4節 0歳児のお留守番
第1章4節の改訂版(15/1/24)です。
今回は説明回で、ウィル(0歳児)の日常を少し描きながら世界設定を書いています。
改訂版では、説明順番を変えたり追加の説明を加えています。
side ウィルルアイト・スヴュート
転生後意識を取り戻してから約1ヵ月がたった。その間に母さんから色々なことを教わった。例えばこんなことを教えてもらった。
・1年は12ヵ月あり、1ヵ月は30日である。つまり1年は360日である。
・1週間は6日で、1ヵ月は5週ある。
・1日は24時間ある。
・通貨(単位)は国によって異なるが、金貨1枚=銀貨100枚、銀貨1枚=銅貨100枚、銅貨1枚=銭貨100枚と変換枚数は一律である。
・神託に示された召喚日は新暦5000年2月30日で、"神託の召喚日"と呼ばれている。
・"神託の召喚日"を伝える神託で、事前に1年後世界を救う勇者達を送ると通告があった。
・身分は王族・貴族、自由民、平民、奴隷と大きく分けてある
・母さんは自由民で、特定の国や組織に属していない。その子供である俺も自由民らしい。
・自由民は国に所属しないので、社会保障はない。
・【鑑定】系のスキルを阻害するスキルが存在する。
また、母さんの【鑑定】と幅広い知識により俺は1ヵ月でかなりのスキルを充実させることができた。さらに、ステータスのおかげで体は同年代の赤ん坊に比べ、非常に活発に動かすことができた。こういうところでも地味に俺が異常なのを示しているが、今現在母さんとの約束で家の外には出ていないので露呈する心配は無いだろう。
今母さんは買い物に出かけている。もちろん、俺は独りでお留守番だ。これも俺が普通の赤子じゃないからできることだ。
さて、日課になっている訓練の前に俺の状況を確認しておこう。
俺は自分自身を【鑑定】してみる。
=====================================================
ウィルルアイト・スヴュート 人間族・男 0歳
職業:武神 称号:探究者
Lv.1 Exp 0/100
【AP:256083】
HP 120/154 MP 73/104
STR 101 INT 31
VIT 101 MEN 31
DEX 101 AGI 101
【SP:383298】
<アクティブスキル>
能力値手動分配[10](MAX)
レベルアップ手動化[1](MAX)
固有図書館[4]
鑑定[10](MAX)
ステータス隠蔽[1]
ステータス擬装[1]
身体強化[5]
魔力生成[3]
隠密[1]
索敵[1]
遠視[1]
威圧[1]
データベース[10](MAX)
<パッシブスキル>
解析[10](MAX)
究明[10](MAX)
研究[10](MAX)
言語理解[5]
体術[10](MAX)
武技の真髄[1]
セリノイス語[1]
成長率増加[10](MAX)
成長速度増加[10](MAX)
自然治癒速度上昇[10](MAX)
戦闘時回復力上昇[1]
魔力操作[1]
魔力感知[1]
並列思考[10](MAX)
古代語学[1]
物理学[1]
薬草学[1]
魔法学[1]
起死回生[1]
状態異常耐性[5]
直感[1]
消費MP減少[1]
算術[1]
暗算[1]
==================================================
うん、生後2ヵ月とは思えない異常な赤ちゃんだね。我ながらびっくりだよ。
最高レベルまで上げたスキルの横には(MAX)と表示するようにしている。これは、特定の条件を満たすと上限が上ることもあるそうなので、もしスキルの最高レベルが上昇した場合すぐに分かるように目安としてつけている。
改めて見ると、スキルもそうだが、APとSPの量がさらに異常だ。それにはちゃんと理由がある。その説明をしよう。
【能力値手動配分】はパラメータやスキルを任意に成長させるスキルで、SPやAPを操作可能にするスキルだ。このスキルのスキルレベルが上がれば、AP変換効率が向上しAP1ポイントあたりのパラメータ上昇量するし、スキル取得時に入ってくるSP量も増加する傾向にある。その為、最優先でこのスキルのレベルを最高にした。
さらに、パラメータに変換する際、称号や【成長率増加】などのスキルの影響を受けることがわかっている。分配時に脳内に表示される確定を押すまで分配されないので色々試せた結果だ。AP変換効率を考えたら、効率があがる称号やスキルを取ってからのほうがいい。すぐに必要というわけじゃないならば、溜めておいたほうがいいだろう。結果、APをまだ1ポイントも使えずにAPがたまりに溜まってしまっていた。
