギルドの依頼とか国からの依頼とかこなしながら、俺達はレベリングを順調に行った。
レベリング場所は迷宮を中心としていた。攻略と同時進行でするほうが効率が良いからだ。迷宮内の魔物は外の魔物と比べて強力なのが多く、ドロップアイテムも外より良質で高価なものが出る傾向にある。俺達なら問題なく攻略できているので、外でレベル上げするより効率的なのだ。
関係ない話だが、迷宮はダンジョンの一種とのこどだが何故呼び方が違うのか聞くとバラバラの回答しか返ってこなかった。問題ないから俺達はダンジョンとか迷宮とか適当に呼んでいる。
半年も経った時、俺達は国家と張合える武力と財力を有していた。
そういや、その頃ちょっとした事件が起こったな。
事件の発端は、攻略中の迷宮内で初めてボス部屋が発見されたことだ。
基本ダンジョンは階層構造になっており、次の階層に行く階段などの要所は大概ボスと呼ばれる強い魔物が護っている。ボスの力はその階層の雑魚よりも強い。
迷宮各所には人数制限の扉などがあり、ボス部屋にはだいたい規定の人数しか入れないこともある。また、戦闘場所が部屋である以上、たとえ人数無制限に入れたとしても多すぎると逆に邪魔になることがある。
先遣隊を使ってボスの情報を探ったところ、ボスのレベルは15、ボス部屋の大きさから4PTつまり32人で攻略するとなった。
俺のレベルは30で他の勇者組も20~30なのでレベル的には問題は無かった。王国側の参加者は、騎士(前衛)が3人と攻撃役と回復役の魔法使い(後衛)がそれぞれ1人ずつで、レベルは20~25と俺達に比べ若干平均レベルが下る程度だった。
連携を考慮した結果、騎士1人は俺のパーティに入ったが残りは他のパーティにまとめて入ることになった。また、ボス部屋の前には他のメンバーが待機しておき、何かあったらすぐに対応する手筈になっていた。
ボス自体は雑魚だった。
しかし、初の複数パーティプレイとボス独特の雰囲気に中てられたのか、俺達の連携はギクシャクした。魔物との戦闘経験が豊富だってことで王国兵が4人もいるパーティを壁役(前線で敵の的になる役割)としたが、思うように機能しなかった。結果王国兵どもが足を引張ったせいで、その壁役パーティは全滅した。俺のパーティが即座にタゲを取らなかったら(敵の攻撃対象にならなかったら)討伐失敗していたかもしれん。
初めて召喚組仲間の死に俺達の中には動揺する奴等もいたが、状況を説明したら皆落着いた。全滅したパーティはレベルが低かったし、王国兵が足を引張ったからと理解できたからだ。当然俺は抗議して、慰謝料請求とか権利の融通なんかも取りつけた。そういえば、元々転生組で既に死んでいる奴がいたら慰謝料誰に請求すればいいんだろうか?ま、見つけてから考えよう。
またこの時に知ったが、死者を生き返らせる魔法つまり蘇生魔法が存在する。ただし、色々と制約があり、今回の死者には蘇生が不可能だった。
初ボス戦以後、俺達は順調に迷宮を攻略していった。何度かボス戦も経験した。一応俺達も不意を打たれないように慎重に攻略したからか、俺達勇者側から死者は1人も出なかった。王国兵が参加するときは俺達の平均レベル以上が最低条件とした。加えて俺達とパーティ経験がある程度以上あり実戦で使えるテストし、クリアしたもののみ参加を許してやった。
と、ここまでが召喚されてから約10ヶ月であったことだ。
今俺が向っているボスはレベル36だ。俺よりは低いがほぼ同レベルのボスだ。
今回このボスを俺自ら討伐に出向くのには理由がある。これまで先遣隊として王国兵を使っていたが、このボスは約8割が死亡という過去最高の損耗率を叩き出したのだ。俺の最強パーティが出ないとまともに攻略できないってことで俺が出てやったわけだ。
また今回は地形的に大規模な行軍が可能でかつボスの取巻きの雑魚も大量にいるので、露払い用に騎士団を連れてきている。
今回のボス討伐隊の構成は、主力で俺達勇者15PTの120人と露払いの全国家多国籍の連合騎士団640人だ。
この連合騎士団は俺達が交渉した結果結成された騎士団だ。全世界の国々には俺達を支援する義務がある。当然の措置だが、俺に言われるまで気付かなかったようだ。この世界のトップは頭大丈夫なのかと本気で心配したな。
ご清覧ありがとうございました。
もう少しタッチャンを暴れさせてもよかったですが、これ以上酷くするとリーダーとして何とか保っているという流れも変えないといけなそうなので、殆どいじっていません。一部表現などを変えたところがありますが、その程度です。
1/25 指摘のあった誤字を追加訂正
タッチャンのBPの計算が合わないという指摘をいただいています。鋭いです、合いません。不快に思っている方もいるようなので、理由をいいます。ただし、ネタバレにもなるかもしれないので、改行多めに入れておきます。見たい方のみどうぞ。
①タッチャンの記憶が曖昧 = 完璧ではなくポンコツ勇者である
②細かい計算をしていない = 慎重に思慮深く行動するタイプではない
③適当に考えている = 異世界を舐めて現実と認識できていない
以上の3点を暗示していたのです。これは2章での彼等の運命の伏線でもあります。