このスキル所持者には、通常のスキル取得条件とは別に取得したいスキルの一定以上の技量や知識を手に入れることでスキルを取得できるという特殊な取得条件が追加で加わることになる。俺には深いレベルで幅広い知識をもつ母さんが側で指導してくれる。その為、スキルの取得は俺の予想を遥かに上回る勢いで取得できてしまっているのだ。
SPはスキルを使用したりすると入手できる。入手できる量はスキルとそのスキルのスキルレベルに依存する。一般に高位の――取得時に必要なSPが多いスキルほど、またスキルレベルが高ければ高いほど、1度に稼げるSP量が多くなる。先程も述べたとおり、母さんと【能力値手動分配】のおかげでスキルがSPさえあれば取り放題な状態だ。そこで、俺は持続的にAPやSPを稼げる方法を考え、それに使うスキルを取得するという荒業ができた。そしてこの1ヵ月間、APとSPをコツコツとあげていた結果があれである。
ちなみに、現在の【能力値手動分配】の性能はこんな感じになっている。
===============================================================
能力値手動分配[10]
APとSPを手動で分配し、能力値を任意に成長させる。
・AP変換効率10[P/AP](HP,MP),1[P/AP](STR,VIT,INT,MEN,DEX,AGI)
・固有スキル以外の全スキルを取得できる。取得の際一定以上の技量や知識は必要。
・所有するスキルのレベルアップ、統合はSPを消費して任意に行える
===============================================================
【鑑定】は対象から様々な情報を読み取るスキルだ。本来は取得が非常に困難なスキルなのだが、俺は【能力値手動分配】のおかげで比較的簡単に入手できた。今の俺は【鑑定】Lv.10を持っており、細かい情報がみれるようになっている。どれぐらい詳しい情報かというと、 たとえば【能力値手動配分】だとAP変換効率なんかも表示されるようになっている。【鑑定】は本当に使える。マジ便利だ。スキル所持者を【鑑定】して表示されたスキル情報には、通常の取得条件表示しようと思えばできる。ちなみに、母さんが見た条件と俺がみた条件は若干の違いがある。SPを手動で操作する人と自動で操作する人の違いと思われる。
【鑑定】を覚えたとき【鑑定】を【鑑定】して出現条件を調べてみた。通常、4つほどのスキルを一定レベル以上まで上げていないと取得できないと出ていた。さらに、いつのまにか【能力値手動分配】の取得可能リストのなかに【目利き】など本来【鑑定】を覚えるために必要なスキルが追加されていた。本来の習得順序と逆な状態であるといえる。これはを利用すれば一気にスキルの幅を広げるのは可能だと考えている。
この1ヵ月間、俺は順調にスキルの充実と、ルール確認を行ってきた。その合間にAPとSPをコツコツと継続してあげていた。何事も継続は力なりである。
具体的な方法だが、SPはスキル使うだけでいいから、稼ぐのは簡単とすぐにわかった。 APは一見難そうだったが、意外に簡単に稼ぐ方法はあった。『武神』を手に入れたときにAPが異常に上昇しているたのに気付いたのが切欠だ。この世界ではSTRを鍛えようと筋トレしたらちゃんとSTRが上がるらしい。ただし微々たるものだそうだ。HPとかMPも同様で、一定量以上一気に減るとかしたら上昇する。
つまり、俺は【身体強化】でMPを継続的に減らし続け、MPが少なくなったら【魔力生成】でHPをMPに変換してAPを稼いでいるのだ。スキルも使うのでSPも稼げる。ちなみに、【成長速度増加】によってAPとSPの入手量は増えているし、【自然治癒速度上昇】Lv.10(MAX)のおかげ継続して使い続けることができるのだ。通常では有得ない"指向性をもたせたスキル"の恩恵が早くも目に見える形で現れたわけだ。育成プランには無かったが、十分過ぎるアドバンテージだろう。
本当は【身体強化】【魔力生成】のスキルレベルが高ければもっと効率が上がるのだろうが、1度に大量にHP,MPを変動させるとまた倒れる危険性が高いので控えている。倒れるかどうかは、最大値との割合で決まるみたいだから、HP,MPを上げればいいだけかもしれないが、【並列思考】を使って片手間にしているので特に気にしないことにしている。最大値を上げた場合、APを獲得するために減らす量が増えるからって理由もある。
ステータス的にはAPを振らない現状でも職業もちの10歳児ぐらいの能力があるらしいので、0歳児(2ヶ月)がこんな方法で能力あげていること自体が異常だが、そのことはあえて無視しておこう。
魔道書を0歳児に読み聞かせながら家事をしてる母親ってのも、母さんぐらいのものだろう。しかも母さんの家事は生活用の魔法で済ませてしまっていて、俺は膝の上で普通に授業をうけている。他の人を見たことないけど、多分…いや絶対に母さんスペック高すぎだと思う。
閑話休題。
と、改めて思い返してみると、俺が異常な力を付けて行っているって実感するな。まあ、母さんの後継者としてはこれでもまだ不十分ではあるだろうが。
ついでだし、この1ヶ月で分かったことや所持しているスキルについておさらいしておこう。
まずはクエストについて。
この世界にはギルドなどが発行しているクエストとは別に、個人が自動的に着手するクエストがある。俺が産まれてからすぐにしたのは後者のほうで、一般的には固有クエストと呼ばれている。 固有クエストの報酬は、取らなかったら半年ほどで自然消滅してしまい、以後再び条件をクリアしても入手できないとのことだ。では赤ちゃんの時にクリアしたものは報酬獲得無理じゃないかと思ったら、一応自我が目覚める(大体一歳)ときから半年後まで入手可能とのことだ。同様に長期間意識を失っていた場合は、意識を取戻してから再び寝る(意識を失う)までらしい。
次に、所持しているスキルについて。
【ステータス隠蔽】と【ステータス擬装】は母さんに必須だといわれたので取った。俺のステータスは異常な部類に入るので、必要と思ってはいたが、母さんに勧められるとは少し意外だった。母さんが言うには、冒険者の中には回りを不用意に怖がらせないために取る人は多いのだそうだ。後ろめたい人ばかりが取るスキルじゃなかったのでちょっと安心した。
【威圧】も母さんに言われて取ったスキルだ。自分と相手のレベル差とか雰囲気とかで効力が変化するスキルで、不用意な争いを避けるのに役に立つそうだ。って母さん、見た目に反して実は結構色々凄い冒険とかしてたんだろうなぁ…いや、もしかしてこの世界では必須スキルなのかもしれない。まだ母さん以外の人に会ったことないから判断できないな。
【データベース】は俺がもっとも気になっていたスキルの1つだ。前世で情報の重要性は骨身に染みて分かっている。俺の育成プランに最初からこのスキルは入っていた。もっとも地球の本を手に入れてから取得する予定だった。
あのBP設定のとき、多くの人が【データベース】について質問していたのが、殆どのものが取得を諦めていた。自分もその一人だ。必要なポイント数がちょっと高かったこともあるが、それよりも所持することによるデメリットが結構大きいからだろう。そのデメリットとは"魔法などの一部スキルの効力や発動を阻害する"ことである。
【データベース】は脳内の記憶領域を使う。魔法を使うときに思考などの演算領域を使うが、本来独立してあるはずの記憶領域の占有量(データ蓄積量)が何故か関係しているらしい。記憶領域と演算領域は独立していると、前世の医学では考えられていたはずだ。専門家じゃないが、暇つぶしに読んだ本に書いてあった気がする。理由は未だ理解不能だが、この世界ではそうなのだ。本来大量のデータを扱うことで真価を発揮するデータベースなのだが、【データベース】でそれをすると戦闘能力が極端に落ちてしまう。データベースの真価の1つである新規テーブルの作成も、下手に編集して新規にコピーするとその分容量とるから、多用できない。
つまり、現実的には【データベース】は使い勝手は非常に悪い限定的な運用しかできない。せいぜい、アイテムの価格表を一時的に作るぐらいしか使い道がないのだ。
もっとも、俺はそんなことを気にはしていなかった。必要なポイントが高くて諦めただけで、この世界に転生してから【データベース】は覚えるつもりでいたのだ。俺の育成プランが上手くいけば、このスキルは化けると確信しているからだ。ま、クリアしないといけない難問は結構あるんだけど、不可能じゃないだろう。たとえできなかったとしても、SPはもったいなかったがスキルを使わなきゃいいだけだ。
【解析】【究明】【研究】は、当初の育成プラン成功率をあげるために限界まで成長させた。嬉しい誤算なのだが、プランの実現に向けて色々と試行錯誤しながら実験を行いルール(世界の法則、仕組みを)確認をしていると、勝手にSPを貰えるのだ。おそらくスキル使用(効果が発動していること)によるSP|《熟練度》の入手が行われているってことだろう。体感だが、スキルレベルが高いスキルを使用すると、SPの獲得量が多い。
他にも色々あるが、とりあえずここまでにしよう。母さんが買い物から戻ってきたみたいだ。
さて、今日は何かな~♪
"召喚日"(神託の召喚日)から290日目の今日、俺はいつものように母さんに色々教えてもらいながら順調に準備をしていくのだった。
ご清覧ありがとうございました。
ルビも積極的に使っていくようにしたので、少しは見やすくなっていればと思います。
このサイトの表記方法は独特なので、システム的な表記ミスなどが多数出てくるかもしれませんが、そのときは教えて頂けると幸いです。